IoTから取り込まれる膨大なデータの分析・活用、モビリティサービスなどアウトカー(クルマの外)領域へのビジネス/サービスの広がり、自動運転や電動化などの技術変革に伴う業界構造の大変革、シェアリング産業の勃興など――「CASE (Connected、Autonomous、Shared、Electric)」の進展は、SCM(サプライチェーンマネジメント)の在り方にも影響を及ぼし、自動車や自動車関連業界におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進は待ったなしの状況だ。CASEの技術を応用し進化する建設機械や農業機械も同様の課題を抱えている。建機や農機においては、特にアフターマーケットの重要性がこれまで以上に高まっているが、補修部品を含め管理すべき部品点数が多く、デジタル化による効率化や顧客満足、収益性の向上は急務となっている。SCM分野をリードするBlue Yonderは、IoTセンサーデータの分析による故障予測、AI・機械学習、アルゴリズムを活用した需要予測や在庫適正化、サプライチェーン全体の可視化などSCMのDXを支えるプラットフォームを、クラウドサービス Azure 上に構築。在庫やコストを最小化しつつ、顧客サービスや企業利益の最大化を図る仕組みについて、導入事例を交えながらSCMのデジタル化やDX推進の重要性を考察する。

稼働時間最大化のため
アフターパーツのタイムリーな供給が課題に

Blue Yonderジャパン株式会社
執行役員 ソリューションコンサルティング
シニア・ディレクター
白鳥 直樹 氏

普通自動車も特殊自動車も、動くことで価値を創出する。時代がどんなに変化しても、変わることのない自動車のアイデンティティだ。製造業のサービス化が進む中、自動車業界においても、「機器・設備自体の販売から稼働時間やサービスの提供へ」とビジネスモデルもシフトしつつある。特に建機や農機を含む特殊自動車は、長期にわたるライフサイクルの中で、最大限に稼働することで利益を生み出す。故障して作業が止まることがないように、品質の追求とともにアフターパーツのタイムリーな供給は、収益性や顧客の満足度、信頼に直結する重要なテーマだ。いかに「適切なタイミングで適切な時期に適切な場所に」、必要とするパーツを提供し、稼働時間を最大化できるか。アフターパーツの課題について、Blue Yonderジャパン 執行役員 ソリューションコンサルティング シニア・ディレクター 白鳥直樹氏は話す。

「CASEの技術を応用し、特殊自動車も無人建機や無人農機へと進化を遂げようとしています。これまでも建機や農機のIT化により効率性や生産性を高めるために、各種IoTセンサーが特殊自動車に実装され、稼働状況のデータを収集し活用する取り組みが行われてきました。長い製品ライフサイクル、新製品の投入、技術革新の加速などによって、管理すべき部品点数が増加するのに伴い、メーカーにおいてアフターパーツの安定的かつタイムリーな供給が重要な課題となっています。さらに、パンデミックや自然災害など不確実性が増す中で、安定供給の問題は複雑化しています。この難題を解決し競争力を高めるために、デジタル技術によるSCMのDXが必要なのです」

SCMのDXを支える「Luminateプラットフォーム」を
SaaSベースで提供する理由

安定供給と在庫適正化に向けてSCMのDXにどう取り組むべきか、悩んでいる企業も多いのではないだろうか。ガートナー社のサプライチェーン関連マジック・クアドラントの全3分野において、リーダーに選出されたBlue Yonderが示した方向性、それがクラウドの活用だ。同社は計画から物流、流通、可視化、コラボレーションまで一連のプロセスをエンドツーエンドでカバーする「Luminateプラットフォーム」をSaaSで提供する。その理由について白鳥氏は説明する。

「膨大なデータをリアルタイムで扱うSCMのDXは、クラウドだからこそ実現できます。当社では、お客様のオンプレミス環境で稼働している当社システムをクラウドに移行する『Journey to Cloud』を進めています。お客様は当社のSaaSベースのサプライチェーンソリューションを利用することで、優れたコストパフォーマンス、柔軟な拡張性、運用管理の負荷軽減に加え、最新機能をサービスとしていち早く利用することが可能です。またテストはもとより、パイロットプロジェクトも Azure 上で迅速に環境を構築し開始することができます」

Blue YonderがSaaS事業の根幹を担うクラウドに、Azure を採用したポイントについて白鳥氏は言及する。「お客様の事業を支えるSCMを担うクラウドとなるため、セキュリティや信頼性を重視しました。Azure はビジネス領域で豊富な実績があり、当社のソリューション基盤として利用する中で厚い信頼を寄せています。また Azure の機能やサービスは最先端を走っており、最新技術をいち早く利用できる点を高く評価しています。今後Blue Yonderの全製品ポートフォリオは Azure に対応する予定です。さらに当社とマイクロソフト、パートナーが共同でSCMのDXを推進する取り組みも行っています」(白鳥氏)。

機械学習で様々な条件下での故障を予測
在庫最適化の精度を向上するアルゴリズム

SCMのDXが求められる背景には、グローバル化とデジタル化の進展がある。農機や建機などのメーカーでは、事業展開、サプライチェーン共にグローバル化が進んでいる。「需要の急な増大や、拠点到着予定の遅延など、計画をオペレーションに落と込んだ後に発生する予実をいかにタイムリーに検知し、アクションに移していくか。グローバル化が進む中で、サプライチェーン全体を常に把握することは、人手を介した情報収集では不可能です。IoTやAIなどのデジタル技術を活用することで、サプライチェーンの可視化を実現できます」(白鳥氏)。

不確実な時代において、計画と実績のブレや突発事象によって発生する混乱にいかに対処するかは、ビジネスに大きな影響を及ぼす。Luminateプラットフォームの必須コンポーネント「Luminate Control Tower(以下、LCT)」はサプライチェーン全体をリアルタイムに可視化。発生しうるトラブルを予測・検知し、未然に防ぐ解決策を提示する。

