全社を挙げたDXの共通プラットフォーム 「使える」AIでサステイナブルな社会の実現へ

数値シミュレーションを駆使した“動く仕様書”とも言われるモデルベースデザイン(MBD)への関心が高まっている。
モデルベース開発と言った方が身近だろうか。 自動車などメーカーの開発現場のエンジニアの間ではよく知られた開発手法だ。 実は、商品の需要予測や、オフィスビルのエネルギー効率最適化など、その用途を広げていることをご存じだろうか。 まさに全社を挙げたDX(デジタルトランスフォーメーション)の共通プラットフォームとも言える。 モデルベースデザインのソフトウエアを手がけるMathWorks(マスワークス) Japan インダストリーマーケティング部長の阿部悟氏に聞いた。

MathWorks Japan
インダストリーマーケティング部
部長
阿部 悟

杉山自動車エンジンの設計現場だけでなく、食品ロスの削減やエネルギー効率の向上など、モデルベースデザインの基本となるソフトウエアは、実は様々な用途に活用できるとのことですが、まずこのモデルベースデザインをご説明いただけますか。

阿部氏モデルベースデザインで使用するモデルとは振る舞いを図式で抽象化したもので“動く仕様書”と言われます。従来の開発ではまず、アルゴリズム設計と制御設計をしたうえで、手でソフトウエアコードを作成して、コード検証、単体検証、実機検証をするのが一般的でした。

モデルベースデザインは、まず数値シミュレーションを行うモデルがあり、いろいろなパラメーターを変えるとその動きがわかります。必要に応じてモデルを変えるので、開発の初期段階で効率的に最終成果物に近づけることができます。

図1 モデルベースデザインはモノの制御や組み込みだけでなく、予測モデルも可能

モデルベースデザインで、開発期間7割削減

日経BP 総合研究所
主席研究員
杉山 俊幸

杉山開発工程がずいぶん効率化できそうですね。

阿部氏実機検証まで1サイクル回して、その結果を基に設計の仕様を変更するのではなく、モデルを中心にとても小さなサイクルを回し続けて、最終のアウトプットを制御するので、手戻りが少ないのです。開発期間が約3割まで短縮できた事例もあります。

杉山モデルを介することで、社内のいろいろな部門の人たちと同時並行で開発ができそうです。

阿部氏そうです。例えば圧縮機の世界大手でスウェーデンに本社を置くアトラスコプコの場合、モデルベースデザインを実現するMATLAB(マトラボ)とSimulink(シミュリンク)というMathWorksの主力商品を、全社のプラットフォームに使うことで、効率的な運用ができていると聞きます。

図2 MathWorksは、プログラミング環境「MATLAB(マトラボ)」とグラフィカル環境「Simulink(シミュリンク)」の2つの製品をコアに、100以上のアドオン製品を提供している。クラウドやエッジ上のシステムとの統合が可能だ

導入当初、アトラスコプコの経営トップが、MATLABとSimulinkをクラウドベースで導入して、世界の様々な部門で同時に操作できるよう指示したことが奏功しました。

設計部、制御開発部、品質保証部など全社で利用

杉山どんな部門が使ったのでしょう。

阿部氏設計部、制御開発部、品質保証部、営業部、製造部、サービス部など全社にまたがる利用です。製品に関わる部門の共通言語と言えるでしょう。

製品の開発段階では「物理モデル」と呼ぶものを使って開発をします。それが世界の例えばビール工場などのコンプレッサーとして実稼働をすると、そこで得られたフィールドデータは「統計データ」として同社へ戻ってきます。

これと、物理データとして想定した値との差異を解析して、再び開発段階へ生かす、というループが出来上がっています。品質保証部で得たデータを、設計部が見て、制御開発部が修正していくようなイメージです。

図3 アトラスコプコはデジタルツインにより、製品の品質向上と予防保全に役立てている

杉山どのインプットをいじったら、どこのアウトプットが変化するのかを、全社の関係者が把握できるのですね。

阿部氏そうです。MATLABは「ホワイトボックス」化を標榜した製品なのです。

スーパーの需要予測にも活用、食品ロス削減へ

杉山クラウド上のデータを全社で活用するのですね。

阿部氏その通りです。MATLABを使って、食品ロスを削減することもできるのです。

杉山どんな事例でしょうか。

阿部氏英スーパー最大手のテスコは、MATLABでアルゴリズムを開発し、商品の売れ行き予測に役立てています。過去5年間の天候データと販売データをかけ合わせて予測モデルを構築。さらに当日の売れ行きを見て、1日に1回、店頭の販売価格まで変えてしまうのです。

杉山ダイナミックプライシングと呼ばれるものですね。

阿部氏はい。MATLABを使ったこれら施策で年間5000万ポンド(約75億円)の在庫処分コストの削減といった効果を導いています。

取引先にもデータを開示

杉山サプライチェーン全体ででしょうか。

阿部氏テスコの優れた点は、取引先など他社にも需要予測データを開放したことですね。持続的社会を構築するため、会社という枠組みにとらわれない取り組みです。だから、次にどんな注文がテスコから入るか、予測ができるのです。

杉山自動車のエンジン開発などに使われるというイメージだったMATLABで、需要予測までできるのですか。「何でもできるは何にもできない」と言われたりしませんか。

阿部氏MATLABというベースは共通ですが、そこに付加する「ツールボックス」という各種用途向けに細分化されたアドオン製品があるので、それを併せて使っていただいております。だから、多くの分野に対応できるのです。

またパソコンで作ったアルゴリズムを、データウエアハウス、メインフレームにもそのまま実装できる点も特長ですね。

エネルギー利用の効率化にも

杉山エネルギーの効率利用にも活用できるのですか。

阿部氏いま、世界の多くの企業に求められるのがサステナビリティへの対応、貢献ではないでしょうか。MathWorksはMATLABとSimulinkで、これらに寄与します。

例えばオーストラリアのエネルギー管理会社に、ビルディングIQという企業があります。オフィスビルのエネルギーの効率利用などを提案する際に、MATLABが使われています。

化石燃料や太陽光パネルなどエネルギーごとの温暖化ガス(GHG)排出量や、調達コストなど複数のパラメーターの中で、ビルマネジメントとしての最適解をMATLABで導き出しています。エネルギー消費量を10~20%削減した事例もあると聞きます。

図4 オフィスビル、病院、大規模商業ビルにおける電力計、温度計、空調の圧力センサーなど、様々なソースからのデータと、天候データやエネルギーコストなどを処理し、リアルタイムでエネルギー効率を継続的に最適化

DX実現へ、PoCから運用まで支援

杉山顧客企業がMATLABやSimulinkを使う際のサポートや教育体制はどうなっていますか。

阿部氏MathWorksの製品を活用できるように、顧客企業においてPoC(概念実証)から始まって、自分たちでモデルが作れるようにしていく技術コンサルティングをしています。モデルベースデザインの知見がなくても、目標や課題を聞いて、それに応じて、ツールボックスなどを選んで使えるように支援しています。

MathWorks Japanは「『研究開発から量産まで』 ものづくりへの効果的なAI導入アプローチとは」を テーマに、出展いたします。

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