木造の可能性を拓くJAS構造材 第3回「森林維持のカギを握る「製材」の活用。設計の可能性を高めるJAS材利用」

木造をつくり続けてきた工務店は設計者の相談役に

木材を熟知し、長く木造建築を手掛けてきたプロは、普及が期待される低層非住宅・中大規模建築物の木造の現状をどう見ているのか。そのなかでJAS構造用製材の活用はどんな意味を持つのか。今年で創業110年を迎えた神奈川県大和市の青木工務店の4代目社長で、一般社団法人JBN・全国工務店協会の中大規模木造委員会委員長を務める青木哲也氏に聞いた。
一般社団法人 JBN・全国工務店協会 中大規模木造委員会 委員長 青木工務店 代表取締役 青木哲也 氏

ーー低層非住宅・中大規模建築物の分野における木造の普及に期待が高まっています。普段の活動のなかでも、そうした建物の木造化が進んでいることを感じていますか。

青木●そうですね、特に低層非住宅の木造建築は増えてきたと思います。そうした流れを象徴する例として、当初は鉄骨造で計画していた建物を、途中から大空間のある木造に変更したケースもあります。

 木造に対する関心は、設計者や施工者だけでなく、発注者の間でも高まっています。発注者の意識が変わってきた背景には、最近、注目されているSDGs(持続可能な開発目標)の観点などもあると思います。公共施設に限らず、民間の建物も発注者の意向で木造を検討するケースが増えてきました。

“黎明期”にある現代木造。まだ基本が不十分な設計者も

ーー低層非住宅の建物は全国に需要があり、各地の設計者や施工者が取り組みやすい分野です。この分野を含め、広く木造化の普及につながるような活動もされていますか。

青木●私が委員長を務める(一社)JBN・全国工務店協会(以下、JBN)の中大規模木造委員会でも様々な活動をしています。2019年11月に「地域工務店の中大規模木造建築事例集」という冊子を発行しました。冊子で取り上げた事例を見ても、低層非住宅を中心に各地で木造建築が建てられていることが分かります。

 また、一般向けの普及・啓蒙活動もしています。例えば、私の地元の神奈川県では、全木協神奈川県協会(全木協:JBNと全国建設労働組合総連合で組織した団体)の主催で毎年秋に森林見学ツアーを実施し、一般の人たちにも木材活用や森林資源の意義などを理解してもらう取り組みを続けています。

ーー木造や木材に関する設計者の知識やノウハウも深まってきましたか。

青木●まだ現代木造は“黎明期”なので、設計者のノウハウやスキルには差が見られます。構造や雨仕舞、白蟻対策、防耐火やそれらの納まり、そして木材の基本に対する設計者の知識が足りないと感じることも少なくありません。

 ただ、それも仕方がない面があります。1950年の建築基準法制定以来、2010年の公共建築物等木材利用促進法(公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律)施行までの60年間、原則として住宅などの小規模な建物しか木造で建てることはできなかったからです。大学などでも木造や木材についてほとんど教えてきませんでした。

●一般の人たちにも森林管理や木材利用の意義を啓蒙
2019年12月に開催した「全木協神奈川県協会森林見学バスツアー2019」の様子。一般の人たちに森林や木材利用の意味を理解してもらうために、毎年開催している。青木氏がガイドを務め、木造の現場や、森林の伐採現場、機械等級区分のJAS認証を取得した製材所などを見学した(写真:青木工務店)

今、森林は「製材」の宝の山。設計の初期段階から相談を

ーー木造の設計では、木材や木造に詳しいコーディネーターのような人に相談するとよいという意見をよく耳にします。

青木●食材を知らない料理人はいないように、木造の設計ではまず木を知ることが大切です。そのためにも、木造や木材の知見を持つ人に相談することが大切で、最も相談しやすいのが地域の工務店でしょう。工務店は、古くから各種の木造建築をつくっており、失われた60年の間も小規模ながら木造をつくり続けてきたので、地域事情に精通し、建築大工の技術を継承しています。

 実際、JBNにも多くのそうした相談があり、建築大工をかかえ、木造や木材に長けた各地域の工務店を紹介しています。また、低層非住宅や中大規模建築物は、住宅より大きなスパンが必要だったり、部材レベルから検討すべきことも多かったりするので、設計の早い段階から工務店などに相談して取り組むことが重要です。木造については、そうしたコーディネーター役となる人材がもっと必要だと実感しています。

ーー低層非住宅や中大規模建築物の木造化が普及してきたなかで、構造材に「製材」を活用することが期待されはじめていますね。

青木●戦後に植林された山が育ち、良質な柱材なども取れるようになっています。今、日本の森林は、製材として使いやすい時期を迎えているのです。

 また、地域に根差した製材業者が多く存在するため、製材を使うことで地域経済の活性化にもつながります。

品質が明示されたJAS製材が、意匠・構造の幅を広げる

ーー今、製材は無等級材が主流ですが、今後は「JAS構造用製材」の普及が期待されています。木材を使う側にとって、JAS材の使用はどのような意味がありますか。

青木●製材は自然素材なので1本ずつバラツキがあります。JAS材はJAS規格に基づいて認証工場で格付けを行うため、明確に品質が示される利点があります。

 例えば、現しにする梁成をそろえたいとき、大きな荷重がかかる部材に強度の高いJAS材を使うことで、自分が意図する設計を行うことができます。また、製材を用いて準耐火構造の燃えしろ設計をする場合は、当然JAS材を使うことになります。

 ただ、現代の木造建築は製材だけで成り立つものではありません。スパンや荷重条件などによる適切な部材選定が必要なので、適材適所で集成材などと上手に使い分けることも大切だと思います。

 このように木材には多様な使い方があり得ます。鉄骨造や鉄筋コンクリート造に慣れた設計者には、初めは分かりにくいかもしれません。でも、私としては、木造に対する社会の関心が高まっている今こそ「木造で設計してみませんか」と勧めたいですね。

●各地の工務店が手掛けた低層非住宅・中大規模木造の事例集
(一社)JBN・全国工務店協会が2019年11月に発行した「地域工務店の中大規模木造建築事例集」。低層非住宅や中規模木造を手掛ける各地の工務店の実例を掲載。各地の設計者が、地域の工務店を知るガイドにもなる
●JAS構造用製材の活用で意匠性を高められる
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● 本企画は「JAS構造材利用拡大事業(林野庁補助事業)」で行っています ●シリーズ 木造の可能性を拓くJAS構造材
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