2020年12月8日、CentOS ProjectがCentOS Linux 8の開発を2021年末に終了すると発表した。突然の発表は、無償で利用できるRHEL (Red Hat Enterprise Linux)クローンのCentOSを利用している多くの日本企業に衝撃を与えた。1万台超えの仮想サーバーと、年間1,000台以上増える新規仮想サーバーの標準OSとしてCentOSを採用していたソフトバンクも例外ではない。テクノロジーカンパニーを目指す同社がCentOSの代替として採用したのは、2000年から企業向けLinuxディストリビューションの提供実績をもつサイバートラストの最新Linux OS「MIRACLE LINUX 8.4」だ。ソフトバンクが次期OSの選定で重視した4つのポイントとは? 2021年10月からMIRACLE LINUXを採用したITインフラの提供が開始。一大プロジェクトの舞台裏を追った。

1万台超えの仮想サーバーに採用していた
CentOSが開発終了に

1981年に開始したパソコン用パッケージソフトの流通事業がソフトバンクの出発点だ。ターニングポイントとなったのは、2004年の固定通信事業、2006年の移動通信事業への参入である。現在、ソフトバンクは5Gの取り組みを通じて通信事業を強化しながら、通信以外の領域拡大を目指す「Beyond Carrier」戦略を掲げ、「総合デジタルプラットフォーマー」として新たな成長ステージに入っている。

この40年間で大きく変貌を遂げたソフトバンクだが、「情報革命で人々を幸せに」という経営理念と、果敢に挑戦するベンチャー精神は創業以来、今も変わることはない。

「社会で最も必要とされるテクノロジーカンパニー」を目指すソフトバンクは、通信事業を基盤に、様々な産業分野で革新的なサービスを創出している。ソフトバンクの多様なサービスや業務をITで支えているのが、同社のコーポレートIT本部である。その役割について、コーポレートIT本部 ITインフラ統括部 統括部長 種邑宏平氏は話す。

「基幹システムや業務システムはもとより、コールセンターやソフトバンクショップ、グループ会社との連携など様々なビジネスを支援するシステムを開発しているのがIT本部です。その中で、ITインフラ統括部は、システムを動かすインフラを提供しています。大規模な要求に対しても必要なときに素早く応えるために、社内のオンプレミスとクラウドを連携したハイブリッドクラウド基盤を構築しています。また、開発者の生産性向上を図るべく、インフラの自動構築や、システムの設定・管理を自動化するオーケストレーター機能などの開発も行っています」

インフラ統括部では、システム開発者に対し1万台を超える仮想サーバーを提供。さらに毎年新しい仮想サーバーが1,000台以上も増加するという。従来、仮想サーバーのOSには、標準インフラとして無償のCentOSを採用し、標準以外のインフラに有償版のLinuxを適用していた。CentOSは、実績のある有償ディストリビューションのRHEL(Red Hat Enterprise Linux)のクローンLinuxで無償で利用可能だ。無償に加え、安定動作や長期間の修正パッチ更新を求める企業に広く利用されてきた。ところが2020年12月、CentOS Projectから2021年12月末をもってCentOS Linux 8の開発とサポートを終了し、CentOS Streamの開発へフォーカスするとの突然の発表があり、CentOSを利用している企業に衝撃が走った。ソフトバンクも例外ではなかった。

CentOSの代替となる
次期Linux OSの選定で重視した4つのポイント

2021年12月末のサポート終了まで時間的に余裕がなかったことから、標準インフラとして提供していたCentOSの代替となる次期Linux OSの選定にすぐに入ったと種邑氏は話し、選定の際に重視した4つのポイントを説明した。

  • 1. RHEL完全クローン

    OSを変更してもシステム開発及びIT運用側に影響が出ないように、CentOSと同様に使えるRHEL完全クローンであること。

  • 2. 長期メンテナンスと技術サポート

    長期間使い続けるシステムもあるため、10年間の長期メンテナンスと技術支援は必須。

  • 3. ライセンス無償

    インフラとして提供している仮想サーバーは台数が多く、今後も増え続けることから、OSの有償ライセンスを採用した場合のコスト増大は大きな課題となる。ライセンス無償によるコスト最適化が不可欠。

  • 4. 標準インフラで提供している各社製品の認証の取得

    サーバー、ハイパーバイザー、セキュリティ製品、データベース、ミドルウェア、運用監視ツール、スケジューラーなど標準インフラで提供している各社製品の認証取得は基本条件。

4つのポイントを満たす製品がなかなか見つからない中、ITインフラ統括部に対して既存のCentOSのサポートを依頼していたサイバートラストから次期Linuxの代替として「MIRACLE LINUX」の提案があったという。MIRACLE LINUXは、国内唯一の企業向けLinuxディストリビューターであるサイバートラストが2001年より開発し提供している企業向けLinuxだ。

