AI環境構築事例 日鉄ソリューションズ株式会社 システム研究開発センター学習データの大容量化との戦いに打ち克つ方法とは?

オンプレミスとクラウドを併用するハイブリッドクラウドが広がりを見せている。しかし“ハイブリッドクラウド”というと聞こえはよいが、その多くは“なんちゃってハイブリッド”。運用管理は煩雑を極め、現場は疲弊している。この状況に一石を投じるべく、マイクロソフトとデル・テクノロジーズはAzure Stack HCI対応の統合システムを提供するとともに、最新のデモセンターである「DEJIMA」を展開し、ポストクラウド時代の変革をサポートしている。Azure Stack HCIのインパクトとDEJIMAがもたらす価値について、両社のキーパーソンに話を聞いた。

「ハイブリッドクラウド」という
とらえ方自体がもう古い

――オンプレミスとクラウドをハイブリッドに運用するスタイルが、日本企業の主流になりつつあります。ハイブリッドクラウド化が進む背景をどのように見ていますか。

日本マイクロソフト株式会社
業務執行役員
Azureビジネス本部 本部長
上原 正太郎氏

日本マイクロソフト(以下、MS) 上原氏:開発サイクルをスピードアップして速くサービスを提供する。インフラの柔軟性・拡張性を高め、コスト削減を図る。クラウドのメリットに対する理解が進む一方、用途によっては「データを手元に置いておきたい」「レイテンシーをできるだけ下げたい」という場合もある。2つのニーズを満たすには、適材適所での使い分けが最も理にかなっている。そう考える企業が増えている結果だと思います。

マイクロソフトが実施した調査によると、クラウドを利用するユーザー企業は既に全体の50%超に達しています。ただし、クラウドだけを選択するのは10%強にすぎず、オンプレミスも併用する割合は45%にのぼります。この調査は既存の仮想基盤のリプレース先を聞いたもの。エッジコンピューティングもオンプレミスととらえると、オンプレミスを併用する割合はもっと高いでしょう。

デル・テクノロジーズ(以下、デル)上原:こうした状況を踏まえると、ハイブリッドクラウドという考え方そのものが陳腐化している印象です。オンプレミスとクラウドの接続はより強くなる一方、クラウドネイティブな機能群がエッジコンピューティングという形でオンプレミスに拡張しています。従来のオンプレミスとクラウドの構成を「ハイブリッドクラウド1.0」とするならば「ハイブリッドクラウド2.0」といえるような世界観、あるいはクラウドの活用フェーズが一段進んだ「ポストクラウド」といえるような世界観が広がりつつあります。

――一方でハイブリッドクラウドの実現には様々なハードルがあると聞きます。具体的にはどのような課題があるのですか。

デル上原:現状のハイブリッドクラウドの多くは、オンプレミスとクラウドの併用状態を指しているだけにすぎません。つまり、煩雑な運用を強いられる“なんちゃってハイブリッド”になっている。これを従来の運用方法で管理しようとすると負担が膨大となり、多くのIT部門が悲鳴をあげています。しかも最近では、従来型のオンプレミス仮想基盤に加え、エッジコンピューティングのような領域でもコンピューティングリソースが使われる時代に移ってきています。つまり、オンプレミスの仮想基盤やエッジコンピューティング、クラウドを含めて、どう運用を効率化し、セキュリティを担保するか。これが大きな課題になっています。

MS上原:クラウドのメリットを最大化するためには、導入するだけでなく、運用にも目を配る必要があります。例えば、コストを最適化したいなら、仮想マシンを使わない時は稼働を止める。必要になったらすぐに再稼働させる。そういうきめ細かな運用が必要です。

これをオンプレミスと別建てで管理すると、その負担は大変なものになる。お客様によっては単一のクラウドだけでなく、マルチクラウドを運用しているケースも少なくない。そのため、ハイブリッド環境が進めば進むほど、運用が“ブラック化”してしまうのです。環境の違いを意識せず運用できる仕組みが求められています。

オンプレミスもクラウドも
一元的な運用・管理が可能に

――こうした課題の解消に向けて、マイクロソフトはAzureサービス「Azure Arc」に加え、新たに「Azure Stack HCI」の提供も開始しました。それぞれの概要と特徴を教えてください。

