Claris FileMaker活用事例 日本原燃株式会社

「硬直状態のITシステムでは現場要求を満たせない」 原子力燃料再処理工場の最前線で進む
安全を最優先するためのDXの取り組み

原子力燃料サイクル事業を展開する日本原燃(青森県六ケ所村)は、核燃料施設などの新規制基準施行後の2014年1月に審査を申請し、2020年7月事業変更許可を取得。22年度上期の竣工に向け大きな一歩を踏み出している最中にある。
安全への取り組みはハード面だけに限らず、ソフト面での対策も必要不可欠である。固定化したITシステム導入により、形骸化したIT運用になることに対峙し、徹底した安全への取り組みに長年情熱を傾ける日本原燃再処理事業部の取り組みを取材した。
日本原燃株式会社 再処理事業部 保全技術部 保全技術課 三浦 進 氏

 1985年に青森県と六ケ所村が核燃料サイクル施設の立地を受諾してから35年、原子燃料サイクルの要となるのが日本原燃の再処理工場だ。

原子力発電所の使用済み燃料を分別し、再び核燃料として利用できるようにする再処理工場内の機器の保全を行う場合、施設の安全及び作業員の安全を確保するために保全対象となる機器を運転状態から隔離する必要がある。

そして、保全部門と運転部門が緊密に連係して隔離と安全措置が取られていることを確認するなど「現場作業に係る業務管理は『作業・隔離管理システム』で行っています」と説明する三浦進氏は、保全業務部門で現場保全員の支援、保全業務の改善活動、システム構築、データ分析などを担当する。

三浦氏は設計部門から運転部門、保全部門などに異動し、日本原燃のITシステムをユーザサイドから20年以上にわたり見続けてきた一人である。

Claris FileMakerで作成された「作業・隔離管理システム」

※イメージをクリックすると拡大されます。

  • 作業・隔離管理システム
    作業・隔離管理システム
  • 作業票 詳細 起票フロー編集
    作業票 詳細 起票フロー編集
  • 隔離表一覧
    隔離表一覧
  • 隔離機器 重複チェック
    隔離機器 重複チェック

現場からの声を収集し運用後7年間で約30回ものシステム変更を行い、現場のニーズをタイムリーに反映している。

安全の追求に終わりはない

 企業や自治体、行政機関などでのシステム開発は、開発工程を1つずつ確認しながら進めていき、後戻りが難しい「ウォーターフォール型」が多く採用されている。「ウォーターフォール型の場合、開発前の要件定義などに時間がかかり、いざ開発が始まると後から修正するのが難しい」と三浦氏は説明する。

一方、日本原燃の中でも三浦氏が所属していた部門では、アジャイル型の開発プラットフォームで高い柔軟性が特徴のFileMakerを2005年から採用している。

 「FileMakerは動きを見ながら開発を進められます。最終的な仕上がりを開発ベンダーとも共通認識として思い描くことができ、現場の運用テストで安全性向上に向けた機能追加も柔軟に対応できます。

現場作業員が要望した機能が実装され、より現場が使いやすいシステムとして成長させることも可能です」と三浦氏は力を込める。

iPad導入等でDX推進を加速

 2009年から脱硝運転管理システムや現在の作業・隔離管理システムなどを共同で開発してきた株式会社ジュッポーワークス(本社:大阪)は、FileMakerプラットフォーム上でアジャイル開発を日本原燃とともに進めてきた。

三浦氏が望む安全の追求に応えるため、米国Claris本社に様々な機能強化をリクエストし、現在のFileMakerに実装されている機能のいくつかに日本原燃からの要望が反映されているという。

安全の追求に終わりがないという三浦氏のこだわりは、ベンダーを動かし海を越えて届いたともいえる。

iPad操作画面  再処理工場には数万点に及ぶ機器があり、現場での点検記録はまだ紙に記入している状況である。

近年、運転員は専用のiPadを携行し、FileMakerで開発された「巡視・点検システム」の運用を開始している。

巡回中にiPadへ直接入力することで効率化を図るとともに、現場において過去データと比較できるため異常の検知性が向上した。

Wi-Fi環境がない状態でもアプリにデータが格納され、オンラインになった時点でサーバ側に送信できる仕組みを搭載している。

 FileMakerプラットフォームでは、iPadのカメラで撮影された画像も写真アプリに保存されるのではなくデータベース内に格納され、「iPadで記録した画像や音を保存することにより、現場経験の少ない運転員でもデータ、画像及び音の比較ができ、熟練者のアドバイスも受けられるようになり、わずかな変化にも気づきやすくなりました」(三浦氏)。

 再処理事業部では今後、FileMakerなどのデータベース上に蓄積されたビックデータをBIツールを活用して様々なデータ分析を行う計画であり、日本で安全な核燃料サイクルがさらに前進することへの寄与が期待されている。

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