日経クロステック Special

膨大なデータを高速に処理する環境を構築 サイバーエージェントのAI活用を強く支えるITインフラ最前線

パフォーマンスを安定的に発揮できる環境を約束

 HPCシステムズは、社名にHPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)という用語を冠しているように、スーパーコンピューターのハードウエアからOS、ミドルウエア、ソフトウエアに至るまでの運用環境をトータルに提供している会社だ。その取引先は大学や官公庁、大手企業など様々だが、あらゆる産業領域でAIを活用したプロダクトやサービスが展開されるようになったことで、顧客の幅はますます広がっている。

 同社はNVIDIA製品の販売パートナーであり、ユーザー企業により良い運用環境を提供し、運用負荷を低減させることにも力を注いでいる。その安心感から、サイバーエージェントはHPCシステムズを選んだ。

佐々木 氏
HPCシステムズ株式会社
HPC事業部 営業グループ
Deep Learningチーム
アシスタントマネージャー
佐々木 伸

 「当社のような販売パートナーがNVIDIA製品の導入を支援する際には、安全に運用できる環境が整っていることを証明する『サイトサーベイ』(設置環境報告書)をNVIDIAに提出することが求められます。サーバーが問題なく設置できるスペースを確保しているかどうか、必要な電源は確保されているかといったことをしっかり確認し、最大のパフォーマンスが安定的に発揮できる環境をお約束するためです」と語るのは、サイバーエージェントの「DGX A100」導入支援を担当したHPCシステムズの佐々木伸氏である。

 理想の環境を整えるため、HPCシステムズが「DGX A100」の設置場所としてサイバーエージェントに推薦したのは、ソフトバンクグループの法人向けITインフラ企業であるIDCフロンティアが運営する都内のデータセンターであった。

 サイバーエージェントは、もともと別のサーバーをIDCフロンティアのデータセンターに設置しており、その運用サービスの確かさについては高く評価していた。それに加えてIDCフロンティアは、「DGX A100」をはじめとするDGXシリーズの設置基準を満たしたデータセンターであることを認める「DGX-Ready Data Center」認定をNVIDIAから受けていることも、推薦の大きな理由となったようだ。

 実際に設置を担当したIDCフロンティア データセンター本部 運用部の許斐萌子氏は、「従来のDGXシリーズに比べてサイズが大きく、既存のラックでは収まり切らないので特注の拡張パーツを取り付けることで設置を可能としました。電力や空調が足りるかどうかも入念に検討しています」と語る。こうしたきめ細かな現場対応にも支えられて、サイバーエージェントは「DGX A100」をスムーズに稼働させることができた。

超大型サーバーでも受け入れ可能なデータセンター

川本 氏
撮影場所:WeWork
株式会社IDCフロンティア
データセンター本部 運用部
川本 拓実

 今のところ、サイバーエージェントが利用する「DGX A100」は1台だが、今後さらに台数を増やしながらAI事業の拡大を図っていく方針だ。

 サイバーエージェントの高橋氏は、「今後は医療や小売など、より幅広い分野でAI活用を加速していきたいと思っています。そのためには『DGX A100』を2台、3台と増やしていく必要がありますが、受け入れ可能なデータセンターはそれほど多くありません。その点、IDCフロンティアさんは『DGX-Ready Data Center』認定を受けているという安心感がありますし、『DGX A100』のような超大型のサーバーでも受け入れ可能なデータセンターを次々と開設されているので、頼もしさを感じています」と語る。

 IDCフロンティアは、ソフトバンクグループを含めて全国で16拠点のデータセンターを運用している。2020年12月には最大受電容量50MW、延べ床面積4.5万㎡超とハイパースケーラーの需要にも対応する「東京府中データセンター」を新設。同社データセンター本部 運用部の川本拓実氏は、「東京府中データセンターは、標準で1ラックあたり7kVAの高負荷に対応しており、今後は『DGX A100』のような大型かつ高負荷なサーバーでも複数台搭載できるよう、最大20kVAにも対応したコロケーションエリアを提供していく予定です。また、お客様の仕様で部屋ごとカスタマイズできる『データホール』も用意しています」と説明する。サイバーエージェントのように膨大なデータを扱う必要性が高まっている企業にとっては、願ってもない環境と言えそうだ。

齋藤 氏
HPCシステムズ株式会社
取締役
HPC事業部 営業統括
齋藤 正保

 一方で、AIの活用が進むにつれて、そのシステムを構成するハードウエア、OS、ミドルウエア、ソフトウエアなどをいかに最適に組み合わせるかということが重要な課題となっている。HPCシステムズの取締役 HPC事業部営業統括の齋藤正保氏は、「そうしたAIシステムインテグレーションの市場は昨今急速に拡大しており、2030年度には現在の約2倍の2兆1200億円規模まで成長するという予測もあります。当社は、より安全なデータセンターをお客様に提案するだけでなく、ハードウエアからソフトウエアまでをカバーできる会社として最適なAIシステムの運用環境を支援していきます」と語った。

 こうしたHPCシステムズとIDCフロンティアの取り組みについて、サイバーエージェントの高橋氏は、「AIを活用しながらさらなる成長を目指す当社にとって、安全かつ確実に運用できる基盤が整うのはありがたいことです。これからも両社の力強い支援を頼りにしています」と期待を込めて語った。

 頼もしいITインフラを基に、AIを活用してどのような新プロダクトを生み出していくのか、サイバーエージェントの今後の取り組みにも注目だ。