オープン化と仮想化で進化する5G NECが考えるネットワークとデータの民主化

日本電気株式会社 代表取締役 執行役員社長 兼 CEO 森田 隆之氏 × インテル株式会社 代表取締役社長 鈴木 国正氏

2021年4月、NEC(日本電気株式会社)の新社長に森田隆之氏が就任した。AIや生体認証、5Gなどのテクノロジーを中核に位置付け、DX(デジタルトランスフォーメーション)のリーディングカンパニーとして世界に挑む。本稿では、森田氏とインテル 代表取締役社長 鈴木国正氏が対談。ニューノーマル、そして5G、その先の時代を支える技術で求められるDXのあり方やデータ活用の重要性などについて語ってもらった。

コロナ禍以前からリモートワークの取り組みを進めていたNEC

日本電気株式会社 代表取締役 執行役員社長 兼 CEO 森田 隆之氏

インテル 鈴木社長(以下、鈴木):昨年からのコロナ禍で社会の雰囲気も大きく変わっています。NEC様はこのコロナ禍にどう対応されてきたのでしょうか。

NEC 森田社長(以下、森田):社員の働き方とビジネスのあり方、この2つの面から対応しています。1つ目の社員の働き方に関しては、コロナ禍以前、2017年からリモートワークに取り組んでいました。当時は、2020年夏に東京2020オリンピック・パラリンピックが開催される予定で、弊社ではその期間、出社を抑えてリモートワークに切り替えることを想定していたため、2019年には4万人規模の大規模なリモートワークの実証実験を1カ月間にわたり行いました。この結果、オンライン会議や大量のデータを扱う際のネットワーク容量不足、セキュリティの担保、データの分類と保存場所の明確化など、実証を通じて課題を見つけ、解決してきました。その後、コロナ禍が発生したので、リモートワークへの移行はスムーズでした。ピーク時では6万人、全社員の約80%がリモートワークになり、現在も多くの社員が継続しています。

鈴木:一連の経験は、リモートワークを検討している企業に向けたソリューションビジネスに結びつけることができそうですね。

森田:それがまさに、2つ目の対応である「ビジネスのあり方」につながります。新しい働き方をDXで実現するデジタルオフィスのプロジェクトを発足して、我々のノウハウを生かしニューノーマルに対応した商材をメニュー化しています。シンプルなご提案では、パソコンの更新からZoomの導入、ネットワーク環境の強化などがありますが、ハードウェアやテクノロジーだけでない業務プロセスの見直しの部分も含め試験導入から対応します。また、出社する社員や会社を訪れるお客様の感染リスク低減に向けて、リモートでの開発環境の整備やタッチレス化、ソーシャルディスタンスの確保による三密を回避した環境をデジタルの活用によって実現しました。

鈴木:インテルは、ニューノーマルに必要なテクノロジーを開発するという目標のもと、パートナーと一緒に協業を進めています。NEC様とも、人が密集する場所での水際対策と感染リスク低減に貢献する「感染症対策ソリューション」でご一緒させていただきました。「感染症対策ソリューション」では、NEC様の強みである生体認証・映像分析技術とサーマルカメラなどが組み合わされていますが、オフィスだけでなく、大規模イベントやスタジアムなどでの活用も見据え、プロスポーツの分野で技術実証されているそうですね。

森田:はい。今回のコロナ禍で、顔認証や映像分析技術などを使えば、安全・安心に配慮したイベントを効率的に運営できることがわかったので、楽天ヴィッセル神戸様、横浜DeNAベイスターズ様にご提案しました。個人を特定しない形での観戦時における観客のマスク未着用の検知やスタジアム内の混雑度モニタリング、事前に顔情報を登録したメディア関係者に向けた受付の無人化と体表温度の非接触測定といった、デジタル技術をご活用いただきました。「非常に効果的だった」という評価をいただいています。また、ハワイの主要5空港では我々の顔認証システム、体表温度の検知システムを導入していただいています。

5Gのビジネスチャンスは「オープン化と仮想化」

鈴木:2020年は、NTT様や楽天モバイル様との提携が発表されました。特に、5Gネットワークへの対応はあらゆる分野において重要なポイントになると思います。今後の展望をお聞かせいただけますか。

森田:DXを大きく広げるものが、5G、そしてその先を支える技術だと考えています。4Gによってスマホは普及しましたが、突き詰めると電話と端末の進化です。しかし、5Gは世の中そのものがデジタル化の対象になる。流行りの言葉でいえば、デジタルツインの活用です。

5Gは世の中に大きな変化をもたらします。競争環境、市場環境に多大な影響を与え、新しいビジネス機会が生まれるでしょう。そのときにキーワードとなるのが、「オープン化と仮想化」です。4Gネットワークのアーキテクチャーは垂直統合の世界でしたが、5Gネットワークではオープン化の動きが本格化しています。NECのポジションはユニークで、RAN(無線アクセスネットワーク)やトランスポート、コアネットワークだけでなく、 BSS(ビジネス支援システム)・OSS(運用支援システム)といったITシステムまでネットワークを構成する全ての要素を提供できます。全てを網羅できる企業は世界中でも数少ないのですが、NECはその中の1社。NTT様や楽天モバイル様との提携も進めています。

楽天モバイル様とは、完全仮想化クラウドネイティブネットワークの構築で提携しています。これはゼロからインフラを作り上げるいわゆるグリーンフィールドでのネットワーク構築を目指すお客様に適しています。

NTT様とは、基地局装置のマルチベンダー調達を可能にする国際仕様のOpen RANの普及促進と対応製品の開発、IOWN(Innovative Optical and Wireless Network:アイオン)構想(※)の実現で提携しました。IOWN構想とは、未来を見据えた次世代コミュニケーション基盤の構想と理解しています。この構想が進めば、プロセッサーチップの性能は100倍から1000倍になるはずです。そのときにボトルネックとなるのは、熱と電力消費量。それを解決するためには、光電融合技術をベースにしたプロセッサーチップの技術、そしてそれを使ったシステムが必要です。NTT様との提携は中長期視点の協業。インテル様にはIOWN Global Forumの設立社の1社としてのリーダーシップを期待しています。

鈴木:もちろんです。インテルは、特定のメーカーやユーザーに偏ることなく、中立性を保ちながら、いろいろな協業関係の構築を支援できることが何よりの強みと自負していますが、NEC様が考える協業のあり方はどのようなものでしょうか。

森田:コンピュータの世界でもオープン化を通じてソフトウェアが重要になり、ソフトウェアで解決できることはソフトウェアで行うようになりました。それにより、多様性と柔軟性が生まれました。コンピュータの次はネットワークのオープン化です。今後の産業や安全保障を考えると、セキュアなネットワークの重要性は一層増しています。オープンな世界を推し進めることにより共創環境を創り出し、多様性や技術的革新を呼び込む必然性があるのではないでしょうか。その中において、我々はグローバル市場における主力プレイヤーの1社になりたい。従来の垂直統合型からシフトし、オープン化と共創環境の構築を進める先鞭をつけていくと決意しています。

※IOWN構想:2030年頃の実用化に向けて推進している次世代コミュニケーション基盤の構想。光電融合技術で、高速大容量通信ならびに膨大な計算リソース等を提供可能な、端末を含むネットワーク・情報処理基盤を目指している。

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