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業種・業界の枠を越えた幅広い共創を加速 シスコが描く日本の未来とデジタル変革とは
TOPインタビュー/シスコシステムズ

業種・業界の枠越えた

幅広い共創加速

シスコが描く日本の未来

デジタル変革とは

業種・業界の枠を越えた幅広い共創を加速 シスコが描く日本の未来とデジタル変革とは
シスコシステムズ合同会社
代表執行役員社長
中川 いち朗
新型コロナウイルスは、これまでの環境を一変させた。日本でも、急速なデジタルシフトが起こり、テレワークをはじめ、デジタルテクノロジーを活用したデジタルトランスフォーメーション(DX)が加速している。これまで、思い切ったデジタル変革が実現できなかった日本企業もビジネスの継続に向け、変革が待ったなしの状況だ。今後はコロナ禍によって生じた「危機」をいかに「チャンス」に変えていくかが重要な経営テーマとなるだろう。こうした状況の中、企業や社会のデジタル変革を強力に支援する企業がシスコシステムズ(以下、シスコ)だ。今年1月に日本の新社長に就任した中川 いち朗氏に、日本企業や社会が抱える課題と解決策、同社の未来展望について話を聞いた。

「積極的なマインド」が危機をチャンスに変えるDXのカギに

シスコシステムズ合同会社 代表執行役員社長 中川 いち朗氏
――新型コロナウイルスの感染拡大は、社会・経済に大きなインパクトをもたらしました。ビジネスや働き方はどう変わり、どのような課題が生じていますか。
 社会全体で急速なデジタルシフトが起こり始めています。テレワークの進展はその典型です。日本は昨年4月の緊急事態宣言の前後で、テレワークの実施率が26%から67%に急増しました。従業員300人以上の企業で見れば、その実施率は90%です。また、医療分野では遠隔による診察、教育分野では授業のオンライン配信も広がりを見せています。

 しかし、日本のデジタル化は海外に比べると後れをとっています。テレワークに関していえば、普及が一気に拡大したとはいえ、まだコロナ前の米国の実施率にも及びません。コロナ禍での政府の対応を見てもわかるように、デジタル化の遅れによる社会活動や人々の生活への影響も顕在化しました。いまこそ官民挙げてデジタルシフトを加速することが急務となっています。

――デジタルシフトを加速するため、企業はどのような姿勢で取り組むべきですか。
 アフターコロナの世界では、完全にコロナ前の元の状態に戻ることはありません。それは人々の意識が大きく変わったからです。これまでの常識が新たな価値観に置き換わり、デジタル化があらゆる面で浸透する「ニューノーマル」な時代になるでしょう。

 それは、シスコジャパンが実施した社員の意識調査を見てもそれは明らかです。従来からリモートワークを推奨しているシスコでさえ、コロナ前は約75%の社員がオフィス勤務を主としていましたが、全社員を対象にした在宅勤務に移行し約1年がたってから「今後どの程度オフィスで働くことを望むか」という調査を行ったところ「必要な時に月2、3回来る」が約8割、「毎日」という回答はわずか2%にすぎませんでした。

 コロナ禍は企業や社会にとって危機であると同時にチャンスでもあります。環境や価値観が変化する中、今まで思い切った変革をできなかった企業も、ネットワークとデジタルテクノロジーを活用したデジタルトランスフォーメーション(DX)に取り組む好機です。持続可能な社会を作るためにも、ニューノーマルな時代に合わせて価値観を変えて、危機をチャンスに変える積極的なマインドでチャレンジすることが重要だと考えています。

新しいアーキテクチャーと具体的なユースケースで、
日本社会のデジタル化を活性化

――ニューノーマル時代を迎えつつある中、シスコではどのような考えのもとで企業のデジタル変革やITインフラの整備を支援していくのですか。
デジタルトランスフォーメーションを実現するプラットフォームを提供するために、今後3年を見据えたアーキテクチャ戦略の柱として、重点的に投資していく デジタルトランスフォーメーションを実現するプラットフォームを提供するために、今後3年を見据えたアーキテクチャ戦略の柱として、重点的に投資していく  シスコはグローバルで「To Power an Inclusive Future for All(すべての人のためにインクルーシブな未来を実現する)」というパーパス(存在意義)を掲げています。

 その実現に向け、シスコは技術トレンドを踏まえた今後3年を見据えたアーキテクチャー戦略の柱として、6つの分野に注力していきます(図)。目指しているのは、ネットワーク、ビジネスソリューション、セキュリティを統合し、自動化を通じて、ビジネスニーズの変化に即応できるプラットフォームを提供することです。

