コロナ禍が契機となり、中堅・中小企業でもデジタル化・DXへの機運が急速に高まっている。しかしその中で、人材不足や予算確保の難しさといった壁に直面しているケースは少なくない。この壁を乗り越えてもらうため、デル・テクノロジーズは奈良先端科学技術大学院大学と共同で「中堅企業DXアクセラレーションプログラム」を推進。さらに大阪産業局とソフトバンクが運営する「5G X LAB OSAKA(ファイブジー・クロス・ラボ・オオサカ)」と連携した取り組みも開始したという。ここではその取り組みの概要や想い、5GがもたらすDXの未来について話を聞いた。

中堅・中小企業の
最大の課題は人手不足

――コロナ禍で中堅企業を取り巻く経営環境はますます不透明になっています。このような中、DXの取り組みはどのような状況なのでしょうか。

デル・テクノロジーズ株式会社
広域営業統括本部フィールドセールス本部 中部営業部
兼 西日本営業部 部長
木村 佳博氏

木村氏

当社では2017年から継続的にDXに関するアンケート調査を行っており、2021年も2~3月にかけて実施しました。ここで注目したいのは、企業活動に必要な情報のデジタル化に取り組んだ企業が21%も増えたことです。以前はデータがないためなかなかデータ活用が進まないという状況でしたが、この問題がこの1年でかなり解消されつつあります。その一方で、DXに投入できる予算が不足していることも明らかになりました。7割を超える企業が、DXを行うには投資バランスを最適化しなければならないと回答しているのです。

今後は、中堅・中小企業にとっては様々な助成金や補助金をいかに活用していくかが、DX推進のカギになると考えています。

――調査データではこのような結果が出ているわけですが、実際に中堅・中小企業のDXを支援する立場からは、どのような状況にあると感じていますか。

公益財団法人大阪産業局
ソフト産業プラザ TEQS
IoT・RTビジネス推進部 部長/チーフプロデューサー
手嶋 耕平氏

手嶋氏

DXを推進したくても、なかなか取り組めないという企業が多いように感じています。その最大の課題は人手不足です。中堅・中小企業の現場は、今回のコロナ禍も影響していますが、それ以前から人手不足に悩まされています。そこで自動化を進めていきたいという話になるのですが、それを行う人材も不足しており、どこから手をつけていいのか分からないといった状況です。DXという言葉が重要なキーワードになってもう1年以上が経過していますが、まだまだ中堅・中小企業の現場からは距離があるといった印象です。

日野氏

私も同じ意見です。大企業にもDXの課題がありますが、その多くは縦割り組織が壁になり、全社横断型の取り組みが難しいというもの。これに対して中堅・中小企業は、全社での動きを素早く行える一方で、それを担う人材が不足している。DXではデータ活用が重要なカギになりますが、データサイエンティストのような人材を雇用することは簡単ではありません。

松本氏

最近はDX推進に向けた課題をお聞きする機会が増えつつあります。その中でもよく聞くのが「DXの概念は分かるが、自分たちのビジネスや業務に落とし込んだときに何ができるか実感できない」というお話です。そのため最初の一歩を踏み出せていない企業も、多いのではないでしょうか。

――世の中で取りざたされているDXのイメージに対して、自社の実態がかけ離れていて、具体的にどうなるのかイメージできていないということでしょうか。

手嶋氏

その通りです。中堅・中小企業には製造業も数多くありますが、その悩みとしてよくあるのが、「ハードウエアは分かるがソフトウエアは分からない」というケースです。DXはデータが重要なカギになるため、どうしてもソフトウエアが不可欠になりますが、知識や経験を持つ人材がいないというのが、大きな課題になっています。

木村氏

先程出てきたデータサイエンティストの雇用も、大手企業は比較的容易かもしれませんが、中堅・中小企業では困難です。またコーディングを行える人材の新規採用も簡単ではありません。そのため中堅・中小企業のDXは、既に社内にいる方々を育成し、内製化していくことが重要なポイントになります。しかし人材は一朝一夕には育ちません。そこで、デジタル技術を実際に使うことで具体的に何ができるのか、ユースケースを見ながら、各社にとって最適なDXのあり方を構想してもらう場が必要なのです。

中堅・中小企業のDXのため
幅広い企業・組織で共創へ

――こうした課題の解消に向けデル・テクノロジーズでは産官学連携で「中堅企業DXアクセラレーションプログラム」を推進しています。どのような思いと経緯から、この話に至ったのでしょうか。