MS上原:Azure Arcは次世代ハイブリッドクラウドを実現するためのサービスです。マルチプラットフォームに対応した様々な機能を実装しています。Azure Stack HCIは、このAzure Arcをビルトインした新たなプラットフォーム。Azure Stack HCIを活用することで、Azure の機能をオンプレミスやエッジコンピューティング環境にも拡張していけます。

Azure Arcの提供機能には2つの側面があります。

1つはAzureの管理機能をマルチプラットフォームで提供できること。全国・全世界の拠点で稼働するAzure Stack HCIとその上のアプリケーションや仮想マシンの管理をAzure Arcを介して統合し、Azureのポータルサイトから一元管理することが可能です。

もう1つはAzure上のPaaSやマネージドサービスをマルチプラットフォームで提供できること。コンテナ化したアプリケーションやPaaSを利用したシステムを、環境の違いを意識せずシームレスに移行・活用できます。例えば、Azure上にあるコンテナ化したアプリケーションをオンプレミスのAzure Stack HCI上へ展開したり、他クラウド上のKubernetes上へ展開することも可能です。

今後はIoTに象徴されるようにエッジ領域のサーバー活用がますます増えていくでしょう。従来の運用ではとても対応できない。この課題を解決するソリューションがAzure Arcであり、Azure Stack HCIはそれを受け入れる重要なプラットフォームという位置付けです。

Azure Stack HCI対応の
統合システムをより使いやすく

デル・テクノロジーズ株式会社
執行役員
データセンター ソリューションズ事業統括
製品本部長
上原 宏氏

デル上原:デル・テクノロジーズもポストクラウド時代に対応したソリューション群を提供しています。国内x86サーバー市場シェアNo.1*のPowerEdgeサーバーにAzure Stack HCIを組み込んだ統合システム「Azure Stack HCI AX Node」(以下、AX Node)はその代表例です。認定済みコンポーネントで構成されたオールインワンのHCIシステムを検証済みモデルとして提供します。BIOSもHCIの性能と機能を最大化する専用BIOSを実装します。また、導入後の保守サポートの際においても、AX Nodeは、通常のサービスにはないAzure Stack HCI認定のパーツ交換保証およびAzure Stack HCIクラスタレベルの動作を含めたサポートサービスを標準で備えており、ハードウェア面においても安心してご利用いただけます。単にサーバーの推奨構成を公開して、通常のサーバー保守をするだけのメーカーもあるようなので、AX Nodeのこういった点は、お客様に高くご評価いただいています。

(注*): 2021年第2四半期(4-6月)の国内市場における売上額および出荷台数シェア。出典:IDC Quarterly Server Tracker, 2021Q2. Share by Company. Product Category=x86

デル・テクノロジーズはWindows Serverのエコシステムを構成するパートナーの1社として、マイクロソフトと長年にわたり密接な協業を続けています。約10年前にHCIシステムを市場投入し、Azure Stack HCIへの対応は4年前から取り組んでいます(図1)。AX Nodeはこれまでの実績とナレッジに加え、デルとEMCの統合によるシナジーを発揮して開発したもの。Azure Stack HCIの性能・機能をフルに引き出すパワフルなコンピューティングパワー、高い信頼性・安定性が強みです。

2017年にWSSDリファレンスソリューションとして提供を開始して以来、継続的にソリューションの進化に取り組んできた。新たなAzure Stack HCIにもいち早く対応し、マイクロソフトと共にポストクラウド時代のソリューション開発を推進する

運用を省力化する自律コンピューティング機構、障害からの自動回復機構、強固なセキュリティ機能も実装しています。クラウドとつないで使うことを前提に設計されており、オンプレミスでもクラウドライクな運用が可能です。

ラインアップも豊富にあり、様々なワークロードに対応する構成オプションを提供しています。従来のAzure Stack HCI向け統合システムを含め、既に世界で1250社以上で6800ノード、国内でも 180社以上のお客様に採用されています(図2)。

SSDとHDDのハイブリッドモデル、オールフラッシュモデル、Optane/NVMeモデルなど多様なハードウエア構成が用意されている。AIや機械学習に特化したモデルもあり、お客様のワークロードに最適なシステムを選択可能だ

またデル・テクノロジーズはクライアント端末、HCIシステムを含むサーバーやストレージ、ネットワーク機器までワンストップで提供しています。この強みを生かし、お客様の課題を解決する最適なソリューションの実現もサポート可能です。複数ベンダーの組み合わせによるシステムの複雑化を防ぎ、調達や保守業務も効率化できます。