――中でも日本市場に対しては、どのような活動を展開していくのですか。
 これら6つの分野からなる技術基盤のうえで、2つの重点戦略に取り組みます。「日本企業のデジタル変革の支援」と「日本社会全体のデジタル化の推進」です。

 まず「企業のデジタル変革支援」では、新しい設計思想・アーキテクチャーによるネットワークと、自動化・可視化・セキュリティといった多様な機能を実装したITソリューションを提供していきます。すなわち、デジタル変革の足枷にならないIT、実現を後押しするITです。

 ただし、こうしたインフラやソリューションが、具体的にどういう課題解決につながり、どんなビジネス活用が可能になるのかイメージが湧きづらい経営層の方もおられるでしょう。特に新しい社会インフラである5Gに関しては、期待が大きい半面、具体的な利用方法など不明確なことも少なくありません。シスコはインフラの会社というイメージがありますが、今後はより具体的なユースケースをお客様ともに共創していくことに注力します。

 例えば、昨年11月に、日本では初の弊社以外の製品も含めて5G環境をエンドツーエンドで検証できる施設「5Gショーケース」を本社ビル内に開設し、お客様やパートナー様と共に具体的なユースケースを共創する場をご提供しています。日本の5Gネットワークを支える通信事業者向けルーター市場でシスコ製品のシェアは85%と大変高く、基盤技術を提供するシスコだからこそ貢献できることも多くあります。こうした実証実験を通じて、多様なデジタルテクノロジーに関するユースケースを創出・発信していきます。

 さらに世界中の企業のITインフラの変革を支援してきた実績と経験を生かし、ビジネス課題とITソリューションをつなぐ為のコンサルティングサービスも強化しています。お客様の変革ビジョンを支えるIT環境はどうあるべきか。全体を俯瞰しながら、お客様と一緒に最適なネットワークやインフラを設計し、ゴールに向かってのステップを共に実現していくわけです。

 一方の「日本社会のデジタル化」に関しては「公共安全」「教育」「テレワーク」「医療」「サプライチェーン」「規制対応」、そして「5G」の7分野に注力していきます。シスコは「カントリー デジタイゼーション アクセラレーション(CDA)」という世界各国のデジタル化を支援するプログラムを世界40カ国で展開し、900を超えるプロジェクトに投資しています。これを日本でも活用し、具体的なユースケースの創出を通じ、社会のデジタル化を活性化しています。

ハイブリッドワークとそれを支えるSASEの実現に注力

シスコシステムズ合同会社 代表執行役員社長 中川 いち朗氏


――ニューノーマル時代に向けて、具体的にどのような解決策を提供していきますか。
 先ほどお話ししたように、新しい働き方や価値観は完全に元に戻ることはないでしょう。テレワークの有無が企業選びの基準の1つになるなど、働き方に関する考え方も大きく変化しました。最も生産性が上がる場所で働ける柔軟な選択肢に対応していなければ、優秀な人材の確保も難しくなっています。これからはオフィスとリモートワークを適宜使い分け、社員が働く場所を自由に選択できる「ハイブリット型」のワークスタイルをサポートするIT基盤が必要となります。

 それに伴い、分散した環境でのセキュリティの確保が重大な課題となります。社外でも社内と同等のセキュリティを確保する手段として、“すべてを信頼しない”ことを前提に検知と対策を徹底する「ゼロトラストセキュリティ」へのニーズが高まっています。この実現には、ネットワークとセキュリティ機能を統合し、クラウド型で提供するフレームワーク「SASE(サシー:Secure Access Service Edge)」が有効なソリューションとなります。

 こうしたニーズに対応するため、シスコでは「ハイブリッドワークスタイル Webex」と「ゼロトラストプラットフォーム Cisco SASE」という2つのソリューションに強力に推進していきます。

――2つのソリューションについて概要を教えてください。
 ハイブリッドワークのためのソリューションはコラボレーションプラットフォーム「Webex」をベースにしたものです。安全かつ高品質な映像・音声によるコミュニケーションで、最適なコラボレーション体験を提供します。ある銀行様はこのメリットを生かし、従来対面のみで行っていたお客様との契約業務を、オンラインで完結するデジタル変革を実現しています。

 ハイブリッドワークスタイルでは、クラウドアプリケーションWebexで安全なオフィスとアクセス環境に加え、PC, タブレット、スマホ、ビデオ会議端末など多様なコミュニケーション方法を1つのプラットフォームに統合し、最適なコラボレーション体験を提供します。さらに、付加価値の高い機能実装も進めていきます。例えば、AIによるリアルタイム翻訳やノイズキャンセリングなどを活用すれば、海外の人ともクリアな音声でコミュニケーションできます。対面以上のコミュニケーション体験が可能になるわけです。今後、Webexは働き方の選択肢を広げるだけでなく、あらゆるビジネスシーンのデジタル化を促進するソリューションへと進化していくでしょう。

