函館五稜郭病院 Azure Stack HCI 採用事例 院内システム基盤をHCIで刷新 次世代を見据えた“医療DX”を推進

北海道道南エリアの地域医療を担う函館厚生院 函館五稜郭病院(以下、函館五稜郭病院)。同院は、スペック不足に陥っていた院内システム基盤の課題を解決するため、3階層アーキテクチャの既存インフラを刷新。新たなインフラ基盤として、デル・テクノロジーズの「Azure Stack HCI」を採用した。課題の解消により、病院スタッフの業務環境が大きく向上。より良い医療の提供に向け、医療のデジタルトランスフォーメーション(DX)に取り組んでいる。

道南エリアの地域医療を支え、
医療の“未来”も考える

社会福祉法人函館厚生院 函館五稜郭病院
病院長
中田 智明 氏

「安心・信頼・満足を患者さんと地域に」を基本理念とする函館五稜郭病院。明治33年(1900年)に設立された前身の函館慈恵院から120年以上にわたり、函館市を中心とする道南エリアの地域医療を支えている。「救急患者の受け入れ件数は年間3000件以上、手術件数も年間6000件以上。二次救急医療施設としては国内屈指の実績です」。こう話すのは函館五稜郭病院の病院長を務める中田 智明氏だ。

同院は厚生労働省指定の地域がん診療連携拠点病院でもある。320列コンピュータ断層撮影装置(CT)、手術支援ロボットのダヴィンチSiなどの高機能治療機器を整備し、高精度放射線治療も行う。

患者の早期社会復帰を支援するリハビリテーション・機能回復治療にも力を入れる。地域医療連携の拠点となる医療総合サービスセンターを院内に設置し、介護・福祉施設と連携した包括的な医療・介護体制も整えている。

医療の“未来”を見つめる姿勢は、ICT戦略にも色濃く反映されている。同院が目指すのが、高度な次世代医療を提供する「AI・スマートホスピタル」の実現である。そのために“医療DX”を推進し、先進的な仕組みを開発・運用している。

入院患者のバイタルデータの自動取得はその1つだ。医療機器で計測した患者の体温、血圧、心拍数、血中酸素などのバイタルデータは自動的に電子カルテシステムに入力され、通常と異なる数値を計測した場合はナースセンターにアラームが上がる。「患者を常に見守り、迅速な看護を提供するのが狙い。バイタル計測を行っていた看護師の負担軽減にもつながっています」と中田氏は説明する。

5年先でも色褪せない基盤を求め
Azure Stack HCIを採用

このように同院は先進的な取り組みを進めているが、そのICT環境には課題を抱えていた。中でも院内システムの仮想基盤は早急な対策が必要だった。

社会福祉法人函館厚生院 函館五稜郭病院
企画情報システム課長
佐々木 眞氏

物理サーバーで運用していた院内システムは2014年に仮想基盤化したが、ユーザー数や利用頻度の増加に伴い、仮想基盤のスペック不足が顕在化していたのだ。「仮想基盤に使う2台の物理サーバーは使用率がほぼ100%の状態。仮想化できず、別の物理サーバーで稼働せざるを得ないシステムも増えていました」と企画情報システム課長の佐々木 眞氏は振り返る。

仮想インターネット環境もひっ迫していた。電子カルテ端末は情報保護のため、直接インターネットにつなぐことはできないが、仮想基盤化により、電子カルテ端末からでもRDS(リモート・デスクトップ・サービス)で仮想インターネットを利用できるようになった。ところが、クラウドサービスの導入により、仮想インターネット利用が大幅に増加。「現場からはアカウント数の追加を求められていたのですが、スペック不足でニーズに応えられませんでした」と佐々木氏は続ける。

しかも従来の環境はストレージ、ストレージネットワーク、サーバーで構成される3階層アーキテクチャ。院内ICT環境は企画情報システム課の3人のスタッフで運用していたため、機器の増加とそれに伴う負荷増大も大きな課題だった。

課題解決には基盤のリプレースが必要だが、仮想基盤のニーズの予測は難しい。「万が一に備え、容易にスケールアウトできる環境を求めていました」と話す佐々木氏。仮想基盤が年々クリティカルな存在になっており、故障によるシステム停止も可能な限り防ぎたい。ただし、数年後に病院改築工事を控えているため、移設作業のリスクを減らすためにも、複雑な構成は避けたい。「ICTの技術進化は非常に速い。“今”に軸足を置きつつ、5年先、10年先の医療に貢献できるICTを考えなければなりません」と中田氏は話す。

これらの要件を満たすソリューションとして選定したのが、デル・テクノロジーズの「Azure Stack HCI」である。3階層一体型の構成で高スペック。耐障害性が高く、容易にスケールアウトも可能だ。「一体型の構成なのでインフラの管理も効率化できる。もともと仮想基盤はHyper-Vを利用していたため、Azure Stack HCIとの親和性が高く、ライセンスの継続利用で導入コストも抑えられます」と佐々木氏は選定の理由を述べる。

顧客に寄り添う
親身かつ適切な対応に共感

製品スペックはもちろんのこと、デル・テクノロジーズの提案力と対応力も大きな決め手になった。「デル・テクノロジーズの担当者は仮想基盤の現状と課題、今後の拡張性、予算のすべてについて非常に親身に対応してくれたことが大きかった。検討段階から性能と予算のバランスを考えて『オールフラッシュ』『オールHDD』『ハイブリッド』のインフラ構成を提案してくれたのです」と佐々木氏は話す。