サプライチェーンのコントロールタワー(司令塔)となるLCTは、発生しうるトラブルを事前に検知し予防策を提示する

これまで見えなかったことが見えるようになることで、計画と実績のブレは最小化できる。バスから建機まで特殊自動車分野を牽引するCNHインダストリアルは、LCTを導入し高い在庫水準の最適化を図った。データの蓄積から可視化、分析、計画作成までの一連のプロセスは Azure 上で行われる。世界中で稼働する建機に実装したIoTセンサーのデータを、ビッグデータ処理基盤 Azure Data Lake に収集・蓄積。それらのデータを活用し、気温や地盤の固さなど様々な条件によって部品が摩耗し故障していく確率を機械学習で学習させ、どの拠点でいつ何の部品が必要になるかを予測する。

故障予測だけでは在庫最適化は実現できないと白鳥氏は話す。「在庫最適化とは、在庫とサービスレベルのバランスを改善することです。まず、部品に関して出荷数大・中・小、利益率大・中・小などセグメンテーション(分類)してグループごとに異なるサービスレベルを設定します。次に、需要と供給のブレ、予実の誤差、在庫金額などの各種制約を加味し、コストを最小化しサービスレベルを最大化する最適な安全在庫を、独自アルゴリズムにより算出します。CNHインダストリアルはLCTの導入により、予測精度12%向上、在庫8%削減を実現し、在庫回転率を改善できました」

一般的に計画担当者は、欠品を恐れることから在庫を多く持つ傾向がある。「計画担当者の勘や経験に頼るのではなく、機械学習やアルゴリズムを使ってデータに基づく在庫管理を実現することで、欠品による機会損失や滞留在庫を防止し利益拡大につながります。また、自動化により業務の効率化が図れる点もメリットです。データ量が予測精度に影響する機会学習やアルゴリズムによる分析は、コンピュータリソースが潤沢なクラウドの活用があって初めて実現できることです。LCTが Azure 上で実装されている点もCNHインダストリアルの評価ポイントでした」(白鳥氏)。

独自アルゴリズムによりコストを最小化し、サービスレベルの最大化を図る

AIを活用したセグメンテーション

製品や部品の重要度や需要特性、ライフサイクルなどに基づいてセグメンテーションの管理粒度を高めることで、在庫最適化の精度をさらに高めることができる。インドの自動車・農業機械製造大手のマヒンドラ&マヒンドラは、アフターパーツの在庫計画、供給業務に、AIを活用し、マニュアルベースの管理から脱却。Azure Data Lake に収集した在庫管理データを使って、AIにより管理効率の高いセグメンテーションの“解”を導き出し計画業務に活かすことで、在庫15%削減、顧客対応時間40%短縮、サービスレベルと収益のそれぞれ10%向上を実現した。

デジタルコントロールタワーの役割を果たすLCT
SCMのDXにより意思決定がスピードアップ

Azure 上に実装されたLCTは、まさにSCMのデジタルコントロールタワー(司令塔)の役割を果たす。「LCTはサプライチェーンにおける計画に対し、実際の需要と供給の状況はどうなっているのか、サプライチェーン全体を鳥瞰しコントロールできるコックピットの機能を備えています」と白鳥氏は話し、トラブルに対しデータに基づき先手を打つことで、リスクを回避しチャンスを拡大すると強調する。「例えば船で部品を輸送した場合、船の位置情報を活用することで最新の到着予定日を予測できるため、遅延による影響を的確に把握し、違う拠点から在庫を転送するなど事前に手を打つことができます。SCMのDXとは、サプライチェーン全体にわたる情報を一カ所に集めて可視化し、よりスピーディな意思決定を行える環境を実現することです」(白鳥氏)。

グローバルの観点から見ると、日本のSCMはITインフラの整備が遅れていると白鳥氏は指摘する。「Blue Yonderジャパンは1997年に設立され、国内で100社以上の導入実績があります。また、国内外の多くの経験豊富なエキスパートが企業におけるSCMの様々な課題の解決を支援しています。20年以上にわたりBlue Yonderジャパンで提案活動を行ってきた私の経験から、SCMのDXを推進し競争力をつけることで、日本の製造業はさらに強くなると確信しています」(白鳥氏)。

CASE時代はまだ幕を開けたばかりだ。100年に一度といわれる自動車業界の大変革期において、SCMにも技術革新や業界の構造変化の波が押し寄せてきている。従来からのカイゼンによって、できうる限りの効率化・リーン化の努力を続けている日本企業であるが、クラウドを活用し業務のデジタル化を進め、サプライチェーン全体や組織・部門を横断してデータ連携、可視化できれば、データ主導型の業務プロセスへと移行し、マニュアルオペレーションではなし得ない大幅な効率化や収益性の向上が可能になる。グローバルで台頭する既存または新興のプレーヤーはデジタル活用が前提であり競争力の源泉となっている。逆に言えば、DXなくして生き残れない時代に突入しつつあるのだ。SCMのDXという波に乗る企業が、不確実な時代を勝ち抜いていくことだろう。

本セミナーでは、様々なリスクを想定した持続可能なサプライチェーン再構築の必要性や、ポストコロナを見据えた次世代のインテリジェントサプライチェーン実現に向けた打ち手を、AI・機械学習やクラウドファーストなどのテクノロジー動向や事例と共にご紹介します。製造業の皆様が、自社を取り巻くサプライチェーンを強靭化し、さらなる飛躍を遂げるためのヒントとしていただけると幸いです。

Blue Yonderジャパン株式会社
マーケティング部

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