木村氏

デル・テクノロジーズは2020年から産官学連携で中堅・中小企業のDX支援に取り組んでいますが、やはり1社の取り組みでは限界があります。日本企業の99%を占める中堅・中小企業に変わっていただくには、得意領域を持つ企業と連携することが重要になると感じていました。このような企業がバラバラで動いているようでは、人が足りなくなってしまうからです。そこでまずはプラットフォームをしっかりとつくり、複数組織が連携できるスキームをつくり上げることにしました。

日野氏

ソフトバンク株式会社
法人プロダクト&事業戦略本部
デジタルオートメーション事業第2統括部
法人5G推進室
パートナー企画課 担当課長
日野 行祐氏

その一方、ソフトバンクは、2020 年10 月に大阪市様や大阪産業局様、i-RooBO Network Forum様と共同で「5G X LAB OSAKA」を開設しました。これは5Gを活用する製品・サービスの開発を支援するためのオープンラボです。

当社は、DX で日本の社会課題を解決することを目指していますが、そのためにはサプライチェーンの中で重要な役割を果たしている、中堅・中小企業のDX が欠かせません。大企業のDX だけでは社会全体を前に進めることはできないのです。企業だけではなく、公的な役割を果たす自治体や、そこからつながる様々な団体の協力が不可欠だと考えたのがその発端です。この取り組みを進めている中で、デル・テクノロジーズ様から「一緒にやりませんか」というお話をいただきました。そこで5G X LAB OSAKAと連携したアクセラレーションプログラムが誕生したというわけです。

松本氏

5G X LAB OSAKA を活用する中堅・中小企業にとって、ソフトバンクは1つのプラットフォーマーです。当社が提供するプラットフォームの上で共創していただくことももちろん重要なのですが、私たちはそれを超えて、ほかのプラットフォーマーとの連携によってさらなる価値を生み出したいという思いを、以前から持っていたのです。その点、デル・テクノロジーズ様にはサーバー、ストレージ、クライアントなどをはじめとする幅広いハードウエア製品に関する歴史と知見があります。通信事業を基盤とするソフトバンクとは、相性がいいと思いました。

――今回のアクセラレーションプログラムでは、今回、5Gをメインテーマの1つに据えています。その理由はどこにあるのでしょうか。

木村氏

5Gは今後、産業界全体にとって標準のインフラになると考えているからです。昨年はAIやエッジが大きなテーマになっており、今年に入ってからは徐々にVRをテーマにしたものが増えている状況です。その一方で5Gに関しては、具体的に何ができるのか明確にイメージできないという意見が多く、まだぼんやりとした情報収集の域を出ていません。まずはこのような状況を解決していく必要があります。

松本氏

ソフトバンク株式会社
法人プロダクト&事業戦略本部
デジタルオートメーション事業第2統括部 法人5G推進室
パートナー企画課
松本 一輝氏

私たちのところでも、5Gに何ができるのか分からない、という話をよく聞きます。Wi-Fiや4Gは身近な通信手段として定着しており、これらについてはイメージしやすいのですが、まだ身近になっていない5Gについては手探り状態のお客様が多いのかもしれません。ただし、中にはその有用性に気付き始めた企業も増えつつあります。2022年にかけて、具体的な課題解決のイメージをつかんだ企業が次々と、実証実験やプロトタイピングにチャレンジしていくことになるでしょう。

具体的な展示を行い
実証実験もサポート

――その挑戦を、アクセラレーションプログラムや5G X LAB OSAKAは、どのように支援していくのでしょうか。

木村氏

まずアクセラレーションプログラムでは、奈良先端科学技術大学院大学がメンターとして、参加企業の課題抽出や解決に向けた支援を行います。最近ではここに九州大学も参加しています。実証実験を行うにあたって技術的な課題が生じた場合には、ソフトバンクやデル・テクノロジーズの支援を受けることができます。

日野氏

5G X LAB OSAKAには5Gをはじめとする最新技術を展示する展示ルームがあり、そこで具体的なユースケースも展示しています。5Gを活用したソリューションのイメージはまだ、あまり目に見える形にはなっていませんが、ここではその具体的な形を見ることができるのです。

手嶋氏

5G時代のサービスはこうなる、といった展示も行われています。これを体験することは、アイデアを生み出すトリガーになると思います。

松本氏

検証ルームも用意しています。ここでは企業が自由にデバイスを持ち込んで、実証実験を行えます。もちろん5G も利用でき、それを専有した検証も可能です。さらにエッジサーバーや各種センサー、マルチクラウドでのAI環境なども用意しており、必要に応じてお貸し出ししています。さらに同じビル内には、ロボティクスやOT 分野の専門家が集まったi-RooBO Network Forum 様もいるため、擬似的な製造ラインのデータ可視化の環境を見ることも可能です。DXの第一歩を踏み出すには、最適な環境だと思います。