院内システムのサポートは、同院のシステムに精通し高い技術力を持つ地元IT企業の函館インフォメーション・ネットワーク(以下、HINET)が担っている。同院としては、基盤刷新後もこの体制は継承したいと考えていた。

この要望にもデル・テクノロジーズは柔軟に対応した。「HINETと緊密に連携し最適なサイジングを考えてくれたほか、移行作業で重要になるポイントなどもアドバイスしてくれました。世界的なITベンダーがここまで対応してくれることに、正直驚きました。信頼できるパートナーとの確信が持てたため、デル・テクノロジーズにお願いしようと決心したのです」と佐々木氏は語る。

こうして同社はAzure Stack HCIのハイブリッド構成を4ノード導入。2020年10月より移行作業をスタートした。デル・テクノロジーズはHINETと連携し、基盤の構築からシステム移行、そのテストまで幅広く支援した。「おかげで作業はトラブルなく進行し、ダウンタイムはほぼゼロで移行を完了。実質2カ月という短期間で稼働を開始できました」と佐々木氏は評価する。

函館五稜郭病院内のサーバールームに設置されたAzure Stack HCI

スペックは3倍向上し、
全部署で仮想インターネットの利用が可能に

4ノード構成のAzure Stack HCIの基盤スペックは既存環境と比較し、3倍アップした(図1)。処理速度は体感で違いが分かるほど向上しているという。

スペックが向上したことで、システムの集約化も進んだ。物理サーバーで運用していたシステムの仮想基盤への移行が可能になったからだ。現在は服薬指導管理システムや調剤支援システムなどの医療系、セキュリティシステムや仮想インターネットシステムなどの非医療系を併せた17システムを23台の仮想サーバーで運用している。以前より多くのシステムをAzure Stack HCIの仮想基盤に集約できたため、システムの運用管理も効率化された。

フラッシュメモリとHDDを組み合わせたハイブリッド版Azure Stack HCIを4ノード導入。ノード間通信にPowerSwitchを2台導入し冗長化を図った。トータルスペックはCPUを184コア搭載。メモリは最大479GB、ディスク容量は最大35TBまで拡張可能だ

Azure Stack HCIは本番/バックアップ系の冗長構成を組み、4ノード中2ノードまで障害が発生しても運用継続が可能となっている。システムごとに行っていたバックアップも仮想サーバー単位で実行する仕組みに変えた。これにより、耐障害性が高まり、より安定的な医療の提供が可能になる。「例えば、調剤支援システムは治療に必要な注射薬や処方薬を発行・管理するためのもの。これが機能しなければ、薬剤の提供ができなくなり診療をストップせざるを得ない。こうした不安も大幅に低減されました」(佐々木氏)。

「ProSupport Plus」に契約しているため、万が一、障害が発生しても迅速な対応が可能だ。HINETと連携し、一体的なサポートを提供する体制も整えている。これが大きな安心感につながっているという。

基盤スペックの向上により、提供数が限られていた仮想インターネット用アカウントも230にまで拡大できた。「今はすべての部署に仮想インターネット環境が整備され、誰でもすぐにインターネットを利用できます」(佐々木氏)。

コストメリットも大きい。3階層アーキテクチャを継承し現在のインフラ環境を実現しようとしたら、物理サーバーを更改し仮想サーバーの追加、インターネット接続用のPCなども必要になる。「Azure Stack HCIの採用により、30%以上のインフラコストの削減につながっています」と話す佐々木氏。設置スペースの削減、運用管理の効率化などの効果を加味すれば、コスト削減効果はより高まる見込みだ。

クラウドの活用が進み、
医療の質と業務効率が向上

インターネットの利用環境が整ったことで、クラウドサービスの展開も大きく進んだ。購買管理システム、物流システムをSalesforceに移行したほか、コミュニケーションアプリ「LINE WORKS」を導入。e-Learningシステムや給与システムなどもクラウドサービスを利用している。

クラウドサービスの利用は、医療の質を上げるためにも利用している。例えば発熱外来にて試験的に運用しているWeb問診システムはその1つ。これは、発熱の症状がある外来患者の問診をWebで事前に行うことで、患者の不安を解消し、来院時に適切な治療を迅速に行うもの。コロナ禍における外来患者の不安を解消するため、この仕組みを一般化することも考えているという。

「医療はICT化が遅れている分野です。特に地方の医療機関はなかなかICT化が進んでいない。今回のような顧客に寄り添った提案をしていただければ、地方の医療はまだまだ発展するのではないかと思います。デル・テクノロジーズの今後の活動に期待しています」と佐々木氏は語る。

今後はAzure Stack HCIを院内システムの中心的基盤と位置付け、物理サーバーで運用しているシステムの集約化をさらに進めていく。今回の移行ではダウンタイムによる業務停止を回避できたことから、数年後に控える病院改築時にもHCIを導入し、ダウンタイムゼロでの移設を目指すという。「AI・スマートホスピタルの実現に向け、検査・診療業務におけるAIの活用にもチャレンジしたい」と中田氏は展望を語る。

今後も函館五稜郭病院はAzure Stack HCIを軸に“医療DX”を加速し、地域連携による医療と介護の発展に貢献していく考えだ。

お問い合わせ

デル・テクノロジーズ株式会社

https://www.delltechnologies.com/ja-jp/cloud/solutions/microsoft-azure-stack.htm

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