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営業店システム「GeneXus」再構築

リアル顧客接点を支える最新基盤実現

高い信頼性が求められる金融機関のシステム更改に、ローコード開発ツールを選択する動きが出ている。採用したのは、りそな銀行などを傘下に持つりそなホールディングスだ。デジタルトランスフォーメーションに向けた取り組みの一環として、営業店システムをローコード開発ツール「GeneXus」で再構築。勘定系につながるクリティカルな基盤の更改に採用した背景や狙いを、同社およびソリューションパートナーのキーパーソンに聞いた。

2000年代初頭から、
業界に先駆けた
変革の取り組みを展開

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りそなホールディングス(以下、りそなHD)は銀行業で唯一、「デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)2020」に選定されるなど、積極的にデジタル変革を推進しています。その理由と、目指す銀行の姿を教えてください。
株式会社りそなホールディングス IT企画部長 株式会社りそな銀行 システム部長 薄井 孝尚氏
株式会社りそなホールディングス
IT企画部長
株式会社りそな銀行
システム部長
薄井 孝尚

薄井デジタル化の進展により、お客様のニーズや期待は大きく変化しています。当然、銀行に求める価値も変わってきています。旧来の銀行の在り方にとらわれず、私たち自身が変わらなければならない。これがDXを推進する一番の理由です。

片山この方向性のもと、2003年以降、店舗などのオペレーション改革を進めてきました。2020年度は2004年度比で事務量を7割、伝票量を9割削減。銀行では珍しい平日17時までの営業なども実現しました。

 さらに2018年2月にはスマホアプリ「りそなグループアプリ」をリリースしました。「スマホを銀行にする」をコンセプトとしており、シンプルな操作で様々な銀行取引を行えます。同時に、大切なお客様接点である店舗の改革も進め、既存店を「次世代型店舗」へ変えるリニューアルにも力を入れています。
りそな銀行の次世代型店舗 りそな銀行の次世代型店舗 ロケーションフリーな対応環境を実現することで、事務処理の場だった店舗をセールスの場に変えた。各種の支払いや手続きは独自開発のATMを使い、キャッシュレス/ペーパーレスで行える
株式会社りそなホールディングス 株式会社りそな銀行 プロセス改革部長 片山 光輝氏
株式会社りそなホールディングス
株式会社りそな銀行
プロセス改革部長
片山 光輝
薄井さらに、2020年からスタートした中期経営計画では重点課題にシステムの再構築を掲げ、「金融専用端末の脱却」「オープンプラットフォーム化」「レガシーシステムからオープンシステムへの構造変革」の3つを軸に、抜本改革に取り組んでいます。

 中でも金融専用端末の脱却は、お客様と行員の双方に大きなインパクトをもたらす取り組みです。伝票の読み取りや入力、各種の照会作業や振込、入出金、融資、外為など、非常に複雑で多様な銀行業務を支える営業店システムの変革を伴うからです。

 従来は銀行事務専用の金融端末で構築・運用してきた営業店システムを、オープンなWebアプリケーションへと刷新し、専用端末に依存しない業務を実現する。タブレットなどを用いた、より利便性の高いお客様サービスを提供することで、顧客体験価値(CX)を高めたいと考えています。

勘定系システムとの連携も含めて
ローコードで開発

NTTデータソフィア株式会社 取締役 副社長 白鳥 哲也氏
NTTデータソフィア株式会社
取締役 副社長
白鳥 哲也
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新営業店システムの開発に当たり、採用したのがジェネクサスのローコード開発ツール「GeneXus」です。主にNTTデータ、NTTデータソフィアの2社の提案と伺っていますが、このツールを採用した理由を教えてください。
白鳥お客様がオンプレミスで運用してきた旧システムは約10年ごとにリプレースが必要で、その都度、金融専用端末も入れ替えなければなりません。業務が大きく効率化されるわけではないのに、システムと端末のリプレースに、毎回百数十億円を超える費用が必要になる。りそなHD様は、まずはこの構造を何とかしたいと考えていました。


株式会社NTTデータ 第一金融事業本部 金融ITマネジメント事業部 アウトソーシング担当 部長 浜野 貴志氏
株式会社NTTデータ
第一金融事業本部
金融ITマネジメント事業部
アウトソーシング担当 部長
浜野 貴志
浜野アプリケーションを自動で生成できるGeneXusを活用すれば、開発プロセスの多くの部分を標準化/自動化できます。これにより開発生産性を高めるとともに、コストも大幅に抑制できると考えました。

片山加えて、スピードも重要でした。例えば、旧システムの単純リプレースには約16カ月間かかりますが、GeneXusを採用すれば、この期間の大幅な短縮が見込めます。様々な変革を推し進める我々にとって、スピード感を持って新たな仕組みを構築できることは、とても重要だったのです。

――
実際に開発を進める上で工夫した点はありますか。
白鳥ローコード開発ツールは「安く、速く」が最初のとっかかりになりますが、実際のプロジェクトを進める上では「お客様の要望を本当に実現できるのか」についても精査する必要があります。そこで、ソリューションベンダーのイノベーティブ・ソリューションズにも協力を要請しました。GeneXusを用いた大規模システムの開発経験が豊富で、ツールのことを熟知しているからです。