手嶋氏

大阪産業局ではこのほかにも、あらゆる業種・業態・ステージの企業を支援する、数多くのメニューを用意しています。例えば販路開拓やファイナンスに関しても、最適なパートナーとのマッチングを行っています。また大阪産業局は大阪府・市の団体ですが、プログラムによっては、ほかの地域の企業が支援を受けることも可能です。実際に実証実験支援プログラムでは東京やほかの地域からも、数多くの企業が来ています。

日野氏

ソフトバンクにはこの5G X LAB OSAKAだけではなく、東京にもオフィスやショールームがあり、そこを使って東京・大阪を5Gでつないだ実験を行うことも可能です。

人手不足への対応を
容易にする5G

――それでは実際に5GでDXを行うことで、どのようなことが実現できるのでしょうか。

松本氏

5Gには「高速・大容量」「超低遅延」「多数同時接続」という3つの特長がありますが、これによって遠隔地にも高品質な動画を送れるようになります。例えば製造業であれば、熟練工の方が各工場に出向くことなく、若手を指導するといったことが可能になります。

日野氏

工場で得られた映像をクラウドに送ってAIと組み合わせれば、人手でやっている検品や設備監視を自動化する、といったことも実現できます。これは人手不足の問題を解消できる、強力なソリューションになるはずです。人手不足に悩んでいるのは製造業だけではありません。物流業では荷物が増えている一方でトラックドライバーが不足しており、小売業でも人がなかなか定着しないという問題を抱えています。大容量データを5Gで様々なところで自由に使えるようになれば、業務の大幅な効率化によって、解決の糸口を見つけることも可能です。

手嶋氏

中堅・中小企業ではまだ少数ではありますが、人手不足に対応するため、海外に一部の製造を委託するという動きもあります。実際に大阪でも、海外に拠点を持つ製造企業は少なくありません。ここでも5Gへの期待は高くなっています。

日野氏

実際にそういった企業から、新型コロナウイルスで現地にいけなくなったので、5Gでなんとかできないか、といった話をいただいています。

松本氏

商社系の物流でも同じような話が来ています。中堅・中小企業の商社が海外から部品や材料を調達する際に、これまでは写真を撮って本社に送っていました。しかし写真では見たいところをピンポイントで見ることが難しく、映像を使いたいというニーズが高いのです。もちろん検品を兼ねたチェックなので、それなりの画質でないと意味がありません。5Gはこのような映像活用の可能性を、一気に拡大する可能性があります。

木村氏

実際に当社では中堅・中小企業のお客様に、5GやAIを活用したDXで何を行いたいのかをお聞きしているのですが、その内容を整理すると大きく3種類に分類できます。第1は売り上げを上げていくために営業をどう改革していくか。ここではAIを活用したデータ解析が主要なテーマになっています。第2は製造ラインの不良率を下げて歩留まり率を上げたいというもの。中堅・中小企業には製造業のお客様が多いので、このニーズはかなり高くなっています。実際に製造現場にカメラを設置しているケースは多いのですが、そのデータを活用して不良率改善までできている事例はまだ少ないという状況です。従来のデータ回線では十分な速度を確保できないため、工場からデータを外出ししてAIを活用することが困難だからです。そして第3が、新しいことへのチャレンジです。これは各社独自の発想にもとづいているので、会社によってテーマは異なります。

具体的なイメージをつかむことで
未来の開拓を

――そういったソリューションの具体例を見ることができれば、活用イメージも膨らみますね。

松本氏

そのための場が5G X LAB OSAKAです。またソフトバンクは、通信会社として幅広い業種のお客様とお付き合いがある一方で、グループ全体としてはロボットやドローンなど、様々な先端技術にかかわっています。基本的な技術の相談にワンストップで対応できます。

日野氏

私たちが目指しているのは、社会全体のDXを支援すること。そのために行政や様々な団体、さらにはデル・テクノロジーズ様とも手を組んで、オープン型のラボとして運営しています。より多くの企業にご参加いただき、共創の和を広げていければと思っています。

手嶋氏

このラボに来ていただければ、5Gを活用したソリューションの具体的なイメージもつかみやすくなるはずです。冷やかしでも構わないのでぜひ一度体験し、そこから発想を広げていただきたいと思います。

木村氏

2021年12月には、DXをテーマにしたコミュニティも立ち上げる予定です。オンラインで話し合いができる場なので、多くの企業に参加していただき、これまで以上に活発な情報交流を実現したいと考えています。5Gの可能性が拓かれるのは、まさにこれからです。今はまだ手探り状態ですが、このようなプログラムやラボの活用を通じて、一緒に未来を切り拓いていきましょう。

お問い合わせ

デル・テクノロジーズ株式会社

広域営業統括本部

E-mail:NTS_Desk@Dell.com