ニューノーマル時代の競争を勝ち抜くには、どのようなIT基盤が必要になるのか。これは多くの企業にとって共通したテーマだ。今後DXを加速するには、経済産業省のDXレポートで指摘されていた「2025年の崖」を乗り越えなければならない。従来のように運用管理に手間と時間がかかるIT基盤では、これからのビジネスに貢献することは難しくなった。このヒントを探るべく開催されたのが2021年5月13日に開催されたオンラインセミナーだ(主催:デル・テクノロジーズ/協力:日経クロステック Active)。ここではその中から、特に注目を集めた2つのセッションを紹介したい。

セッション1 パネルディスカッション

次世代IT基盤に必要な3つのコンセプト
その具体的内容と現在の到達点を探る

セッション2 事例セッション

KADOKAWAのDXを加速する
インフラ改革の内容とその本質とは

次世代IT基盤に必要な3つのコンセプト
その具体的内容と現在の到達点を探る

ニューノーマル時代のIT基盤にはどんな要件が求められるのか。この問いに対し今回のセミナーで提示されたのが、ワークロードの特性に合わせて最適化されたサーバーを提供する「アダプティブコンピュート」、サーバーの運用管理の自動化・自律化を目指す「自律型コンピュートインフラ」、予防的なセキュリティを実現する「プロアクティブレジリエンス」という3つのコンセプトだ。パネルディスカッションでは、この3つのコンセプトの具体的な方向性と現在の到達点が示された。

日経BP 総合研究所
フェロー
桔梗原 富夫氏

インテル株式会社
執行役員常務
技術本部長
土岐 英秋氏

デル・テクノロジーズ株式会社
執行役員 副社長
データセンターコンピュート&
ソリューションズ事業統括
松本 光吉氏

システムの多様化に伴い、
高まる適材適所のサーバー活用

桔梗原 このオンラインセミナーでは「ニューノーマル時代における次世代型IT基盤」はどうあるべきかをテーマに、複数のセッションを行いました。その中でニューノーマル時代のIT基盤には「アダプティブコンピュート」「自律型コンピュートインフラ」「プロアクティブレジリエンス」の3つのコンセプトが重要になるという提言がありました。このパネルディスカッションではそれを掘り下げながら、実際にどこまでその実現できているのかを見ていきたいと思います。それではまず「アダプティブコンピュート」について説明いただけますか。

松本氏 「アダプティブコンピュート」とは、ワークロードに対する多様なニーズに対し、最適なサーバーを提供しようという考え方です。x86サーバーというと、以前はどれも同じようなものだという考え方が主流でしたが、昨今では必ずしもそうではなくなっています。例えばクラウド向けサーバーでは、コンピュートリソースをいかに高密度化するかが重要です。一方、最近ニーズが増大しているエッジ向けサーバーでは、低消費電力や低コストが求められる上、物理的な大きさにも制約があり、防塵性能や稼働温度保証も求められます。またAIやML(機械学習)向けのサーバーでは、並列処理に最適化されたスペックが求められます。そしてもちろんメインストリームとなる、汎用性の高いサーバー群も必要です。

桔梗原 多彩な選択肢の中から適材適所で、最適なサーバーを選べることが重要になるということですね。

松本氏 そうです。そのためにデル・テクノロジーズでは、多彩なサーバーラインアップを用意しています。この図(図1)に示すように、エッジ、AI/ML、メインストリームのスケールアウトサーバー、高密度なクラウド向けサーバーなどを取り揃えています。さらにそのラインアップを強化するため、今回は10種類以上のモデルを新たに発表しました。

桔梗原 本当に多彩な選択肢がありますね。

松本氏 さらにこれらのサーバーは、環境面にも十分に配慮した設計になっています。設計時点で主要なコンポーネントや使用工具を標準化・共通化することで試作品を最小限に抑えるとともに、熱制御への多面的なアプローチや、リサイクルプラスチックの採用なども行っているのです。

桔梗原 これらのサーバー群を支えるCPUは、どのような方向へ進化していますか。

土岐氏 当社は新しいCPU製品として、第3世代インテル® Xeon® スケーラブル・プロセッサー(コードネーム Ice Lake)を提供していますが、その基本的な設計思想はどのようなワークロード、利用シーンにおいても、きちんと高い性能を引き出せるようにすることです。当社ではこのコンセプトを「フレキシブルパフォーマンス」と呼んでいます。

