ニューノーマルの時代に問われるサポート業務のこれから 想定外を「言い訳」にせず、顧客満足を追求したいそのために、あるサポート部隊が選択した「答え」とは

コロナ禍においてサポートチームは大きな課題を突きつけられた。「従業員の健康を守りつつ、いかに顧客の満足を高め続けられるか」という問題である。このミッションを達成すべく、デル・テクノロジーズは“顧客に寄り添う”テクニカルサポート担当者全員が在宅で業務を行う「完全テレワーク」に移行。在宅でも従来と同レベルのサポートを継続し、高い顧客満足度を獲得したという。リモート化が難しいといわれるサポートサービスのシフトチェンジを、同社はどうやって実現したのか。その取り組みをひも解いてみたい。

ニューノーマル時代のサポート業務の
リモート化は”諸刃の剣”

新型コロナウイルスの感染拡大は、企業の働き方を一変させた。出勤削減や“3密”回避が求められ、多くの企業がテレワークを導入したからだ。「在宅での勤務が可能になり、ムダな通勤時間がなくなる」「ワークライフバランスの充実につながる」など多くのメリットが期待できる。

しかし、中にはリモート化が難しい業務もある。顧客の問い合わせ対応を担う保守サービスはその最たる業務の1つ。基本的にサポート拠点でシフトを組んで対応するため、業務を遂行するには担当者が出社することが前提になるからだ。

緊急事態宣言以降、この“当たり前”が大きく揺さぶられることになった。これまで通り、全員が出社すれば、サポート拠点が“3密”になり、社員の不安は高まるばかりだ。最悪、そこがクラスター化する可能性すらある。こうした危機に直面し、一部のサポート拠点を閉鎖したり、コールセンター業務を急遽リモート化したケースも少なくない。

ところが、この対応が裏目に出たケースも多い。多くの企業がテレワークにシフトしたことで、在宅で働く人からの問い合わせが急増したからだ。新たな体制では問い合わせをさばき切れず、顧客へのサービスレベルが低下してしまったわけだ。サポート業務はいわば企業の“顔”。企業の信頼やイメージの毀損につながりかねない深刻な課題である。

2カ月足らずでサポートスタッフ全員が
テレワークに移行

そうした中、機敏な対応でサポート業務のテレワーク化を成功させた企業がある。サーバーやストレージ製品、ワークステーション、PCなどを提供するデル・テクノロジーズだ。

同社のサポートサービスは、サーバーやストレージ、ネットワークのようなエンタープライズ製品から、ワークステーションやクライアントPCまで幅広い製品群をカバーしている。

このサポートサービスについて、電話やWebで一次対応するテクニカルサポートのテレワーク化に舵を切った。対象者は新宿、川崎、宮崎の国内3拠点を合わせた約800人。テクニカルサポートを担う正社員のほぼ全員にあたる。コロナ禍が深刻化する前の2020年2月中旬から順次移行を進め、緊急事態宣言発出中の4月13日にはテレワークによる在宅勤務率100%を実現した(図1)。

図1 テクニカルサポートのテレワーク移行スケジュール(2020年時点)
業務環境のモバイル化とBCP対策を強化するため、以前からサポート業務のテレワーク化を検討していた。2020年2月19日にはガイドラインを発行し、段階的移行を開始。緊急事態宣言発出直後、既に99%のテレワーク化を完了していた

テレワークはテクニカルサポートのミッションである「顧客満足」「効率」「効果」の3本柱を堅持するために取り組んだものだという(図2)。

図2 テクニカルサポートのミッション
顧客の問い合わせに、より速く対応し早期解決を図る。1回の問い合わせ、1回の修理で問題解決できるように努める。この徹底が顧客満足につながるとの考えが根底にある
デル・テクノロジーズ株式会社
ジャパンISGサポートサービス
本部長
山口 善則氏

「コロナ禍でお客様の困りごとは増える傾向にあります。在宅勤務になり、分からないことやトラブルがあっても身近に頼れる人がいないからです。出社している情報システム部門も“3密”回避のために最低限の人員で対応となったケースが多い。テクニカルサポートはそうしたお客様のよりどころです。大変な局面だからこそ、困りごとの解決ができる体制を築くべきだという意見になったのです」。こう振り返るのは、ジャパンISGサポートサービスの本部長を務める山口 善則氏だ。

テクニカルサポートのテレワーク化には、もう1つの重要な理由がある。それは、社員の健康を守ることである。通勤やオフィスの“3密”を回避し、感染リスクの低減に努める。これは政府の要請であり、企業の社会的責任でもある。同社はこの対応を受け身ではなく、前向きに捉えた。

「従業員の健康を守ることで、事業継続が可能になり、お客様へのサポート提供も維持できる。テクニカルサポートのテレワーク化は、社会の持続可能性に配慮したサスティナブル経営の一環でもあったのです」と山口氏は述べる。

BCP対策の備えが不測の事態で
“転ばぬ先の杖”に

ただし、その実現は容易なことではなかったはずだ。前述のように失敗したケースも少なくない。そんな中、同社はなぜ短期間でテクニカルサポートの在宅勤務率100%を達成できたのか。その理由は、コロナ禍以前から進めてきた施策によるところが大きい。

例えば、サポートスタッフのPCをデスクトップPCからノートPCへ順次移行する作業を約2年前から進めていたこともその1つ。コンパクトで機動性の高いノートPCにすることで、BCP対策を想定したモバイル環境を拡充させていたわけだ。

