日経クロステック Special

2023年度からリリースを開始する次世代HDマップ 一般道をカバー、安全・快適に「止まる」も実現

先進運転支援システム(ADAS)や自動運転システム向けの「高精度3次元地図データ(HDマップ)」を提供するダイナミックマップ基盤(DMP)は、新たなステージへと躍進を遂げる。「この地図で、クルマは未来を走る。」をコンセプトに2023年度から、次世代HDマップのリリースを開始する。従来、高速道路、自動車専用道路向けに安全・快適に「走る」「曲がる」ためのHDマップを提供してきたが、次世代HDマップでは対象を全国の一般道路にも拡大するとともに、「走る」「曲がる」に加えて、安全・快適に「止まる」ためのデータを提供する。

進化したHDマップで、ADASと自動走行を高度化し普及

DMPは2016年に、官民一体のオールジャパン体制で設立された。HDマップの製造に必要な測量、計測機器、地図に関する高度な最先端技術を保有する企業が集結。自動車メーカー10社が仕様の策定に参画した。「北米では2017年、日本国内では2019年からHDマップが量産車に採用され、2021年9月末時点で北米では20万mile以上、日本国内では3万1910kmをカバーするHDマップの整備が完了しています」と、ダイナミックマップ基盤執行役員(技術担当)の麻生紀子氏は話す。

ダイナミックマップ基盤株式会社

執行役員(技術担当)

麻生 紀子

ダイナミックマップ基盤株式会社 執行役員(技術担当)麻生 紀子氏

具体的には、2017年に米国General Motors Companyの「Super Cruise」に世界で初めて採用され、日本国内では2019年以降、日産自動車の「ProPILOT 2.0」、本田技研工業の「Honda SENSING Elite」、トヨタ自動車の「Advanced Drive」に順次採用されている。

DMPのHDマップは、動的情報(おおむね分から秒単位で変化する情報)、準動的情報(おおむね時間単位で変化する情報)、準静的情報(おおむね日単位で変化する情報)、静的情報(おおむね月から年単位で変化する情報)の4階層に分類された情報からなる地図データベースの概念(いわゆるダイナミックマップ)のうち、静的情報に相当する。静的情報とは、主に車線数や区画線の情報、道路の情報、建物の位置情報などだ。

ダイナミックマップとHDマップ

「HDマップは人の目に見えるのではなく、クルマが機械として読む車両制御に使用する地図データです」と麻生氏。HDマップでは、自己位置推定(Localization)のために、一般的なデジタル地図(m級精度)をはるかに凌ぐ「cm級」の高精度を持つ。そのため、車線を逸脱しないほか、ほかの車両に接触する危険性が少なくなるという。

このHDマップを進化させ、ADASと自動走行の高度化と普及へ向けてリリースするのが、次世代HDマップである。

高速道路から一般道路にも拡大、高度なADASや自動運転をより身近に

次世代HDマップは、従来提供してきた高速道路・自動車専用道路に加えて、一般道路にも対応する。高速道路・自動車専用道路に加えて一般道路までを含んだHDマップの提供は国内初という。これにより、高速道路内に機能が限定されてきた高度なADASや自動運転を、普段の日常生活でも利用できることになる。例えば、休日に家族で遠出した帰り道で、これまでは高速道路を降りるまでしか有効でなかったハンズフリー機能が、これからは高速道路を降りた一般道路でも利用可能になる。あるいは、仕事などでいつも走っている幹線道路においてハンズフリー走行が可能となり、それがより身近な生活道路へと広がっていくという。

「既に、国内では約3万kmの高速道路・自動車専用道路のデータを提供していますが、今後は一般道路のデータを併せて提供します。具体的には、先進運転支援システムのさらなる進化に備えて、2023年度に約8万km、2024年度にはさらに5万kmを追加した約13万kmにまで拡大したいと考えています」と麻生氏は話す。

次世代HDマップでは、自動運転はもちろん、ADASにおいて必要なデータを厳選して保有している。車線の中央を示す中心線(車線リンク)のほか、路面にペイントされた情報(進行方向を示すペイントや、車線、停止線)、信号機や進入禁止・制限速度といった規制標識などのデータを、緯度・経度のみならず高さ情報を含む3次元データとして保有している。