桔梗原 具体的にはどのような機能が強化されているのでしょうか。

土岐氏 まずクラウドやエンタープライズ、HPC(ハイ・パフォーマンス・コンピューティング)、5G、IoTなどを視野に入れ、パフォーマンスを最適化しています。前世代に比べ、クラウドでは最大1.5倍、6GやIoT、HPCでは最大1.5~1.62倍の性能を実現しています。また暗号化アクセラレーションや「インテル®DLブースト」というAIアクセラレーションも内蔵。AIの推論処理では最大1.74倍の処理能力を発揮します。

「レベル3」を超えつつある
自律型運用

桔梗原 サーバー、CPUともに大きく進化していますね。次に2つ目のコンセプトである「自律型コンピュートインフラ」についてお聞きしたいと思います。

松本氏 これは自動車の自動運転になぞらえると分かりやすいと思います。自動車の自動運転は、「オペレーターが支援するレベル1」「部分的な自動化でハンズフリーを可能にするレベル2」「条件付き自動化で目を離すことができるレベル3」「運転を意識させない高度な自動化を可能にするレベル4」、そして「どのような状況でも運転を任せられるレベル5」が存在します。現在のサーバーの自動化レベルは、このうちレベル3を超えつつあるという状況です。

桔梗原 最近、市販車にレベル3の自動運転機能が搭載され話題になっていましたが、デルのサーバーでは具体的にはどのような運用が可能なのでしょうか。

松本氏 ITリソースの利用開始までの時間を短縮できる「高速プロビジョニング」や、異常検知と自動リカバリーを行う「自律型システム修正」、プロアクティブなワークロードチューニングを行う「自動最適化」、ポリシーベースでアクションを実行する「自動メンテナンス」といったレベルまで実現しています。デル・テクノロジーズではこれらを可能にするため、管理プロセッサーである「iDRAC」や、広範囲な監視や制御を行うソフトウエア「OpenManage Enterprise」などを提供しています。これらを活用することで、管理者がデータセンターまで出向くことなく、運用管理を極力自動化していくことが可能になるのです(図2)。

これらを組み合わせて活用することで、現時点でも既に「レベル3」を超える自動運用が可能になっている

土岐氏 自動化の実現には、実はCPUによる支援も重要となります。例えばパフォーマンスを最適化するには、暗号化やAI推論のアクセラレーションの存在が大きな役割を担います。CPUの処理能力を使うことなく、これらの処理を高速化できるからです。またデータのやり取りを高速化するには、外部記憶との連携も高速化しなければなりません。

桔梗原 そのためにCPUも機能強化しているということでしょうか。

土岐氏 その通りです。先ほど申し上げたように、第3世代インテル® Xeon®スケーラブル・プロセッサーにはAI処理をアクセラレートできる機能が内蔵されており、暗号化も「AVX -512」という命令セットを使うことでアクセラレートできます。さらに外部記憶との連携は、Optaneテクノロジーを使うことで高速化できます。こうした機能は今後の自律化、自動化を推進する上で、重要な役割を果たすことになると考えています。

桔梗原 実際に取材をしていますと、情報システム部門の皆さんはコロナ禍でのテレワーク対応などで、非常に負荷が高くなっているようです。このような運用の自律化・自動化は、これから必須になっていきますね。ユーザーの立場としてはレベル4に早く到達してほしいというのが本音ですが、現時点でもかなり進んでいることが理解できました。

サプライチェーンでも
確保されている安全性

桔梗原 それでは3つ目の「プロアクティブレジリエンス」についてはいかがでしょうか。これは攻撃からの回復力というセキュリティ面での要件ですが、現在はどのような機能が重要になっていますか。

土岐氏 DoS攻撃というサーバーをダウンさせるサイバー攻撃がよく聞かれるようになっていますが、最近では特にハードウエアレイヤーを対象にした攻撃が目立ちます。従来であれば大量のネットワークアクセスでサーバーをダウンさせていたのですが、心臓部となるプラットフォームのファームウエアを攻撃することで、そもそもサーバーそのものを復旧させないという「パーマネントDoS攻撃」が増えているのです。その具体的な手法は、ファームウエアを改ざんして、ブートさせないようにする、というものです。