「拠点の計画停電時にもサポートを継続できるように、リモート環境からのコールシステムへのアクセス、ソフトフォンを使った問い合わせ対応、そのパフォーマンスをマネジメントする環境を整え、活用を開始していました」と山口氏は説明する。リモートワークで懸念されるサイバー攻撃や不正アクセスのリスクに備えるため、センター側のセキュリティ対策を強化し、セキュアなVPN回線や強固な認証手段も整備していた。

追加で整備が必要だったのは、コミュニケーション環境の拡充だ。顧客ごとに利用するコミュニケーションツールが異なることを想定し、Zoom、Microsoft Teams、Google Cloud Platformなど主要なツールを利用できるようにした。「モバイル環境への移行推進とBCP対策の環境準備を整えていたため、比較的軽微な投資で、スピーディーかつスムーズなテレワーク移行を実現できました」と山口氏は打ち明ける。

以前から構築していた仕組みや体制もテレワークの推進に役立った。顧客の問い合わせ内容や対応履歴はナレッジとしてデータベースに蓄積される。これを見れば「どのような問題に対し、どう対処すればいいのか」がすぐに分かる。リモートでも顧客を待たせない対応が可能だ。

トラブルの現象だけでは原因の特定が難しい場合やオンサイト保守が必要と思われる場合は、シニアエンジニアにエスカレーションして対応する。顧客の問い合わせはテクニカルサポートがワンストップで受け付け、難易度の高い問題はシニアエンジニアがPC、サーバー、ストレージなど製品ごとのエキスパート人材を招集して対応に当たるわけだ(図3)。

図3 サポート業務の流れ
一次対応を担うテクニカルサポートが電話やWebで問い合わせを受け付ける。まず過去のナレッジを基に対処し、難しい問題はチーム全体でサポートしたり、シニアエンジニアにエスカレーションする

「在宅でもサポートメンバーはコミュニケーションツールでつながっているため、チームで課題解決に当たり、エスカレーションもスムーズに行えました」と山口氏は話す。

トータルサポート力の向上にも力を注いでいたことも功を奏した。例えば、ストレージ製品のサポートを担当していた担当者がサーバーへ、逆にサーバーの担当者がストレージやほかの製品へ担当することも多い。「拠点間の人材交流や異動を通じ、多様な製品の知識・スキルを持つクロスファンクションスキルの強化に努めています。若手社員だけでなく、ベテラン社員をほかの拠点に配置することで、高度なスキルや経験値の横展開にも取り組んでいます。そのため、ある拠点だけリソースが足りないといった事態を回避できます」と山口氏は説明する。

一方、在宅で一人で作業すると、孤立感・孤独感を感じやすい。メンタルヘルスを守ることはテレワークの大きな課題である。「直接会えないからこそ、リモートのコミュニケーションを大切にしなければならない」と山口氏は主張する。

デル・テクノロジーズでは2週間に一度、全社バーチャル会議を実施し、社内のトピックなどを伝える全社ニュースレターも定期的に発行する。部門別でも四半期ごとの全体バーチャル会議を開催するほか、技術スキルの共有を図るバーチャルテクニカルフォーラム、業務を離れてレクリエーションを楽しむバーチャルイベントも行っているという。

チーム単位のコミュニケーションも活発だ。以前から行っていた2週間ごとの上司との面談はリモートで継続。仕事だけでなくプライベートも含めて率直に話し合える場を設けている。チームでのミーティングも定期的に行い“つながり”を維持しているという。

顧客満足度と
案件クローズまでのスピードが向上

テクニカルサポートの完全テレワークから、およそ1年が経過した。気になるのはサポート業務のKPIだ。同社では顧客評価を基にサポート対応を10段階でランク付けし「7」以上の評価を「satisfy(満足)」としている。

「satisfyの割合はテレワーク以前と比べて上昇しています。問い合わせの受け付けから案件クローズまでの時間も速くなっています。サポート業務をテレワーク化したことは対外的に発表しているわけではありません。在宅で対応していることを知らないお客様も多い中、対応品質が下がったなどのネガティブな意見は上がっていません。これまでと変わらないサポート品質に満足していただいている証だと自負しています」その成果について山口氏は次のように述べる。

この取り組みに関心を持つ大手コールセンター事業者、大手損害保険会社などから話を聞きたいという問い合わせが多数寄せられているという。

今後は顧客ニーズの変化に対応し、サポート品質のさらなる向上を目指す。企業でのテレワークが急速に普及して以降、問い合わせのトレンドが変わってきているからだ。電話サポートは午前8時台と夕方の問い合わせが増えた一方、2020年9月以降はメールによる問い合わせが前年比で2割ほど上がっているという。「これまでもお客様対応履歴などから、サポートスタッフのパフォーマンスマネジメントを行ってきました。トレンドの変化を見ながら、より最適な人材配置を考え、求められる対応スキルの向上も支援していきます」と山口氏は前を向く。

デル・テクノロジーズは今後もテクニカルサポートのミッションである「顧客満足」「効率」「効果」を軸に、業界をリードするサポートサービスを通じ、ニューノーマル時代の顧客ビジネスの成長に貢献していく構えだ。

お問い合わせ

デル・テクノロジーズ株式会社

https://www.delltechnologies.com/ja-jp/services/support-services/index.htm