日経クロステック Special

計測時間は接触式3次元測定機比で6分の1以下に短縮、インライン全数検査にも活用可能 光学技術の粋を注ぎクルマのボディの進化にさらなる可能性を与える レーザーレーダ「APDIS」が新登場

自動車業界が挑む100年に一度の大変革は、クルマの生産ラインの姿も変えていく。新時代のクルマ作りに相応しい新たな生産技術が求められている今、新型車の迅速な生産立ち上げやライン内での厳密な生産管理を実現し、CASE 時代の大変革に貢献すべくニコンが新たに投入したのが、レーザーレーダ「APDIS」だ。ニコンソリューションズの種村隆氏に詳細を聞いた。

 CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)を背景にした新世代のクルマ作りでは、AIや高性能バッテリーなど電気・電子関連技術の進化に目が向きがちだ。しかし、大きく変化するのはそれだけではない。次世代機能を収めるボディにも、新たな発想に基づく刷新が求められている。

 たとえば自動運転車では、運転から解放された人とクルマの新たな関わりの場を創出する車室空間の再設計が必要だ。また電気自動車にも、エンジンに代わるモーターを積み、重いバッテリーを支えるボディが求められる。これらの要求に応えるボディも同時に実現することで、価値ある新世代車が生まれる。

新型車生産での
立ち上げを迅速化

 クルマの生産ラインの中でも、ボディ作りは工程間の擦り合わせの効果が品質に色濃く反映しやすい部分だ。

 クルマのボディは、プレス加工した複数のパーツを組み合わせ、溶接して作り上げられる。パーツ同士が少しでもずれて溶接されれば、ボディ全体が歪んでしまう。また、ボディにはドアやシート、インパネなど取り付ける穴が多数空けられており、それらの穴の位置が設計図通りの場所、大きさ、形状でなければ、やはり取り付けの際に歪む。歪んだボディでは、ドアが閉まらないなどはもとより、走行性能の低下や、風切り音や振動の発生など、様々な悪影響を引き起こしかねない。

 自動車メーカーは、質の高いボディを生産するために、新型車の生産立ち上げ時に生産工程間の擦り合わせを徹底する。出来上がったボディの形状を確認し、その結果をプレス加工や溶接などの工程にフィードバックして調整していくのだ。こうした作業は、短くても3カ月、通常は半年続く。新型車投入の際には、この作業をいかに短縮できるかが重要になる。

 ボディ形状の確認作業では、出来上がったボディを環境の整った計測室に運び、「フィーチャー計測」と呼ばれる厳密な形状計測を行う。その際、現状多くの自動車メーカーが、接触式3次元測定機を計測に利用している。接触式3次元測定機は細いプローブをボディの様々な部分に接触させ、各接触点の位置をセンサーで割り出して全体形状を計測する装置だ。数十μmレベルの高精度で触れた場所の空間位置の座標を特定できるが、1台分のボディで1000点以上計測するケースもあり、丸1日費やす作業になる。

種村氏
株式会社ニコンソリューションズ
産業機器営業本部 第二営業戦略部 部長
種村 隆

 「当社が新たに投入したレーザーレーダAPDISは大きく2つの役割を担います。1つ目がこのフィーチャー計測の迅速化による従来の接触式3次元測定機の置き換えです」(種村氏)

 接触式3次元測定機に代えてAPDISをフィーチャー計測に活用すれば、計測時間を劇的に短縮することが可能になる。APDISは、赤外レーザー光によって、車体の形状を数十μmレベルの高精度で計測できる非接触3次元測定機である(精度の目安:28μm@2m)。計測箇所に物理的に触れる接触式3次元測定機と異なり、レーザーを当てるだけで計測できるため、最速で1秒当たり1000点の点群取得が可能だ。

大規模空間非接触測定機APDISの特長

 「当社で設定したボディ計測例では、接触式3次元測定機で約42分費やしていた100点のフィーチャー計測を、APDISで6分の1以下に短縮できます。さらに大きな特長は、計測点の空間位置が絶対座標で得られることです。これにより相対座標からの相関処理なしに計測位置を設計図と直接比較することができます」と種村氏。

 「ヘテロダイン干渉法」を用いたニコン独自の計測技術によって、APDISは離れた位置にある対象でも、反射板なしで高精度に計測することが可能だ。

 「当社はAPDISの市場投入以前にも、レーザーレーダの従来機『MV 3x1』を販売し、航空機の生産現場などで広く採用いただいておりました。APDISは、この従来機を自動車産業での利用を主に想定して進化させたものです」と種村氏は話す。

 従来機比で計測速度を2倍に引き上げたエンハンスドタイプを用意し、暖機時間も大幅に短縮している。さらに、約25%の小型化、約40%の軽量化を実現することで取り回しを良くした。

 加えて、IP54準拠の防塵防水性能を備え、計測室への輸送なく、バイラインまたはインラインでの利用も可能だ。ニコンの半導体露光装置の分野で培った振動や温度変化に強い光学技術を投入することで、使用する場所を問わず高い信頼性を実現する。

※表記の数字は2点間距離測定精度(2m、10m)の標準的な値。MPE(最大許容誤差)の1/2。MPEはASME B89.4.19-2006規格準拠。詳細はカタログをご参照ください。