2016年11月のパリ協定を契機に、脱炭素化が全世界一丸となって取り組む長期目標となり、脱炭素社会を見据えた議論と取り組みが活発化している。日本でも、2050年のカーボンニュートラルの実現を目指した「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」が2020年12月に策定された。
越智崇充氏は、「企業における環境対策への取り組みは、これまで主にCSR的観点から行われていました。これが現在では、企業の成長戦略のど真ん中に位置しています。これから、脱炭素社会の実現に向けて、あらゆる政策・グリーン技術が総動員されます。間違いなく、新たなビジネス機会を創出することでしょう」と話す。
国際エネルギー機関(IEA)が発行した報告書「Net Zero by 2050」では、2015年時点で35ギガトンだったCO₂排出量を、2030年には約4割削減、残り20年でカーボンニュートラルを実現するシナリオを描いている。これらの目標は、エネルギー転換、産業、運輸、業務などの領域で、それぞれ個別に脱炭素化を進めても実現できない。
「脱炭素化の取り組みについては、製品やサービスのライフサイクルを通じた環境への影響を評価するLCA (ライフサイクルアセスメント)に基づき、自社の事業にとらわれない領域を含めた最適化を検討。特にエネルギーについては、再生可能エネルギー(再エネ)、水素、メタネーションなど多様なエネルギーを統合することを検討しつつ、デジタルトランスフォーメーション(DX)によるエネルギー需給の最適化と自動制御など、複合的な削減対策が欠かせません」(越智氏)