「MIRACLE LINUXも選択肢の1つでした。しかし、提案当時は有償であり、RHEL完全クローンとしてパッケージ名やバージョンなどに若干の違和感がありました。サイバートラストから、2021年10月にリリースするMIRACLE LINUX最新版は、CentOSの受け皿となるべく、商標の部分以外は、CentOS Linux 8とパッケージ名もバージョンも全く同じ機能互換のあるクローンを実現し、なおかつライセンス無償で提供するというお話がありました。サイバートラストの提案は、ファーストユーザーとして先行導入をしないかというものでした」(種邑氏)

テクノロジーカンパニーを目指すソフトバンクにおいて、ITインフラ統括部は最先端テクノロジーをいち早く導入することを強く意識しインフラ基盤の開発を行っていると種邑氏は強調する。「CentOSの受け皿となる国産Linux OSという、まだ誰も踏み入れていない技術領域に挑むのは、ITインフラ統括部のチャレンジ精神を大いに刺激しました。また、CentOSの技術サポートをお願いしていたことから、サイバートラストのLinuxエンジニアの高い技術力は評価しており、一緒に“やりきる”ことができると思いました」

2021年4月、コーポレートIT本部では、次期Linux OSとしてMIRACLE LINUX最新版を選定し検証を開始していくという方針を立てた。

MIRACLE LINUX最新版の長期サポートは10年、
コスト最適化と大きな安心を実現

CentOSのメンテナンスが終了する2021年12月末を視野に入れ、次期Linux OSとしてMIRACLE LINUX最新版の提供開始を2021年10月に設定。サイバートラストは、VMware ESXiの認証をはじめ、認証取得に取り組み、2021年7月までにインフラ統括部が標準インフラで提供する各社製品の認証取得を完了した。それを受け、ITインフラ統括部はMIRACLE LINUXを使って各社製品や自動構築などの動作検証を実施。

検証は、MIRACLE LINUX最新版リリース前の先行導入だったため調整が大変だったと、テクノロジーユニット コーポレートIT本部 ITインフラ統括部 ITインフラ部 ITインフラ2課 担当課長 岩村英男氏は話す。「検証時には、MIRACLE LINUX最新版はまだ開発中だったため、リリースされる内容を反映してもらう必要がありました。またコロナ禍で、サイバートラストも含め社内関連部署とのミーティングも、迅速にレスポンスできるコミュニケーションツールを使ってオンラインで行いました」

検証を通じて、サイバートラストのLinuxエンジニアが有するスキルの高さを改めて認識したと岩村氏は話す。「検証を進める中で、問題が起きた際もサイバートラストのエンジニアのアドバイスですぐに解決できました。Linuxに対する知見とノウハウを持つエンジニアのサポートにより、短期間で確実な検証作業が行えました。国内のLinuxディストリビューターならではの迅速かつきめ細かい対応は、大きな安心に繋がっています」

現在、次期Linux OSへの切り替えプロジェクトは、2021年10月のサービス開始に向けて順調に進んでいる。導入効果について、「目に見えてわかるのがコストです」と種邑氏は話す。「ライセンスが無償になったMIRACLE LINUXを利用することで、CentOSを使っていたときと同様に、現在から将来に向けてコストの最適化が図れます」

安心して使い続けるためには、長期サポートも重要なポイントとなる。「MIRACLE LINUX最新版の長期サポートは10年です。既存のMIRACLE LINUXは、産業機器向けに超長期サポートを行っており、必要に応じて相談にのってもらえると考えています」(岩村氏)

今後の展望について種邑氏は「2021年10月からシステム開発の要求に対し、MIRACLE LINUX最新版を採用した開発環境を提供し、その後、商用環境の提供に向けて構築試験に入ります。CentOSから MIRACLE LINUX最新版に切り替えても、何も変わらずシステム開発が進んでいくというのが、今後の重要テーマです。サイバートラストには、システム開発者からの問い合わせに対し、迅速かつ丁寧な対応による安心感の醸成をお願いします」と話し、こう続ける。

「今後、標準以外のインフラで利用している有償のLinuxはもとより、コンテナのプラットフォームなどの有償製品を置き換えてさらなるコストの抑制を図るべく、MIRACLE LINUXの認証製品対象の拡大や機能強化を期待しています。また先行導入した当社としては、今回のプロジェクトが日本産業の活性化に寄与する布石となることを願っています」

2021年10月、MIRACLE LINUX最新版のリリース時には、クラウドサービスのAzureとAWSのマーケットプレイスからも無償で利用可能となる。MIRACLE LINUX最新版は、CentOSを採用している多くの日本企業に対し、受け皿として新たな選択肢を提供し、日本企業の成長とともに歩んでいく。

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