2021年3月9日にオンラインで開催された「NTT DOCOMO VENTURES DAY 2021」では、NTTドコモ・ベンチャーズが「次代の主役」と期待するスタートアップ6社がピッチに登壇した。各分野で活躍するスタートアップの概要や魅力的なサービスの詳細を、ピッチの登壇順に見ていこう。

買い物や不妊治療、業務改善の分野に大きな変化をもたらす3社

●ダブルフロンティア

 ダブルフロンティアは、日本発の地域密着型お買い物DXサービス「ツイディ」を2018年9月からスタートした。現状のイメージは「ネットスーパー」に近いが、同社 代表取締役の八木橋裕氏は「あらゆる小売事業と組んでいけるプラットフォーム」と説明する。

ダブルフロンティア 代表取締役 八木橋裕氏

 サービスの概要は、まずリクエスタ(=利用者)がほしい商品をスマホやパソコンからツイディに「注文」する。次に、ツイディがピッキングクルーとデリバリークルーにそれぞれ業務を「依頼」する。そこからピッキングクルーは店舗で注文された商品を「ピッキング」し、その商品をデリバリークルーに引き渡して、デリバリークルーがリクエスタへ「デリバリー」する流れとなる。

 ツイディの強みは「共通商品データベース」にある。これによって商品ページに取扱商品の写真を掲載できるため、データベースを持っていない地方のスーパーなどでもツイディに登録できるようになる。ダブルフロンティアとしてはこの強みをフックに、日本全国に事業拡大していく構えだ。

●vivola

 近年、少子化や人口減少問題が深刻になる一方で、「子どもを産みたくても産めない人が50万人いる」という状況は、早急に解決すべき社会課題となっている。これに対してvivolaは「女性医療×AI」を事業領域に据え、同社 CEOの角田夕香里氏の原体験から不妊治療の領域に着目。治療データの分析サービスに取り組んでいる。

Vivola CEO 角田夕香里氏

 vivolaではまず治療データエビデンスの提供を行ない、「患者視点で理解できる治療」(角田氏)をめざす。次に通院負荷を減らすオンライン診療で仕事と両立できる治療システムを構築。最後に、これらから得た治療データを使ってAIによる治療の個別最適化を実現し、遠回りをしない最短ルートの治療プログラムの導入を目標とする。

 治療データエビデンスの提供に関しては、2020年6月に不妊治療データ検索サービス「cocoromi」のβ版をリリースした。患者が基本情報を入力すると、不妊治療で過去に成功した人のさまざまな統計データが閲覧可能になる。

 オンライン診療では、最初のターゲットを地方患者に置く。地方には体外受精のできる施設が少なく、「仕事との両立が非常に難しく、交通費もかかる」(角田氏)との課題があるからだ。そこでvivolaは、地域の産婦人科の医師と生殖医療専門医を不妊オンライン診療サービス「vivola online」でつなぎ、不妊治療患者をサポートするシステムを提案していくという。そのうえで、将来的には都市部にも展開させる。

 AIによる治療の個別最適化は3年後を想定。cocoromiやオンライン診療で収集したデータを基に、個別の治療最適化プログラムを構築し、病院へと導入する予定だ。

●Legion Technologies, Inc.

 Legion Technologies, Inc.(以下Legion)は米国のスタートアップ。従業員の経験とエンゲージメント向上、そして適切な生産性の管理を実現するAIワークフォースマネジメントプラットフォームを提供する。すでに小売業やサービス業、飲食業などのさまざまな業界で導入されており、同社 CEO and founderのSanish Mondkar氏は「世界15カ国で約3万拠点と45万人以上の従業員をサポートしている」と語る。

Legion Technologies, Inc. CEO and founder Sanish Mondkar氏

 ワークフォース管理のプラットフォームはマルチテナントかつクラウドを利用したマイクロサービスとなっており、「統合を念頭に置き、他に例のないUXを提供する」(Sanish氏)。管理機能のコントロールセンターはセルフサービスの設定でタイムトゥバリューを短縮できるため、組織の変化に対する機敏な対応を可能にする。そして多様なモジュール/パラメーターを用いて需要予測から勤怠までを管理する。

 実績としては、世界に1600以上の拠点を持つ小売業の事例を紹介した。従来、シフト作成には多大な時間を要するが、Legionのツールによって管理者のスケジュール制作時間を50%削減し、効率的な時間活用によって売り上げが22%増加したという。また、スマートフォンからのシフト確認が可能になったことで、従業員の遅刻や勤怠ミスがほとんどなくなったことも利点として挙げた。


メンヘラや予知保全、MaaSにフォーカスした3社の目指す世界

●メンヘラテクノロジー

 悩んだときに気軽に使えるチャット相談アプリ「メンヘラせんぱい」を開発するメンヘラテクノロジー。同社 代表取締役の高桑蘭佳氏は、病むことを否定したり病まないように頑張ったりするのではなく、「病んだときにその気持ちとどう向き合い、どう対処していくか」で世界が変わると考える。

