急成長するエッジコンピューティング その最新動向と実現に向けたポイント

急速に拡大しつつあるIoTの適用領域。既に製造業はもちろんのこと、通信業界や流通・小売業、ヘルスケアなど、その領域は多岐にわたっている。こうした流れの中で重要性が高まっているのが、エッジコンピューティングだ。データセンターやクラウドですべてのデータを処理するのではなく、IoT機器や端末が設置された現場=エッジである程度の処理を行い、それとクラウドを連携させる形態が一般化しつつある。その最新動向や実現に向けたポイント、ユースケースについて、この領域をリードする2社のキーパーソンに話を聞いた。

多様な用途への対応のために
3つの取り組みを進めるインテル

データセンターやクラウドにアプリケーションやデータを集中させ、それに端末からアクセスして利用する。こうした使い方は長らくIT活用形態の主流だったが、この10年で大きく変化した。IoTが普及段階に入ったことで、処理の主体が「データセンターからエッジへ」と移りつつあるのだ。

IoTやデバイスで集められたデータは、データセンターやクラウドに渡される前に、オンプレミス側にあるエッジ(エッジサーバー)である程度処理され、その結果がデータセンターやクラウドへと渡されて蓄積・処理される(図1)。なぜこのような処理形態が一般化しつつあるのか。それはIoTやデバイスで生み出されるデータが爆発的に増加しているからだ。ある予測によれば、2025年までには、75%のデータが「中央のデータセンターの外」でつくられることになるという。

IoTデバイスでつくられたデータを迅速に処理し、かつネットワークへの負担を軽減するため、エッジコンピューティングの重要性が高まっている
インテル株式会社
インダストリー事業本部
ビジネス推進統括部 統括部長
糀原 晃紀 氏

「さらに新しい統計によれば、2024年にはエッジでのシリコン市場が650億ドル(約7兆2000億円)に達すると指摘されています。これは驚くべき成長であり、エッジコンピューティングが大きな潮流になっていくことを示しています。インテルでもこの流れを重視し、エッジへの取り組みを積極的に進めてきました。エッジで生まれるデータが爆発的に増えれば、それをすべてクラウドに上げて処理するのは現実的ではありません。また通信経路での遅延が大きすぎて、使い物にならないユースケースもあります。そのためエッジである程度処理を行い、必要に応じてクラウドに上げるのが現実的だといえます」とインテルの糀原 晃紀氏は話す。

このようなニーズに対応するため、インテルでは大きく3つの取り組みを進めているという(図2)。

エッジに最適な多様なシリコンを提供するだけではなく、ソフトウエア領域での取り組みやユースケースの情報共有なども、積極的に行っているという

第1は「エッジに最適な多様なシリコンの開発と提供」だ。「エッジはPCやサーバーとは異なり、用途が多岐にわたります。当然ながらそこで処理されるワークロードも多様であり、単一のプロセッサでは対応しきれません。さらに設置場所も通常のサーバールームやオフィスではなく、湿度や温度、埃などの空気環境をコントロールできないケースが少なくありません。そのためお客様に最適なものを開発し、OEMパートナーと共に提供しています」(糀原氏)。

第2は「検証済みのOSS(オープンソースソフトウエア)で、より早い開発を実現すること」だ。ハードウエアだけではなくソフトウエア環境も視野に入れたパッケージングを行うことで、顧客サイドの開発効率化を支援する取り組みを進めている。

そして第3が、実績のあるユースケースで迅速に市場参入すること。インテルでは既に数千に上る企業や組織でのエッジ展開をサポートしているが、ほかの企業や組織に参考にしてもらうため、それらの情報を蓄積・共有しているという。

顧客との長年の対話が生み出した
デル・テクノロジーズのエッジ向けOEMソリューション

デル・テクノロジーズ株式会社
OEMソリューション事業本部
事業統括本部長
村上 有一 氏

もちろんこのような「シリコン」を実際の製品に落とし込み、企業や組織が利用しやすい形で提供するのは、インテルのパートナーとなるコンピュータベンダーである。ここで特に重要な役割を果たしているのが、デル・テクノロジーズだ。

