サイバーエージェントは2020年夏、圧倒的な性能の高さから「プチスパコン」(小さなスーパーコンピューター)とも言えるNVIDIAの最新鋭AIシステム「NVIDIA DGX A100」を導入した。同社が提供するAI解析を応用した広告関連プロダクトの研究・開発を強化することなどが大きな狙いだ。
「当社は、AIモデルを使って広告の効果予測値を算出し、予測値が高い広告を広告主に納品して配信する『極予測AI』など、AIを使った様々な効果予測プロダクトを提供しています。近年では、広告そのものに動画や静止画などのデータ量の大きな素材が盛り込まれるようになり、その効果をAIで予測するために、CPUよりも大量かつ高速にデータ処理できるGPUを使ったサーバーが求められるようになっていました」と、同社AI事業本部の李榮宰氏は「DGX A100」導入の経緯について語る。
AI事業本部では、主にパブリッククラウドが提供するGPUサーバーを使用していたが、かなりのランニングコストがかかることから、自社運用のサーバーを持つことで、少しでもコストを抑えたいと考えた。そして何より、「パブリッククラウドが提供するサーバーに比べて、圧倒的に高性能であることが導入の大きな決め手になりました」と李氏は説明する。
サイバーエージェントは、広告事業だけでなく、「ABEMA」をはじめとするメディア事業やゲーム事業など、様々な領域でAIを活用した新プロダクト、新サービスを次々と開発している。しかも、AI解析のために必要なデータ処理量はどの領域でも膨大に増え続けており、ビジネスの成長のためにはコストを抑えながら大量処理できる“自前のインフラ”をしっかり整えたいと考えている。「DGX A100」は、その理想にかなった選択だった。
しかし、導入に至るまでには乗り越えなければならない“壁”があった。中でも最大の障壁は、これまでGPUサーバーの導入経験がなく、どうすれば安定的な運用が実現できるのかという知見が蓄えられていないことだった。
「膨大なデータを高速・大量処理する『DGX A100』は、今まで扱ったことのあるCPUサーバーに比べてサイズが大きいだけでなく、電力消費も多く、高熱を発するのでデリケートな空調管理が求められます。未経験の課題があまりにも多かったので、頼れるパートナーに導入や運用を支援してもらう必要があると考えたのです」と同社AI事業本部の高橋大輔氏は振り返る。
そうしてサイバーエージェントがパートナーに選んだのは、NVIDIA製品の導入・運用支援で高い実績を持つHPCシステムズだった。