――導入サービスやサポート体制にも注力されているそうですね。

デル上原:導入のしやすさや使いやすさを高めるため、Azure Stack HCI専用の導入サービスと保守サポートを展開しています。導入サービスは短期間でお客様のHCIシステムをセットアップします。保守サポートは最長7年の専用サポートサービスで、障害時も検証済パーツを迅速に提供します。

一方、オンプレミスの弱点は資産としてハードウエアを持たなければいけないこと。この弱点を補うため、デル・テクノロジーズはプロジェクト「APEX」を展開しています。すべての製品とソリューションを“as a Service(サービス型)”で提供するというもの。オンプレミスにハードウエアを置きながら、柔軟な資産計上を可能にするモデルです。もちろん、AX Nodeも“as a Service”で利用できるようにしていきます。

次代を先取りする「DEJIMA」を
軸にお客様の変革を支援

――両社が進めるマルチプラットフォーム戦略の一環として2021年9月1日に「DEJIMA」というデモセンターを立ち上げたと伺いました。この目的と概要について教えてください。

デル上原:DEJIMAというネーミングは、文字通り、長崎の出島をモチーフにしたもの。鎖国時代の日本では、先進的な西洋文化はこの出島経由で入ってきた。日本の近代化に大きな役割を果たした変革の前線基地ともいえる存在です。次世代に向けたITの変革もここが起点となり、ここから発信していきたい。DEJIMAというネーミングにはそんな思いが込められています。

ネーミングにはもう1つの理由があります。実はDell、Japan、Intel、Microsoft、Azureの頭文字を取ったもの。すなわち、DEJIMA (Dell Japan Intel Microsoft Azure)です。マルチプラットフォーム戦略を推進するパートナーが連携し、お客様の変革を支援する。その意思表示でもあるのです。

具体的には日本マイクロソフトの品川本社と、デル・テクノロジーズの大手町オフィス「Executive Briefing & Solution Center」(以下、ソリューションセンター)それぞれに配置したAX Nodeを使って、実際にAzure Stack HCIによるマルチプラットフォーム環境を体感できます。

DEJIMAの取り組みを支えるソリューションセンターでは、 Azure Stack HCIのデモ・検証環境が整備され、専任のソリューションアーキテクトが、様々な技術的課題に対するディスカッションやデモ・検証をサポートする。

――マイクロソフトとデル・テクノロジーズは、それぞれどのような役割を担っているのですか。

MS上原:日本マイクロソフトでは、実践的なデモ環境が構築されており、マルチプラットフォーム環境を一元管理し、しっかり動くことを体感できます。多くのお客様が抱くニーズや課題を踏まえた具体的なシナリオも用意しています。

またコロナ禍を考慮して、オンラインのセッションにも対応しています。

デル上原:ソリューションセンターはフェーズが進んだお客様向けのPoCを支援していきます。日本マイクロソフトの品川本社でAzure Stack HCIのメリットを体感していただき、これを活用したIT変革やビジネス変革を目指すお客様と共にPoCに取り組み、ソリューションを具現化していきます。出島経由で入ってきた西洋文化がその後の日本の近代化の礎になったように、DEJIMAの活動をポストクラウドという新しい時代を切り拓く推進力にしていきたいですね。

――ポストクラウド時代に向けて、今後どのような戦略や施策を推進していく考えですか。

MS上原:お客様のビジネスアウトプットの創出は、当社だけで実現できるものではありません。多様なハードウエアやサービスを提供するデル・テクノロジーズの存在は大きい。今後もデル・テクノロジーズをはじめとするパートナーとの協業を深め、真のハイブリッドクラウドの実現に貢献していきます。

デル上原:Azure Stack HCIの登場により、お客様が求める真のハイブリッドクラウドを実現する武器が整ったという印象です。当社はハードウエアベンダーの立場から、このAzure Stack HCIの価値を最大限に高めるソリューションの開発・提供に力を注いでいきます。

今後もアグレッシブにマイクロソフトとの協業を推進し、従来よりも広いスコープで新しいシナリオを創出していきたい。こうした取り組みを通じ、ポストクラウド時代のお客様のハイブリッドクラウド戦略を強力に支援していきます。

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