日経クロステック Special

バーチャルテストで開発効率の向上に貢献

ユーザーから高い評価を得る理由とは?

世界の180以上の企業で利用されている自動車用シミュレーションツール大手のドイツIPG Automotiveが日本市場で攻勢をかける。国内での人員を拡大しているほか、プロダクトマーケティング部門を新設し、日本のユーザーの要求に的確にこたえられる体制を整えつつある。2021年1月、IPG Automotive日本支社の社長に就任した清水圭介氏に、IPG Automotiveのツールの特徴や導入のメリットについて語ってもらった。

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IPG Automotiveはどんな会社ですか。

当社は1984年にドイツのカールスルーエ工科大学からのスピンオフ企業として設立されました。ビークル・ダイナミクスのシミュレーション分野で35年以上、ADAS/AD(先進運転支援システム/自動運転)分野のドライビング・シミュレーションの分野でも15年以上の経験がある企業です。日本支社は2014年に、最初の海外支社として設立され、今年8年目を迎えました。

IPG Automotive 株式会社代表取締役社長 清水圭介氏

IPG Automotive 株式会社代表取締役社長

清水圭介

2021年1月より現職。これまでアメリカ系計測器メーカ、ドイツ系MBDツールベンダ、国内エンジニアリング会社のMBD事業部に在籍。20年以上に渡り、計測・制御・シミュレーションの業界において、ビジネスディベロップメントや事業運営に携わる。

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どんな分野のソリューションを手掛けているのですか。

当社のコアになる製品は車両の走行シミュレーションを実行するソフトウエアです。このほか、リアルタイムで試験を実行するハードウエアやシステム、エンジニアリングサービスを提供しています。

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現在、自動車業界が直面している課題をどう認識していますか。

パワートレインの電動化、ADAS/ADの進化、そしてコネクテッド化が進展し、クルマの開発はますます高度化・複雑化しています。一方で、テストコースで実際に走行させる試作車両は開発コスト削減の観点から、台数を減らす方向にあります。この結果、車両開発期間のうち、実際の試作車両が利用できる期間は4割に過ぎません。また、車両に搭載される新しいシステムを開発するエンジニアの実に9割以上は、自分が開発したシステムを試作車両で評価する機会がありません。当社では、仮想の車両を使ったバーチャル・テスト・ドライビングができる開発環境を提供することで、車両開発の最終段階だけでなく、初期段階から、実装するソフトウエアやコンポーネントを車両に搭載した状態でのシミュレーションを可能にします。当社のソリューションを活用していただくことで、開発の効率化や開発期間の短縮に貢献したいと考えています。

競合製品にはない2つの大きな特徴

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確かに、試作車両がないうちから、自分の開発しているソフトウエアやコンポーネントを車両に搭載した状態でバーチャルテストをできるのは魅力的ですね。

他社にもバーチャルテストができるソリューションはありますが、競合製品に比べると当社製品には2つの大きな特徴があります。

1つは必要な機能がすべてワンパッケージになっていることです。当社のバーチャル・テスト・ドライビング用シミュレーション・ソフトウエア製品には、自動車用の「CarMaker」、トラック用の「TruckMaker」、そして二輪車用の「MotorcycleMaker」の3種類があります。いずれもバーチャル・テスト・ドライビングを実行するソフトウエアというだけでなく、テストしたいソフトウエアやハードウエアを統合する機能、テストの様子を可視化する機能、テストをHPC(High Performance Computing)やクラウドで実行するための機能、そしてテスト実行の自動化や結果を評価する機能までがパッケージ化されています。

他社では可視化の機能や自動テストの実行機能が別製品になっていて、すべてそろえると当社の製品より割高になる場合もあります。1つのツールに様々な機能が統合されているので一貫性があり、非常に分かりやすく使いやすいという評価もお客様からいただいています。

バーチャル・テスト・ドライビングのオープンな統合およびテストプラットフォーム

バーチャル・テスト・ドライビングのオープンな統合およびテストプラットフォーム
バーチャル車両により、開発の初期段階からモデルやシステムを車両全体で評価可能。ワンパッケージでオープン性が高く、CarMaker1つでバーチャル・テスト・ドライビングが完結。
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もう1つの特徴についても教えて下さい。

様々な外部のツールと連携しやすい、オープンな設計です。例えば、バーチャル・テスト・ドライビングを実行しようとすれば、車両だけでなく、道路、周囲のクルマや歩行者といった交通環境、そしてドライバーの挙動という4つの要素をシミュレーションする必要が出てきます。また車両だけを取っても、自動運転用センサー、自動運転ソフトウエア、あるいはEV用パワートレインなど車両を構成する様々なソフトウエアやコンポーネントのシミュレーションが必要になります。

道路のシミュレーションであれば3次元データ化された道路データが必要になりますし、周囲の車両や歩行者をシミュレーションするためには、車両や歩行者の動きを記述したシナリオの作成が要求されます。

これらのソフトウエアやハードウエアは、当社以外のソリューションで作成される場合も多いのですが、CarMakerは他社のソリューションで作成された様々なモデルを取り込み、統合することが可能です。FMI(Functional Mockup Interface)のような業界標準となっているツール間連携のためのインターフェースをサポートしているのはもちろんですが、加えて当社はCarMakerのAPIを公開しており、外部の企業が自社のツールとCarMakerを容易に連携できるよう配慮しています。

バーチャル車両開発

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エンジニアリングサービスも強化しているようですね。

おかげさまで、テクニカルサポートには高い評価をいただいています。外資系企業の場合、お問い合わせをいただいても、本国に確認するため時間がかかるイメージをお持ちの方も多いと思います。当社では、そのようなことがないよう、可能な限り日本国内で対応できるようにスタッフが努力を重ねています。テクニカルサポートの強化はもちろん、日本支社におけるエンジニアリングサービスの能力向上のため、人員の採用と教育に力を入れておりますので、是非ともご期待下さい。

IPG Automotive 株式会社代表取締役社長 清水圭介氏