日経 xTECH Special

AGVを作業中に「ちょこちょこ」充電	100Aの非接触急速充電で可能にAGVを作業中に「ちょこちょこ」充電	100Aの非接触急速充電で可能に

株式会社ダイフク

工程単位で進んできたものづくりの自動化は、AGV(無人搬送車)により複数工程をまたいだ全体での自動化に発展している。しかしAGVには定期的な充電が必要で、その間はAGVを止めなければならない。そこで搬送の合間に非接触で急速充電を行うことで充電のための停止時間を短縮し、AGVの稼働率向上に取り組んできたのが、ワイヤレス充電システム「D-PAD」を提供するダイフクだ。短時間で十分な充電を可能にするには充電電流を引き上げる必要があったが、周囲の部品などに対する影響が大きく開発は困難を極めたという。

高木大道氏
株式会社ダイフク
クリーンルーム事業部
営業本部
営業部
高木大道

 「自動化したシステムなのに、AGVはなぜこんなに止まっている時間が長いのか」。充電のために停止中のAGVを前に、ユーザーから指摘されたダイフクのクリーンルーム事業部営業本部営業部の高木大道氏は、返す言葉がなかったという。

 バッテリーで動き続けるAGVには充電が欠かせない。充電の際は専用の充電ステーションで停止する必要がある。AGVのバッテリーは大容量で鉛蓄電池のものも少なくないこともあり、満充電にはバッテリー駆動時間と同じほどの時間を要する。その分AGVが「働かない」時間があることが、自動化を徹底的に追求したいユーザーには不満だったのだ。「一回の充電時間が長いため、充電ステーションが一台のAGVで長時間専有されてしまうことも問題でした」(高木氏)。

 充電ステーションではなくレールから接触式で充電したり、床下に埋め込んだ長いコイルから非接触で充電するならば、AGVを止めずに充電できる。しかしそれには大きな工事が必要となるうえに走路が限定されてしまう。一方でAGVにも大容量のリチウムイオン電池を搭載する動きが進み、同時に積載重量拡大の期待も高まっている。その期待に応えるには、バッテリーが大きく減る前に短時間で効率よく充電する仕組みがなければならない。

 その仕組みとしてダイフクが考えたのが、作業中の合間を縫ってたびたび充電する「オポチュニティ充電」であり、それを「ちょこちょこ充電」システムとして具体化したのがD-PADだった。

  • D-PAD
  • D-PAD
100Aの急速充電に対応したワイヤレス充電システム「D-PAD送受電PAD」(左)(上)。AGVとAGVの停止位置にそれぞれ設置し、非接触で充電する。充電電流を最大100Aにまで高めたモデルにより、AGVの上にロボットを載せたモバイルマニピュレータではロボットの作業中のような短時間でも十分に充電できるようになる(右)(下)

高頻度の充電で予想される
問題にどう対応するか

二宮大造氏
株式会社ダイフク
クリーンルーム事業部
生産本部
パワーデバイス部
二宮大造

 作業の合間に十分な充電を行うためには、場所を問わず急速充電が可能なシステムが必要だ。D-PADでは設置の自由度の高い小型のパッドと非接触の急速充電の機能を組み合わせ、その機能を実現している。先行して充電電流が30Aのものと65Aのものをラインアップしてきたが、さらなる急速充電を求めるニーズに応えるために、同社は充電容量を100Aにまで引き上げたモデルを新たに用意することにした。「100A以上の充電に対応したBMS(バッテリーマネジメントシステム)を搭載したリチウムイオン電池も登場し、期待に応えられる製品を開発できると考えたのです」(同社クリーンルーム事業部生産本部パワーデバイス部の二宮大造氏)。

 しかしその実現にはさまざまな課題があった。一つは送電側の熱収縮の問題だ。作業の合間に大きな電流で充電しようとすると、部品を覆う樹脂が高頻度に熱収縮を繰り返すようになる。それが原因で強度が下がって樹脂にクラックが入り、内部の部品に不具合を引き起こしかねない。また受電側にも「小型化でもともと設計が窮屈だったAGVに、大電流に対応できる充電コントローラーをどのようにスリム化して搭載するかという問題がありました」(二宮氏)。

 それらの問題を一発で解決できる方法はない。二宮氏ら開発メンバーは細かい努力の積み重ねで、問題を乗り越えることにした。送電側の熱収縮は樹脂の固定方法や絶縁材料の配置を工夫することで対応。受電側は電流の位相を分散させて、電流のピークを下げることで、小型化しても熱がこもらない設計を行い問題を解決した。

 受電側は充電制御の機能も改良している。「充電を作業中に何度も繰り返すことができるようになると、バッテリーが満充電になる機会が増えます。満充電でバッテリーが突然ゲートを切ったときに、行き場所を失った電流がコントローラーを壊してしまうことのないように、より細かく充電を制御する機能も設けました」(二宮氏)。

D-PAD
100A対応のD-PADでは、作業のために停止するわずかな時間を使って充電を繰り返す「ちょこちょこ充電」を可能にし、充電のために長時間AGVを止めるようなことが不要になった

ロボット+AGVの
組み合わせに
最適な充電システム

 こうして実現した充電電流100A対応のD-PADで、同社が思い描いてきた「ちょこちょこ充電」は従来モデル以上に現実的なものになった。AGVが搬送物の上げ下ろしなどのために止まる場所ごとに送電パッドを配置することで、作業中でも十分な充電を行えるようになったのだ。充電は随時行われることになるため、100Aによる急速充電の機能と合わせて充電にかかる時間、言い換えればAGVをムダに休ませている時間は大幅に短縮される。

 100A対応のD-PAD開発の効果は充電時間の短縮だけにとどまらない。同社が目指しているのは、AGVとロボットアームを組み合わせた「モバイルマニピュレータ」への適用だ。「AGVの上でロボットが動くモバイルマニピュレータは、AGVとロボット双方が電力を消費します。モバイルマニピュレータを使いこなす上で、効率のよい充電システムは欠かせません」(高木氏)。D-PADではロボット動作時にAGVが止まる位置に充電ステーションを配置しておけば、ロボットの動作とAGVへの充電を同時並行で行える。また「ロボットを載せたAGVは、実は停止位置がそれほど精密ではなく、ロボットの動作の影響を受けて揺れも生じます。それでも停止した位置で充電できるように、送電側と受電側のパッドの位置ずれを40mmまで許容したのも、モバイルマニピュレータでの採用を意識したものです」(二宮氏)。

 ロボットを可搬にすることが、生産現場の人手不足解消に効果的なことは広く知られるようになった。それはロボットメーカー各社が可搬型の協働ロボットの開発を加速させていることにも表れている。しかしそれを動かす動力の供給という肝心の部分で、現実的な解がなかったのが事実だ。100Aの急速充電で「ちょこちょこ充電」を可能にしたD-PADは、真にロボットを現場に適用しやすくするための効果的なソリューションとなるだろう。

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