ワコールが描く
「店頭起点のDX」戦略

具現化をサポートするジークスの「オールインワンサービス」とは

婦人用肌着などで知られるワコールが導入した新しい接客サービス「3D smart & try」が利用者から大きな反響を呼んでいる。最先端の技術を取り込んだ新しい顧客体験が実現できた背景には、店頭というエンドユーザーとのタッチポイントを重視したワコールの顧客体験の構想イメージと、そのイメージの具現化をサポートしたジークスの存在がある。

顧客体験の変革を目指し
店頭起点のDXを発案

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株式会社ワコール
総合企画室
イノベーション事業推進部 課長
3D smart & try事業担当
篠塚 厚子

 創業70年以上の歴史を誇る衣料品製造販売企業、ワコール。2020年3月現在の国内外の売上は約1868億円に達し、現在も多くの女性客から支持を得ている。

 近年、同社は本格的なデジタル変革に乗り出し、DX推進の一環として2017年にオムニチャネル戦略推進部を発足。その後、DXの更なる加速を図るべく、2020年4月にイノベーション事業推進部を立ち上げた。

 同社がDXを積極的に進める理由の一つについて、同推進部の課長を務める篠塚厚子氏はこう話す。

「百貨店や量販店など、主要チャネルでの過去の成功体験に執着するあまり、近年の国内の売上は減少傾向にありました。このままビジネスモデルの改革をしなければ、ワコールに未来はないという強い危機感があったのです」

 旧来の成功体験から脱するため、ワコールのDX成功の鍵とは何かを考えた。

「私たちにとって『店頭』は一番重要な位置付けにあります。ここでどのような顧客体験を提供できるかが、お客様にとってのワコールの価値に大きく影響するためです。そこで、店頭に立つビューティーアドバイザー(以下、BA)が行っている業務を分解し、デジタルの良さが発揮できるところはデジタルに任せ、弊社の最大の武器でもあるBAの役割をアップグレードすることで、お客様に新たな価値を提供できないかと考えました」

 BAの行う接客業務とは主に、採寸・フィッティング・親身な接客、の3つに分解できる。

「BAが丁寧に採寸し、お客様と親密な関係を築きお客様に最適なブラジャーをご提案する、というのが本来の“勝ちモデル”ではありました。ですが一方で、採寸時にからだを見られたり触られたりしたくないというお声も一定数ありました。ならばデジタルの力を使って、そういった方々や現代のお客様の心とからだにもフィットするストレスフリーな顧客体験を実現できないかと考えたのです」

 同社の生命線とも言える「店頭」と「BAの力」を起点としたDXのコンセプトの下、様々なデジタル技術を盛り込んだ接客サービス「3D smart & try」が誕生した。

「3D smart & try」は、主に2つの最先端技術が体験できる店舗型のサービスだ。一つはセルフサービスで全身の体型が計測できる3Dボディースキャナー。もう一つは、採寸データと自身の好みに合わせぴったりの商品を提案してくれる接客AIだ。

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(左)(上)約5秒で全身の計測が行える3Dボディースキャナ―。体型分析や過去のデータとの比較も可能だ。(右)(下)接客AI「フレルちゃん」。採寸データやお客様の好みを基に自動で下着を提案してくれる。

 これらから得た情報を基に、ご希望の方にはBAによるプロのカウンセリングを受けられるのが同サービスの大きな魅力の一つだが、そのすべてのプロセスを完結させるにはツールとしてタブレットアプリが必要となる。思い描く顧客体験の形の具現化に当たり、同社がタブレットアプリ開発に選んだパートナーがジークスだった。

抽象的なアイデアを
使えるプロダクトへ
構想から開発までの
すべてをサポート

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株式会社ジークス
営業企画グループ
グループマネージャー
金子 領

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株式会社ジークス
クリエイティブ事業部
リーダー UXプランナー
井上 亜津奈

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株式会社ジークス
開発第2事業部
事業部長
今井 健一

 ジークスは、システムやアプリケーションの構築・開発からクリエイティブまでをワンストップのプランで提供している。

「開発だけ、デザインだけ、という企業は多くありますが、弊社は開発とデザイン・エンジニアリングなどに加え、その手前となる構想の段階からのサポートも行います」と語るのは、ジークスの営業企画グループマネージャーの金子領氏だ。