このような攻撃に対処するアプローチとしては「NIST SP 800-193」があります。これは「プラットフォームファームウェアレジリエンスガイドライン」と呼ばれるものですが、当社もこの策定に貢献しました。実際に最新のCPUには文字通り、「インテル® プラットフォーム・ファームウェア・レジリエンス」という機能が搭載されています。これはファームウエアを防御するだけではなく、もし改ざんされた場合には復旧させる機能も備えています。デル・テクノロジーズのサーバーには既にこの機能が導入されており、安心して使える製品になっています。

松本氏 今のお話のように、テクノロジーとしてはハードウエアやBIOS、ファームウエアを防御する様々なものが実装されてきています。これに加えてデル・テクノロジーズでは、サプライチェーンのセキュリティ確保にも取り組んでいます。これは工場出荷からお客様の手元に届くまで、悪意のある改ざんが万が一にも起きないようにするというものです。具体的には暗号化されたデジタル署名によって、改ざんされなかったことを検証できるようにしています。このような取り組みを今回の新製品から適用しています(図3)。

暗号化されたデジタル署名によって、工場出荷からサーバー稼働までのプロセスで改ざんがないことが保証されている

桔梗原 食品のトレーサビリティのようなものですね。

松本氏 まさにその通りです。食品のトレーサビリティのように「生産者の顔が見える」わけではありませんが、バーコードでトレースして安全安心なものをお届けするという観点から見れば、同様のコンセプトだといえます。

桔梗原 こういった機能があると、ユーザーにとっては安心感につながります。このようなハードウエアのセキュリティに加えて、これから5GやIoTが普及してエッジコンピューティングの利用が広がっていくと、その部分のセキュリティも大きな課題になりますね。

今後、爆発的に増えていく
エッジサーバー

土岐氏 そのとおりです。デジタルデータの生成量は、2025年には175ゼタバイト(10億テラバイト)に達すると予測されていますが、その多くをエッジ側のデータが占めるといわれています。エッジ側のデータが増えれば当然ながら、その処理のためにクラウドやサーバーへのトランザクションが増えることになり、サイバー攻撃をうける危険性も高くなると考えられます。

もちろんエッジで生成されたデータをそのまま流してしまうと、5Gやその次世代技術を使ったとしてもネットワークのキャパシティを超えてしまうため、エッジ側で処理を行う必要が生じます。当然ながらここでもサイバー攻撃の危険性が高まります。つまりこれからは、エッジコンピューティングが爆発的に増えることを前提に、セキュリティも考えていかなければならないわけです。

松本氏 セキュリティももちろんですが、エッジコンピューティングに最適なサーバーを提供することも重要です。エッジコンピューティングでは性能やコストパフォーマンスだけではなく、消費電力や物理的なサイズに制約があり、防塵性能や稼働温度も重要になるからです。これはエッジサーバーがどのような場所に設置されるのかを考えれば理解しやすいでしょう。モバイルの基地局や工場のライン、流通業の店舗や倉庫などはその一例です。

桔梗原 従来のサーバーよりも、過酷な条件で動作しなければならないわけですね。

松本氏 そうです。デル・テクノロジーズではそのために、XR11とXR12という2機種を2021年7月から販売開始していきます。標準のDell EMC PowerEdgeのすべての機能を備えた上で、エッジに特化したハードウエアになっています。

土岐氏 ニューノーマル時代にはテレワークのような働き方も一般化していくため、エッジで処理されるデータ量はこれまで以上に増えると予想されます。これに対応するには、デル・テクノロジーズ製品に搭載されているセキュリティ機能や、当社と連携して実装しているファームウエアのレジリエンス機能が有効だと考えています。

桔梗原 今回はニューノーマル時代のIT基盤はどうなるということで、ディスカッションを進めてきました。私はこの業界をずっと取材してきてかれこれ30年以上になりますが、ここ数年のサーバーやCPUの進化は目覚ましいものがあると感じています。今回の豊富なラインアップも、顧客にとって大きなメリットをもたらすはずです。本日はどうもありがとうございました。

セッション動画

関連リンク

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デル・テクノロジーズ株式会社

https://www.delltechnologies.com/ja-jp/servers/index.htm