株式会社イノベーティブ・ソリューションズ 取締役 CTO 横井 利和氏
株式会社イノベーティブ・ソリューションズ
取締役 CTO
横井 利和
横井りそなHD様が目指すシステムを実現するには、フロントエンドのオープン系のWebアプリケーションと、バックエンドの勘定系システムなどを連携することが不可欠でした。そこで、当社内に構築した疑似環境で検証を重ね、ミッションクリティカルなシステムとの連携の仕組みも、GeneXusベースで問題なく構築できることを確認しました。

 その上で、NTTデータ、NTTデータソフィアと連携して開発標準を策定しました。GeneXusだけでは実現が難しい、オープン系技術や外部連携が必要な処理はできるだけ事前に部品化し、それらを組み合わせるだけで、複雑なプロセスも手間をかけずに開発できるようにしました。

片山営業店システムには、いくつものトランザクションが発生する複雑な処理も多く、それらをどう実現するのか、一つひとつ細かく確認してもらいました。ホストとの連携で何度もやりとりが必要な処理を、複雑化させずに実装するにはどうすればよいのか。何パターンも試行し、「こうすればできる」という結果を共有してもらうことで、我々も不安なく進めることができました。

単純リプレースの
半分以下の期間で、
新営業店システムを構築

――
GeneXusを活用することで、どのような効果が得られたのでしょうか。
白鳥開発期間は単純リプレースの半分以下の約7カ月で開発できました。開発コストは25%程度削減できています。

片山現在は営業店への展開途中ですが、導入した店舗から順次、金融専用端末に依存した業務を脱却できています。従来は専用端末の設置場所が決まっていたため、そこに行かなければ店舗業務を行えませんでした。今は自席のPCやタブレットでアプリケーションにアクセスできるので、店内のどこにいても、事務作業やお客様対応が可能です。現場の業務改革、お客様サービスの向上を加速する仕組みが実現できています。

 現在までに、専用端末で行っていた業務の7割をPCやタブレットで行えるようにし、約7000台あった専用端末は半分程度に減っています。今後も引き続き、入れ替えは進めていきます。高額な金融専用端末の台数が減れば、プロジェクトのトータルコストもさらに大きく削減できるでしょう。

――
単純リプレースよりも圧倒的に短い開発工期、少ないコストで、新たな仕組みを整えることができたわけですね。
薄井加えて、当社の都合に関係なく対応が必須であるシステムの更新サイクルから脱却できたことも大きいです。

 GeneXusは多様な言語、OS、ミドルウエアやDBMSに対応しており、それらがバージョンアップしても、追随して差分を吸収してくれます。そのため、一度構築したアプリケーション資産を、長期間使い続けることができます。つまり、システムの維持やメンテナンスも、より少ない費用と人員で、しかも市場の状況に瞬時に対応できる速度感を持って、対応できるようになるのです。私は、これこそがこれからの基幹系システムにも求められる必須の要件だと考えています。それにより生まれたリソースを重点分野に充てることで、新しい金融サービスの実現に向けた取り組みをこれまで以上に推進していきたいですね。

白鳥ローコード開発ツールの中には、システムの本番稼働後もランタイムで課金されるものがあります。その点、GeneXusはJavaのソースコードを生成するため、ランタイムに依存せず課金なしで使い続けられます。本番稼働後のコストを抑えられる点も、GeneXusのメリットといえるでしょう。

「リテールNo.1」を目指し、
変革の取り組みを継続する

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今回のプロジェクトの成功のポイントをどのように見ていますか。
浜野GeneXusで一度構築した部品は資産としてレポジトリに蓄積されます。また専用端末の画面定義体もツールを作ることで流用できました。これらを活用することで、一から開発する部分を減らし、開発の高速化と品質向上を両立できたことは大きなポイントだと考えています。

薄井当社としては、ツールの優位性はもちろん、NTTデータ、NTTデータソフィア、イノベーティブ・ソリューションズのサポートにも大変感謝しています。豊富な構築ノウハウに基づき、問題に先回りした体制を整えてくれたおかげで、いくつもの壁を乗り越えることができました。

――
新たな営業店システムをベースに、これからりそなグループはどのような取り組みを加速していくのでしょうか。
片山冒頭でもお話ししたように、りそなグループは以前から顧客体験価値の向上に向けた業務改革を推進してきました。現状維持をよしとせず、新しい銀行を目指して積極的に変わっていこうというカルチャーがある。こうした過去の取り組みの積み重ねを基に、さらに便利な仕組みを、引き続き今回の3社と共に考えていければと思います。

 りそなグループが目指すのは「リテールNo.1」です。りそなグループアプリでも店舗でも、どのチャネルでも等しく高品質なお客様サービスを提供することで、365日いつでもつながっていられる――。そんな関係性をお客様と築いていきたいですね。
お問い合わせ
ジェネクサス・ジャパン株式会社 URL:https://www.genexus.jp/