「製造業だけではなく、通信、流通、ヘルスケアなど様々な業界でエッジ向け製品が組み込まれ始めていますが、当社は10年以上前からこれら多様な産業の皆様に、その業界に特化した製品やOEMソリューションを提供してきました(図3)。標準製品では“痒いところに手が届かない”ため、こうした積極的な対応を行ってきたのです」とデル・テクノロジーズの村上 有一氏は話す。

これら5つのうち右側の2つが、エッジコンピューティングに深くかかわっている

それでは具体的にどのような取り組みを行っているのか。それは大きく5つに分類される。第1は、一般に市販されているデル・テクノロジーズの標準品の中から、顧客に最適なものを選択して提供すること。第2は顧客やパートナーのビジネスニーズに合わせたデ・ブランディング(あえてブランド名や企業名を伏せたブランド戦略)やリ・ブランディング(顧客ブランドでの提供)への対応。第3は、安定性・長寿命・可視性を重視した製品の提供。第4は産業向けの耐久性を備えた機器の商品化。そして第5は、顧客のアイデアを実現するための柔軟なカスタマイズだ。

これらの取り組みを戦略的に推進することで、デル・テクノロジーズはOEMプロバイダーとしてNo.1※1のポジションを獲得しており、Gartner社のマジック・クアドラントでもリーダーに選ばれている※2

「5つの取り組みのうち、エッジとより深くかかわっているのは、第4と第5の取り組みです」と村上氏は説明する。エッジ向け製品は、通常のサーバールーム(やオフィス環境)に比べて劣悪な環境で長期的に利用されるケースが多く、レイアウトの制約から省スペース化が求められることも少なくない。また用途によっては一般的なサーバーとは異なる認定準拠をクリアすることも必要だ。「こうした要求に対応するため、デル・テクノロジーズのエンジニア部隊はお客様としっかり対話を行い、高耐久性を実現した製品の開発とそのカスタマイズ提供を行っています」。

その一方で、エッジにおける多様な経験を製品開発にフィードバックし、汎用品として開発・提供する取り組みも行っている。「エッジの要求に対応した製品を汎用品としてラインアップすることで、より多くのお客様がエッジに取り組みやすくなります。もちろんお客様のエッジに対するニーズは変化し続けているため、ポートフォリオも進化し続けています」(村上氏)。

※1 VDC Researchによる2016年のドル換算出荷額に基づくグローバル シェア。
※2 GartnerのMagic Quadrantのデータ部門でリーダー クアドラントに選出(2019年6月19日)

PowerEdgeサーバーの先進性を
継承しつつエッジに最適化

それではエッジ向けの製品として、具体的にどのようなものがラインアップされているのか。それを示したのが図4だ。幅広い用途に合わせ、多様な製品が用意されていることがわかる。

いずれもコンパクトかつ過酷な環境で利用できるようになっている。また業界をリードするDell EMC PowerEdgeをベースにしており、そのセキュリティ機能や運用管理機能を継承している点も大きな特徴だ
デル・テクノロジーズ株式会社
データーセンター・コンピュート&
ソリューションズ事業統括
製品本部 シニアプロダクトマネージャー
岡野 家和 氏

「これらの製品の最大の特徴は、すべてがDell EMC PowerEdgeをベースにしているということです」と話すのは、デル・テクノロジーズの岡野 家和氏。PowerEdgeは業界をリードするサーバー製品として知られているが、セキュリティと管理性はこの1~2年で大きな進歩を遂げており、エッジ向けサーバーでもその特長が継承されているのだという。

