日経クロステック Special

今やプリンターも“経営的視点”で選択する時代に

機器選定の慣習を見直し、大幅な導入コスト削減を実現

Case Study 久留米大学病院

電子カルテベンダーが推奨する製品を採用することが慣習だったプリンター。診療現場に求められる一定水準を満たしていれば、病院情報システム調達の中で機種選定の議論はされなかったのが実態という。久留米大学病院はその慣習を見直し、経営的視点での全体最適を目指し、2施設一括でインクジェット中心のプリンター構成を採用。導入コストと運用負荷を含むランニングコストの大幅削減を実現した。

ポイント

  • 機種選定の慣習を見直し、2施設一括で約600台のビジネスインクジェットプリンターを導入。

  • 結果、導入コスト1,800万円の削減を実現。ブラックボックス化していた消耗品コストが明確に。

  • 現場の負荷削減に加えて情報システム室の運用保守負担が大幅に削減。

医療現場の慣習を見直し、部門最適化から全体最適化を目指す

 久留米大学病院は、立地する福岡県南部の久留米市を中心に佐賀県東部、大分県西部、熊本県北部を医療圏とし、地域医療・救命救急医療、特定機能病院としての高度な先進医療を提供している。診療科は23科、許可病床数は1018床を有し、医師約600人、看護師約1100人、事務等職員約570人が勤務する。また、同市内に一般的な急性期医療や回復期医療を提供する久留米大学医療センター(250床)があり、両院は機能分化によって医療連携体制を構築している。

 昨年の久留米大学病院の病院情報システム更新は、従来の電子カルテシステムを一新し、新たなコンセプトの基にベンダーも変更した。最大のテーマは、部門最適化された部門システムをミドルウェアでデータ連携する仕組みから、全体最適化を目指したシステムへ刷新するとともに、病院のBCM(事業継続マネジメント)を担保できるプラットフォームを目指すこと、さらに、医療センターと別々のシステムだったものを共通システムの共同利用によって、医療連携の強化、システム運用コストの削減に取り組んだ。この刷新を機に、両院でエプソンのインクジェットプリンターを中心としたプリンティング環境を構築したのである。

IT経営ステップにおける病院情報システムの位置付け

DXに向け部門最適化から全体最適化を目指した4ステップ

大規模病院での採用実績を認識したインクジェット方式

久留米大学病院 医療情報センター 久留米大学 准教授 七種 伸行 氏 2005年久留米大学医学部卒。

久留米大学病院 医療情報センター
久留米大学 准教授

七種 伸行

2005年久留米大学医学部卒

 久留米大学病院医療情報センターの七種伸行氏は、病院情報システムにおいてプリンターはパソコン端末などと同様、ベンダーが選定して納入するコモディティ製品という認識だったと話す。「従来、業務用ではレーザープリンターが前提であり、機能の差によって調達が成立するという考えは持っていなかった」(同氏)。

 その七種氏がエプソンのインクジェットプリンター導入を検討するきっかけとなったのは、2019年1月開催の大学病院情報マネジメント部門連絡会議でのエプソン共催セミナーで、同じく九州にある大学病院の事例報告だった。家庭用とは全く異なるビジネス用インクジェットプリンターというカテゴリーがあり、すでに採用している病院があることを知ったという七種氏。「ランニングコストが劇的に削減できること。診療現場でストレスとなる印刷待ちが感じられないファーストプリントの速さ、耐水性、日常のメンテナンスが容易で現場職員で対応可能な点などが印象的だった」(同氏)という。

 講演後にすぐさまエプソンのブースを訪れ詳細な説明を聞いたところ、ランニングコストだけでなく、導入コストもかなりの削減になる可能性があることを知る。新システムの調達範囲・導入費用の最終調整段階だったこともあり、即断した七種氏は電子カルテベンダーにエプソンのインクジェットプリンターを中心とした構成で再見積を依頼。「メンテナンスが現場の職員で対応できることは、システム刷新のコンセプトでもあるBCMに合致する」(同氏)とし、大学法人内の調整や契約交渉を経て導入決定に至ったと話す。

※印刷した用紙を水に濡らした環境は、エプソンが保証するものではありません。

インクジェットの印刷機構

インクジェットプリンターだからこそ病院様に提供できる価値

情報システム室の運用保守負担が大幅に削減

 実際に導入したプリンターは、A4インクジェットプリンター「PX-S380」をはじめとする約600台。A4対応は主に診察室など診療現場へ、A3対応はナースステーションなどに配置。医事課など大量・高速印刷ニーズが高い部門にはレーザー方式を導入した。

 インクジェットプリンターを実際に利用する現場の反応は、そもそもレーザープリンターから変わったことに気づいている職員は少ない。印刷物のクオリティについて、何ら違和感や不満がない表れだと評価する。現場サイドがメリットと感じるのは、インクパックの交換をはじめとするメンテナンスが、自身の手によってその場でできる点だ。交換手順などは電子カルテポータル画面にマニュアルを掲載しており、その手順に従い実施されている。従来はトナーの交換やトラブル処理はすべて情報システム室に依頼されていた。インクジェットプリンター導入後は、プリンターに関する問い合わせや依頼は大幅に削減された。

 情報システム室(病院) 課長補佐 山本聡氏は「以前はトナー交換、トラブルの電話が頻繁にあり、電話で対応できずに現場に足を運ぶことも多々あった。インクジェットプリンター導入から期間が短いこともあるが故障自体がほとんどない。さらに定期交換部品がレーザーに比べて少ないこともあり、電話で指示すれば現場対応できている」といい、プリンターにまつわる情報システム室の運用保守負担が大幅に削減された。

経営的視点で調達方法を議論すべき製品カテゴリー

 一方、ランニングコストに関する導入成果は以前の環境と詳細な比較ができないものの、ブラックボックス化していた消耗品コストが明確になり、毎月の請求実績が算出できるようになった点が大きな変化だと強調する。というのも、以前のプリンターなどの周辺機器は病院全体の一括調達でなく、小ロットで部分的にその都度調達されてきた。そのため同じ部署内でも端末毎に契約時期や保守内容、金額がばらばらで、プリンターの契約内容や消耗品コストは把握できていなかった。「今回の調達で毎月の消耗品コストが明確になり、交換時期を含めた予算立てがしやすくなった」(七種氏)。さらに、2施設の一括調達により導入コストは、当初のレーザープリンターによる見積りより約1800万円の削減を実現できたと話す。

 病院情報システムの更新においては、プリンターは機能差によって選定される製品分野とは認識されてこなかったと七種氏は指摘。どのような理由で選定し、それが病院の基幹システムにおいてどのような意味があるのか検討してこなかったのが実状という。「病院経営の観点で見れば、調達の一部分ではあるもののシステムコストの明確化とコストメリットの議論ができるようになり、情報システム部門が主体的に貢献できる余地が広がったと考えている」(同氏)。電子カルテベンダーが推奨する製品を議論なしで採用する慣習を、考え直すべき製品群だと強調した。

  • 久留米大学病院
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    所在地

    〒830-0011 福岡県久留米市旭町67番地

    病院長

    志波 直人 氏

    電話番号

    0942-35-3311

    許可病床数

    計1018床(一般 965、精神 53)
    ※2021年2月1日現在

    職員数

    医師605名、看護師1108名
    その他職員(事務、技術、技能等)566名
    ※2020年12月1日現在

お問い合わせ

エプソン販売株式会社

〒160-8801 東京都新宿区新宿四丁目1番6号 JR新宿ミライナタワー29階

TEL:03-5919-5211(代表)

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