 ワコールがジークスをパートナーに選んだ理由は、ジークスのオリジナリティーである「オールインワンサービス」が受けられるところにある。

「今回の企画は、これまでのBAの接客をベースに最終的なゴールのイメージを最初に固めるところからスタートしました。構想時のメモや手書きのイラストで抽象的なアイデアだけをお伝えしても、まずは『なるほど』と受け止めてくれる。ジークスさんなら形にしてくださるだろうという安心感がありました」(篠塚氏)

 篠塚氏がジークスに信頼を置くのは、ジークスの開発企業の枠を超えた顧客に寄り添うサポート体制があるからだ。

 例えばジークスは、ワコールが思い描く顧客体験の理解を深めるため実際に店頭まで足を運びBAに取材を行うなどもした。

「アプリを作るところがゴールではなく、作った後にどう使うかというところが目的地なので、そういったプロセスに真摯に向き合ってくれる姿勢はとてもうれしかったですね」(篠塚氏)

 ジークスのUXプランナー・井上亜津奈氏はこう語る。

「ワコール様は、何をしたいのかということがはっきりとしていました。顧客体験を実現させるために、タッチポイントをどうクリアにしていけるか、その点において、店頭での体験はとても参考になりました。弊社の大きな強みは、開発とクリエイティブが一緒に動けるところですので、技術だけが先行するのではなく、顧客体験を中心にどのようなサービスを提供できるかを一番重視しています」

細部にまでわたる
要望にも応える
顧客体験を中心とした
システム開発

 徹底した顧客体験重視と、顧客に寄り添うジークスの姿勢は開発においても同様だ。

「3D smart & try」は複数のデジタル技術が組み合わさっている複雑なシステムだ。3DスキャンシステムとAI、基盤となる部分をアプリ内で連携させ、それをエンドユーザーが違和感なく使えるようにする必要がある。

 ジークスの開発部長を務める今井健一氏は、「店頭のアプリであることに加え、それぞれのデジタル技術が別々の企業さんのシステムであったこともあり、アプリ開発には多くの制約がありました。しかし、それを逆手に取ってエンドユーザー様に楽しんでいただけるような見せ方になるよう工夫しています。それも、社内のクリエイティブ部門とワコール様との話し合いを重ねながらプロジェクトが進行できたことで実現できたと思います」と話す。

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3Dで計測したデータとAIの商品検索が、システム上でスムーズに往来・切り替えができるよう工夫した設計がされているという。

 ジークスが行った工夫は他にもある。例えば「3D smart & try」では、体験後に計測したデータを利用者に「プレゼント」できるようデータを紙にしてお渡しするという設計があった。

 店頭のプリンターの規格で印刷ができること。また、利用者にお渡しできるレベルに仕上げるには、きれいな印刷が実現できる用紙も厳選する必要があるなど多くの縛りがあったが、プリンターと用紙の組み合わせから専用のプログラムの開発までも行うなど、徹底したサポートを行った。

 店頭を起点としたワコールの描く顧客体験のイメージを細部にまでわたり実現できたのも、開発とクリエイティブ、構想までのすべてのステップをサポートし顧客に寄り添ったサービスを心がける、ジークスの強みが生かされた結果と言えるだろう。

「当初BAからは『私たちは不要になりますね』といった不安の声も聞かれました。しかし実際に『3D smart & try』をお客様が体験すると、お客様の方から積極的にお声がけしてくださる機会が増え、逆にBAが自分たちの存在価値を再認識してくれるようになりました。今後もDXで様々な挑戦をしていきたいと考えておりますので、その際にはぜひジークスさんにご協力をお願いしたいと思っています」(篠塚氏)

「お客様に寄り添い、エンドユーザー様も含めユーザー体験の部分を真剣に考えてサービスを提供できるのが弊社の強みです。今回の貴重な体験や実績を生かし、さらにもう一つ上のサービスまで踏み込み、ご提案からそれに絡めたものづくりを深めていきたいと考えています」(金子氏)

 開発とクリエイティブの両輪で、ジークスは今後も多彩なサービスの展開を続けていく。