創業93年のベンチャー企業が挑む 日本企業のDX支援

創業93年のベンチャー企業が挑む 日本企業のDX支援

首都圏、北陸、ベトナムを拠点に、情報システムや化学品販売など多角的に事業を展開する三谷産業が新たな領域への挑戦を始めた。クラウドサービスをつなぐFaaS(※)インテグレーター「Chalaza(カラザ)」の提供である。基幹業務系と情報系クラウドサービスの連携で新たな価値を提供し、企業のDX(デジタル変革)を支援する。Chalazaが誕生した背景や目指す世界について、同社の代表取締役社長 三谷忠照氏に話を聞いた。

※「Function as a Service」の略称で、サーバーレスでアプリケーション開発を可能にするクラウドサービス

サービスをつないで
自動的に気づきを促す

 今や数多くのクラウドサービスが提供され、システムは「作る」から「使う」に変わりつつある。次に求められるのはこれらのサービスを連携させることにより、個々のサービスの利便性を超えた相乗効果を生み出すことである。

 昨年6月にFaaSインテグレーター「Chalaza」の提供を開始した三谷産業の代表取締役社長である三谷忠照氏は「すでに100を超えるクラウドサービスに対応したアダプターを提供しています。本年度中にさらに100種類を追加していく予定です」と語る。

 クラウドサービス同士を連携させるアダプターは全て同社が開発し、1サービスあたり月額1万円〜という低料金で提供する。クラウドサービスのバージョンアップなどの保守についても追加費用は発生しない。顧客はChalazaと連携しているサービスを選択するだけで速やかに利用開始でき、さらに希望するサービスが未連携の場合は同社で新規のアダプター開発にも対応可能だ。

 Chalazaが他のEAI(Enterprise Application Integration)などと異なるのは、単にサービスとChalazaをつなぐ“手”の提供にとどまらないことだ。三谷氏は「クラウドサービスから取得した情報を、必要な人に必要なタイミングで通知し、気づきを促します」と話す。Chalazaを介してデータ連携した先にある人の行動までも支援してくれる(図参照)。

 その背景には同社が長年提供してきた、グループウェアやワークフロー、Webデータベースなどを備える製品「POWER EGG(パワーエッグ)」の存在がある。「POWER EGGには情報共有を促すために、あらかじめ設定した閾値(しきいち)や期日などに応じて、決められた相手に通知を出してアクションを促す機能があります。その機能を独立させChalazaとして提供することで他の接続ツールとは一線を画しています」(三谷氏)。

 例えば勤怠管理システムから自動的に勤務時間の閾値を超えた従業員のデータを取り出して上司や人事部に通知したり、人事管理システムに反映させたりすることができる。しかもプログラム開発は一切必要ない。Chalazaは業務の効率化と業務の見える化、そしてシステムコストの削減という3つの効果をもたらすものだ。

FaaSインテグレーター「Chalaza」のサービス利用イメージ

財務会計や人事などの基幹業務系クラウドサービスと、メールやスケジュール管理、データ分析などの情報系クラウドサービスを連携させることにより、データ活用と「気づき」を促進。「生産管理×営業支援」「顔認証×勤怠管理」「販売管理×EDI(電子データ交換)」など企業のDXに向けた取り組みを支援する。

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顧客の「最適」を追求する
三谷イズムがベースに

 三谷産業がFaaSという新たな領域に踏み出したベースには、同社の持つベンチャー精神がある。創業93年という歴史を持つ同社は「顧客にとっての最適」を追求することで事業を拡大してきた。「当社の創業者である祖父は、顧客の要望にただ応えるだけではなく、その理由を踏まえて本来求められるものを提供してきました。『余計なことをするな』と叱られることもあったようですが、実際に試してその効果を実感いただくことで最終的には感謝されました。それが“三谷イズム”です」と三谷氏は語る。

 そんな同社のChalazaの開発は、同社の社外取締役であり、データベース研究者として有名な慶應義塾大学名誉教授 清木康氏の「クラウド全盛の時代に三谷産業としてどう存在感を出していくのか。キーワードは“メタ”だ」という示唆から始まった。それを受けて議論を重ねた結果誕生したのがChalazaである。

 「私が4年前に社長に就任してからこだわってきたのが、複数の事業領域を重ねて新しい価値を生み出すことです。足りないピースについてはベンチャー企業などとオープンイノベーションを推進してきました。当社自身が触媒になることを目指してきたのです。Chalazaも触媒の一つです」(三谷氏)。

 Chalazaの目的はつながることで新しい価値を生み出すことだ。顧客としては特定のサービス同士をつなぐことだけを考えているかもしれない。しかし、Chalazaでそれを実現することで、つながる対象は他のサービスにも広がっていく。「5年後、システムの世界がどうなっているかは予想できません。どのサービスともつながる拡張性を持つことが将来の変化への対応力を高めることになります。それがChalazaの目指す世界です」と三谷氏。Chalazaは創業以来の三谷イズムの産物なのである。

システムインテグレーターの
負荷軽減にもつながる

 実際にChalazaは既存のアプリケーションの価値を高める。例えば、Chalazaを介して勤怠管理システムと顔認証システムを連携させることで、顔認証による本人確認と勤怠申請が自動化される。また、営業支援システムと生産管理システムを連携させることで受注計画に基づく原材料の発注調整もできる。

 自社システムとクラウドサービスとの連携も可能だ。大手ゼネコンの清水建設は同社の建物向けOSと外部サービスとの連携にChalazaを採用し、IoTデバイスなどとの接続を実現。「USB機器を接続する感覚でサービスをつなぐ存在になっていきたい」と三谷氏は話す。

 サービスをつなぐニーズは高まりつつあるが、システムインテグレーターにとっては決してもうかる仕事ではない。アダプター開発は、作業ボリュームは小さいが接続検証などに手間がかかる。Chalazaにその部分を委ねることができれば、その分のシステムインテグレーターの負担は軽減される。

 「アダプター開発は再現性や反復性があります。100以上ものアダプターを自社開発してきたことでノウハウが蓄積され、開発スピードが上がってきました。システム間の連携作業は私たちにお任せいただき、システムインテグレーターのコアの業務と役割分担することで、日本企業のDXを加速させていきたい」と三谷氏は意気込みを語った。

※「FaaSインテグレーターChalaza」は三谷産業株式会社の登録商標です。

※「POWER EGG」はディサークル株式会社の登録商標です。

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