メンヘラテクノロジー 代表取締役 高桑蘭佳氏

 メンヘラせんぱいは、話を聞くのが得意な女性と、話を聞いてほしい女性をつなぐチャット相談サービスである。話を聞くユーザーを「せんぱい」と呼び、せんぱいユーザーは空いた時間にアプリ上で待機。そして話を聞いてもらいたいユーザーが、このせんぱいユーザーの中から話したい人を選択し、相談料金を支払うことでチャットで話を聞いてもらうシステムだ。

 ポイントは、せんぱいユーザーの質を担保する仕組みだ。せんぱいユーザーになるためには、まず通過率が約20%の選考テストに合格し、トレーニングを受ける必要がある。さらに、これまでに蓄積してきたチャットのデータを利用してせんぱいユーザーの対応の質を向上させるために、返信内容などをアドバイスするサポートシステムも現在開発している。また、相談料金はせんぱいユーザーのランクごとに決まっており、一定の幅でせんぱい自身が料金を設定できるようになっている。

 サービスは2020年3月末にスタートしており、累計相談件数は約2000回を超えた。相談ユーザーは約1500人、せんぱいユーザーは約300人となる。2021年5月にネイティブアプリのリリースをめざしているほか、今後は不適切なメッセージの送信を防ぐ「フィルタリング機能」の開発を進めていく予定だ。

●Senseye Ltd.

 英国のサウサンプトンに本社を構えるSenseye Ltd.(以下Senseye)は、製造業向けの予知保全ソリューションを提供。同社 CEOのSimon Kampa氏は設立のきっかけとして、航空宇宙や防衛分野で培ってきた「複雑な機械の故障を予測する経験」を挙げる。その経験とAIやIoTといった最新技術を組み合わせることで、産業を問わず、商業的にも技術的にも拡張性のある製品を開発している。

Senseye Ltd. CEO Simon Kampa氏

 例えば自動車工場では1時間のダウンタイムで200~300万米ドルかかるが、現在でも多くの工場が「装置を故障・交換時期まで意図的に稼働させたり、故障が起きてから対処したりしている」(Kampa氏)。そこでSenseyeは、自社の技術とソリューションでダウンタイムを削減して総合設備効率を向上させていく考えだ。

 主要製品は2つある。1つは初めて導入する企業向けに、Senseyeがすべてのコンサルティングと作業を担う「PdM Complete」。もう1つは導入スキルを持っている企業に向けた、オープンプラットフォームで設置変更や拡張が可能な「PdM Enterprise」だ。またサポート製品として、ガイドの役割を果たす「PdM Omniverse」なども用意する。

 さらにSenseyeでは、提携保険会社のスコアによる製品保証を提供する。これは、導入から12カ月経っても投資全額のリターンを得られない場合に、提携先の保険会社から全額返金されるという仕組み。Kampa氏は「導入に対してのハードルを下げるとともに、不安を和らげるための施策」と語り、自社製品の完成度の高さに自信をのぞかせた。

●MaaS Tech Japan

 MaaS Tech Japanは公共交通や自動車、そのほかの関連データを活用したモビリティ連携プラットフォームを構築。本プラットフォームを使い、企業や自治体と課題解決型のソリューションを展開するMaaSに取り組んでいる。

MaaS Tech Japan 代表取締役 日高洋祐氏

 同社 代表取締役の日高洋祐氏は、MaaSの鍵を握るのは「交通分野におけるパラダイムシフト」だとする。スマホの普及とともに、交通事業のデジタル化・IoT化によって取得できる交通データの解像度が圧倒的に増加したことで、「都市交通の学問体系レベルでパラダイムシフトが生じている」と日高氏は解説する。ただし、全国の交通事業者や自治体はデータの収集や利活用に苦労しているのが実情。なぜなら、各モビリティによって多種多様なデータの種類があるとともに、ユーザーデータの形式が異なるからだ。

 そこでMaaS Tech Japanはデータの利活用を可能にするために、MaaSのプラットフォームとして3つのコンポーネントでソリューションを展開。1つめはユーザー向けの「MaaSアプリ」、2つめは交通事業者や自治体など向けの「MaaSコントローラ」、そして3つめはそれらを支える「MaaSデータ統合基盤(TralSARE)」である。TralSAREは、さまざまな交通関連データを取得するとともに共通フォーマットに変換し、API Managementで各ユーザーに好きな形式で提供していくコアの基盤だ。この基盤を軸とし、顧客や地域に応じたソリューションの開発・横展開を進めている。

 これらスタートアップに対し、NTTドコモ・ベンチャーズは「未知なる世界を創るスタートアップの良き伴走者」として深く関わっている。vivolaとメンヘラテクノロジーズは伴走型インキュベーションプログラムに採択され、SenseyeとLegionには出資を行なった。今後もNTTドコモ・ベンチャーズとのシナジーによって生まれる価値創出に期待したい。

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