一般道路で求められる「止まる」ためのデータを保有

次世代HDマップには、3つの大きな特長がある。最大の特長は、一般道路において求められる、安全・快適に「走る」「曲がる」ためのデータに加え、「止まる」ための信号機や停止線などのデータを搭載している点だ。

例えば、信号機に従った停車判断にADASの代表的な機能としてアダプティブクルーズコントロールというものがある。これは設定した速度を維持しつつ前走車に追従して走行する機能で、主に高速道路で便利に使われている。ところが、現在のアダプティブクルーズコントロールには信号機に従った停車機能は実装されていないため、信号が赤に変わった場合でも前方の車両に追従し、結果として交差点に進入してしまう。

「センサーだけで信号機の灯色を判断しようとすると、目前の交差点ではなく、その次の交差点の信号機や、歩行者用の信号機などを読み取ってしまうリスクがあります。次世代HDマップには、停止線とそれに関連する信号機を紐づけるデータが収録されているため、前方の停止線で止まる場合にどの信号機の灯色に従うべきなのかを判断でき、正確な停車判断が可能です」と麻生氏は強調する。

一般道路のユースケース 信号機に従った停車判断

HDマップにあらかじめ緊急停車が可能な位置情報を持たせておくことで、運転中にドライバーが突如体調を崩した場合でも自動でクルマを安全に停車させることも可能だ。停車可能なエリアを特定してあるだけなく、停車ゾーンの段差や幅なども高精度な3次元データとして保有していることで、車両を安全に制御して停車させることができる。

さらに、交通マナーに基づく停車判断も可能になるという。一般道路では、脇道から車線に進入しようとするクルマが多く、その際に譲り合うマナーが求められる。「脇道の有無などの道路構造を、遠方から車両センサーで認識することは困難ですが、HDマップを利用すれば脇道の位置や幅員などを事前に把握することができます。道を譲るのに適した停車位置もHDマップから判断できるため、適切な減速度で停車させることが可能になります」と麻生氏は胸を張る。

次世代HDマップの特長 一般道路対応の詳細

低コストの実現とデータ統一でグローバルにHDマップを提供

2つ目の特長は、コストパフォーマンスに優れている点だ。高級車にしか搭載されないデータでは社会的なインパクトも限定的になってしまう。そのためDMPでは、2019年に買収した米国子会社Ushr(アッシャー)の自動化技術を日本へ全面的に導入することで製造コストを低減するとともに、大幅な低価格化を実現する。その結果、自動車メーカー側での導入ハードル、車両開発コストが低下するとともに開発効率の向上によって、高級車だけでなく一般車にまで対応できると見ている。

「センサーや半導体といった従来のハード系の部品とは異なり、生産数量に応じたユニットあたりのコスト、いわゆる変動費がハード系ほどかからないというデータビジネスならではの特長を最大限に生かして、思い切ったデータ提供価格を考えています」と麻生氏は意気込む。

3つ目は、データを統一したグローバルフォーマットだ。現在、DMPとUshrとでは異なるフォーマットでデータを提供していた。フォーマットが国別に異なることで自動車メーカー側での車両開発期間に差が生じ、海外へのモデル投入にどうしても遅れが生じがちになる。次世代HDマップでは、データフォーマットを統一することで車両開発期間を極小化できる見通しだ。これによりエンドユーザーの手に届くスピードも最短化されることを狙っている。

次世代HDマップの特長 まとめ

交通事故を減らし、誰もが快適な自動化社会へ

次世代HDマップのコンセプト「この地図で、クルマは未来を走る。」の“未来”とは、遠い将来のことではなく、既に社会に導入され、数年内には一般化する未来だという。「近い未来では、次世代HDマップを搭載したクルマが走ることで、悲しい交通事故が減り、誰もが快適に移動できる自動化社会になってほしい。その強い思いで挑戦していきます」と麻生氏は力強く語る。

DMPはUshrとともにグローバル事業を強化し、北米にとどまらずより多くの国と地域への展開を図るという。DMPが思い描くモビリティの実現に向けて、未来地図は広がっていく。

お問い合わせ

ダイナミックマップ基盤株式会社

〒103-0022 東京都中央区日本橋室町4-1-21 近三ビルヂング6階

TEL:03-6459-3445

https://www.dynamic-maps.co.jp/