「システム運用関連サービス(メーカー)」部門はNECが2年ぶりに首位に返り咲いた。NECは「ITコンサルティング/上流設計関連サービス」および「システム開発関連サービス(メーカー)」部門でも首位に輝いており、エンタープライズシステムに関する3部門を制覇した格好だ。同社の活動の基軸にあるのが「お客様ファースト」の考えだ。カスタマーサクセスを重視した幅広い施策が運用品質を高め、高評価につながった。ここでは中でもシステム運用関連サービスを中心に、NECの顧客満足度に対する取り組みを見ていきたい。
近年、クラウドシフトや仮想化技術の普及を受け、企業内システムは大規模化・複雑化する傾向にある。その一方でIT人材は慢性的に不足しており、システム運用のあり方は大きな見直しを迫られている。
「市場変化に対応するために業務が変わる。業務が変わればシステムが変わり、当然その『運用』にも変化が求められます」とNECの嶋村 寿氏は話す。
一口にシステム運用と言っても、安全・安心が求められる基幹システムの運用もあれば、スピード優先で構築されたクラウドシステムの運用もある。稼働している業務によってもシステムの運用レベルは変わってくる。「業務要件が変化するスピードにシステム運用が並走できなければ、お客様ビジネスが成立できなくなっていると肌で感じます」と嶋村氏は語る。
こうした変化に対応するため、NECでは「お客様ファースト」の考えのもと、システム運用の効率化と運用サービスの品質向上に取り組んでいる。
この一環として、以前から自社および顧客のシステム運用に活用してきた「ServiceNow」との協業を強化。新たに「NECマルチクラウド運用サービス」を2021年2月に発表した。
これは30年以上にわたる6000社以上のアウトソーシング事業で培ったNECの運用業務標準プロセスを、ITSM(IT Service Management)やITOM(IT Operations Management)をベースにしたServiceNowのデジタルワークフローに組み込んだもの。「標準機能の中から最適なものを組み合わせて使う『Fit to Standard』により、オンプレミスを含むマルチクラウド環境のシステム運用サービスを短期間で構築できます。用途に応じたスモールスタートも可能です」と嶋村氏は説明する。
お客様ファーストを体現するために重視しているのが、カスタマーサクセスの向上である。「カスタマーサクセスグループ」も新たに新設した。新たなグループが主軸となって、より具体的かつ最適なシステム運用シナリオを作成し、各企業・組織にとってのシステムのあるべき姿を追求していくのだという。
マイクロソフトやアマゾン ウェブ サービス(AWS)などと戦略的パートナーシップを締結し、クラウドのシステム開発・運用力の強化に取り組んでいるのもこの一環だ。マイクロソフトとはデジタルワークプレイス領域でのアライアンススキームを実現。一方、AWSに関しては、NECグループ全体でAWS認定技術者を約2000人有しており、マルチクラウド化だけでなく、基幹系含むモダナイゼーションにも対応できるという。
市場や顧客ニーズの変化に対応するため、ケイパビリティの強化にも継続して取り組んでいる。この活動を支える核になるのが「デジタルHub」である。これはNEC全社のアセットとナレッジを最大限活用するための枠組み。生体認証、AI、セキュリティ、クラウドといった多様なユースケースを体系化した「ビジネスフレームワーク」と、個々のユースケースを実現するための実装モデルである「システムフレームワーク」を組み合わせ「デジタルフレームワーク」として整備した。「社内情報共有を促進し、お客様のニーズや課題に最適な提案や、高度な価値創出が可能となります」と嶋村氏は語る。
ケイパビリティの強化には人材の育成も欠かせない。そこでDX構想企画力・オーガナイズ力を習得するDX人材育成プログラム「DX人材育成サービス」を整備。社内人材のデジタルシフトも実践しており、2025年度には1万人のDX人材育成を目指している。「お客様のパートナーとしてデジタルを基軸としたビジネスモデルを共創し、デザイン思考を用いてアジャイル提案を推進する人材を育成しています」と嶋村氏は述べる。
システム運用を最適化するためには、より上流からのコミットメントが重要になる。例えばクラウド導入の際は、しっかりとクラウドジャーニーを描く。セキュリティは後付けでなく、セキュリティ・バイ・デザインの考えを取り入れる、といった具合だ。
その点、NECは「クラウド移行計画策定コンサルティング」「クラウドインテグレーション」「クラウド運用」の専門部隊を持っているため、組織横断的な体制のもとで、これらをトータルサポートすることが可能だ。
さらに各部門で人材のジョブローテーションも積極的に推進、コンサルティング、インテグレーションの知見を運用にフィードバックしている。もちろんその逆も然りだ。「運用の視点をコンサルティング、インテグレーションに取り込み、サイクリックな活動でIT環境全体の高度化を支援しています」と嶋村氏は力を込める。
IT環境全体の高度化に向けた取り組みはこれだけにとどまらない。デジタルシフトの支援に向け、NECのコアアセットを集約した共通基盤「NEC Digital Platform」の整備も進めている(図)。サービスの知見、役務主体のコンサルティング、インテグレーション、運用保守、さらには契約書などのナレッジを標準化・形式知化したベストプラクティスとしてまとめたDXオファリングを提供。スピーディーに顧客のDX課題を解決する手段として、付加価値の高い運用支援サービスの実現を目指す。
今後もNECは「お客様ファースト」を基軸に、コンサルティング、インテグレーションまで見据えたシステム運用の最適化を実現し、顧客企業のデジタルシフトを強力に支援していく考えだ。