 一方ゼロトラストプラットフォームのCisco SASEは、IT環境におけるセキュリティ機能とネットワーク機能をクラウドサービスによってエンドツーエンドで包括的に提供します。SASEの要件はネットワーク、クライアント接続、セキュリティ対策からエンドツーエンドの可視化、パフォーマンス最適化まで多岐にわたります。シスコは、これらのネットワークとセキュリティに関する多様なSASEの要件を、クラウドで包括的に提供できる唯一のベンダーであると自負しています。

業種・業界の枠を越えた幅広い共創を加速していく

シスコシステムズ合同会社 代表執行役員社長 中川 いち朗氏


――なぜシスコはニューノーマル時代を見据えた支援をトータルに提供できるのでしょうか。
 シスコは創業以来35年以上にわたって、IT環境の基盤となるネットワークソリューションを全世界に提供してきました。シスコはもともとネットワークを生業にしてきた企業であり、人、もの、情報をつないで世界を変革するという企業文化として根付いています。この取り組みを終始一貫変えずに積極的に押し進め、ネットワークからセキュリティ、クラウド、コラボレーション、IOTとポートフォリオを拡充してきたからこそ、ネットワークの安全と信頼に欠かせない完全なソリューションを提供できるのです。

 それは製品提供にとどまりません。シスコ自らが最先端のグローバル企業として、これらのポートフォリオをフル活用し、ビジネスを推進し、様々なノウハウを蓄積しています。例えば、世界最大規模のセキュリティ脅威インテリジェンス組織「Cisco Talos」です。高度なスキルを持つセキュリティ専門家がAIを駆使してビッグデータを解析し、最新の脅威情報やその対策を全世界に発信します。万が一、インシデントが発生しても、いち早くシステム全体の影響を把握し、世界中で適切な対策を瞬時に実行できます。

 このような包括的なケーパビリティがあるからこそ、ニューノーマルを見据えた変革もトータルに支援できるのです。

――働き方改革にも早くから取り組んできたそうですね。
 テレワークやフレックスタイム制を導入するなど、働き方改革には20年ほど前から取り組んでいます。その結果、働きがいに関する調査を世界約60カ国で行っているGreat Place to Workの日本における「働きがいのある会社」(Great Place to Work Institute Japan)2021年ランキングで、シスコジャパンは「働きがいのある会社No.1」(大企業部門)に選ばれました。シスコは、“全ての人にインクルーシブな未来を実現する”という“パーパス”を全社員が共有し、シスコの価値観である、社員一人ひとりがより多くの多様性とより高い革新を目指し自律的に活動している結果だと思います。これこそがシスコの最大の強みであり、私たちの誇りでもあります。

 今後はテレワークを含めたハイブリッドワークが当たり前となっていくでしょう。会社は社員に対して機会、裁量、選択肢を与えることが必要となります。すなわち自由を認める。しかし、自由だけでは組織がバラバラになる。いかに自律的に判断・行動できるか。「自由」と「自律」の両立が、ニューノーマル時代の働き方のキーワードになるでしょう。

 自由はテクノロジーや制度で提供できますが、自律には企業文化の醸成が欠かせません。いくらテクノロジーやツールを導入しても、使う人のモチベーションが向上しないとデジタル変革は成功しないからです。自由と自律の両立に向け、いかに企業文化を醸成していくか。その経験とノウハウも積極的に提供していきたいと思います。

――日本企業および社会全体のデジタル化に向けて、今後の展望を教えてください。
 私が社長就任後、最初に社員に伝えたのは「お客様の成功こそが、私たちの成功である」という考えです。私たちはただ製品やインフラを提供する会社ではない。様々なサービスやノウハウを含めて、お客様企業やパートナー様のビジネス、そして社会の変革に直接貢献する会社でありたいと思います。それがシスコの“パーパス”の実現につながると確信しています。

 ただし、これはシスコ単独で実現できるものではありません。従来のパートナー企業はもとより、異業種の企業とも戦略的な協業を促進し、揺るぎない信頼関係を築いていきたい。こうした活動を通じ、お客様のデジタル変革と日本社会のデジタル化を、全社を挙げてご支援していきます。
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シスコシステムズ合同会社 URL:https://www.cisco.com/c/ja_jp/