日経クロステック Special

BMWグループやNASAなどで採用される大規模空間非接触測定機 高精度と圧倒的な効率性でスマートファクトリー化の新たな可能性を切り拓く

スマートファクトリー化のニーズは、コロナ禍の煽りを受けてますます高まっている。ニコンが新たに展開するレーザーレーダ「APDIS」は、現場の熟練担当者に代わって生産ライン上の仕掛品の出来に常に目配りする「スマートファクトリーの眼」となる可能性を秘めていると話すのは、同社の産業機器事業をけん引する中山正氏だ。APDIS活用によって広がる可能性について詳しく聞いた。

 市場でのニーズの変化に迅速に対応するため、生産効率を極限まで高めるため、さらには人材不足の中でも持続可能な生産体制を構築するため──様々な目的から、製造業ではスマートファクトリー化の実現へ向けた取り組みが加速している。

 とりわけ日本ではこれまで、熟練した現場担当者の知見やスキルを頼りに、製品の品質維持や生産効率の向上、迅速・的確な段取り替え、柔軟なトラブル回避などに対応してきた。こうした属人的現場力は、企業にとってまぎれもなく競争力の源泉だった。

 しかし、市場環境や競争環境、社会構造が変化し、これまで通りのものづくりの手法では、企業競争力の維持が難しくなってきている。こうした状況に適応すべく、データ活用で業務プロセスを改善するスマートファクトリー化の早急な実現が求められているが、その進捗はあまり芳しくないのが現状だ。これに応える経営観や、後押しする製品・ソリューションの登場が求められている。

ライン上の製品の出来に
常に厳しく目配り

 スマートファクトリーの構築では、現場担当者だけが感じることができた現場の状況や製品の状態のわずかな異常やブレを、いかに検知するかが取り組みの第一歩となる。異常やブレを正確にデータ化できさえすれば、情報システムによって対処法を探り出し、生産条件にフィードバックする筋道はある。

 装置や設備の稼働状態は、各種センサーを使って正確に検知できる。これに対して、製品、とくに生産ライン上の仕掛品を評価するのはなかなか困難だ。近年、サイズが小さい製品ならば、AIなどを活用して画像データから判断できるようにはなってきた。しかし、航空機やクルマ、建機、農機、産業機器といった大型の製品やそこに使われる部品では、より難しくなる。大型製品の状態を俯瞰し、しかも高精度で検知できる適切な検査装置がなかったからだ。

 こうしたスマートファクトリーを構築する際に欠けていたパーツを埋める可能性を秘めているのが、ニコンのレーザーレーダAPDISだ。大規模空間非接触測定機として、熟練工に代わって現場で大型製品の仕掛品や完成品を計測することができる。

中山氏
株式会社ニコン
執行役員
産業機器事業部長
中山 正

 APDISは、赤外レーザー光によって、物体の形状を数十μmレベルの高精度で計測できる非接触3次元測定機である(精度の目安:28μm@2m)。

 「当社のレーザーレーダはこれまで主に、航空宇宙産業などで引き合いいただいておりました。新たに投入したAPDISは、加えてクルマのボディ計測における従来の接触式3次元測定機の置き換え、そしてインライン全数測定での活用を想定して開発しており、絶対座標系での高精度測定を自動化することで生産性向上に貢献します」(中山氏)

 自動車産業では従来、生産ラインとは異なり環境の整った計測室内で、計測箇所に物理的に触れる接触式3次元測定機を使ったフィーチャー計測が行われてきた。「その点、APDISならレーザーを当てるだけで計測できるため、最速で1秒当たり1000点の自動測定が可能です。当社で設定したボディ計測例では、接触式3次元測定機で約42分費やしていた100点分のフィーチャー計測を、APDISならば6分の1以下に短縮できます。加えて、計測点の空間位置が絶対座標系で得られ、相対座標からの相関処理が不要で計測位置を設計図と直接比較することができます」と中山氏は話す。

大規模空間非接触測定機APDISの特長

 さらに接触式3次元測定機とは異なり、計測室へボディを輸送する時間を省略できるという、使用可能な場所が多様な点もAPDISの特長だ。「IP54準拠の防塵防水性能を備えると共に、ニコンが誇る半導体露光装置の分野で培った振動や温度変化に強い光学技術が投入されています。これによって、形状計測の条件が整っているとは言い難い、バイラインまたはインラインでの利用が可能になり、ライン上での全数検査への適用にも道が拓けました。すでにBMWグループなどで採用いただいています」(中山氏)。

※表記の数字は2 点間距離測定精度(2m、10m)の標準的な値。MPE(最大許容誤差)の1/2。MPE はASME B89.4.19-2006規格準拠。詳細はカタログをご参照ください。