まずセキュリティ面では、感染したファームウエアコードを実行しないようにする「シリコンルートオブトラスト」や「セキュアブート」、ファームウエアの安全性を保証するための「署名付きファームウエア」の実装に加え、自己暗号化ドライブ(SED)とその暗号化キーを安全に管理するための「Secure Enterprise Key Manager」を提供。これらに加え、製品が出荷されて顧客のもとに届くまでの間に改ざんなどが発生していないことを保証する「電子証明書によるサプライチェーン保証」も行われている。

管理性に関してはPowerEdge全機種と同じく、大幅に機能強化された「iDRAC(integrated Dell Remote Access Controller: アイドラック)」が搭載されている。ライフサイクル管理の多くを自動化できる管理プロセッサーだが、その最新版ではテレメトリー機能が追加されており、190種類以上のメトリックデータをJSONフォーマットで時系列に収集できるようになった。この機能を活用することで利用状況の確認や予防保全が容易になる。

こうした進化を遂げる製品のラインアップだが、その中でも特に注目したいのが、PowerEdge XR11/XR12だ。

「XR11/XR12は最新のエッジ向け製品であり、奥行き約400mmのサイズに第3世代インテル® Xeon® スケーラブル・プロセッサーを搭載。埃の多い環境や-5℃~55℃という過酷な温度環境でも動作し、通信業界で世界標準となっているNEBS規格のレベル3や、米軍のMIL規格にも準拠しています。またエアフローの方向をリアからフロント、フロントからリアのいずれかから選択でき、I/Oの配置をリア/フロントから選択できる点も大きな特徴です。そのため設置場所の状況に合わせた柔軟なサーバー設置が可能になっています」(岡野氏)

幅広い領域に広がる
エッジのユースケース

デル・テクノロジーズではこれらのエッジ向け製品について、単に製品単体を提供するのみならず、多様なパートナー製品と組み合わせたバンドル提案を加速している。またこのバンドルソリューションを月額で提供するレンタルパックも用意(「PowerEdge」Edgeレンタルパック)。エッジサーバーを資産化したくない顧客の要望にも応えている。

その一方で「お客様がエッジコンピューティングに取り組みやすくなるよう、ユースケースの公開も行っています」と村上氏は言う。その内容の一部を次のように紹介する。

まず通信分野で提示されているものの1つが、5Gサービス用のエッジアプライアンスだ。5Gでは通信の高速化や遅延短縮のため、基地局での処理が重要になってくる。これに対応するには、処理能力が高く、基地局に収まるサイズのエッジサーバーが求められる。

ヘルスケア分野では、今後IoTを活用した遠隔医療やモバイルMRIの活用が拡大すると予測される。そのためにはこれらの機器のデータを取りまとめ、クラウドへと接続するエッジサーバーが重要な役割を果たすことになる。

流通・小売業では、店舗に多様な端末とデバイスが置かれるようになり、新たな顧客体験の実現が進んでいくだろう。これを効率的かつ効果的に実現する上でも、エッジサーバーの存在は欠かせない。さらに防犯や防災、都市交通の最適化などを目指すスマートシティや、ダムや港湾設備のような社会インフラ、船舶や航空機などのフリートから防衛領域に至るまで、現場でのデータ処理の重要性が増している。高解像度カメラや音響センサー、IoTデバイスで収集した情報を現場でAIなどを駆使してデータ分析を行い、必要な分析結果はセンターにあげつつ、現場での迅速なアクションに繋げるためだ。

ここに挙げたユースケースは、全体のごく一部に過ぎない。今後はあらゆる領域で、エッジサーバーの活用が必須になっていくだろう。そこで重要になるのが、自分たちの使い方に最適な製品やソリューションを、的確に選択することだ。今後も多様なニーズに対応すべくインテルとデル・テクノロジーズは、緊密に協調しながら、企業・組織のエッジコンピューティングへの取り組みを支援していく考えだ。

関連リンク

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デル・テクノロジーズ株式会社

https://www.delltechnologies.com/ja-jp/oem/index.htm

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