新ビジネスの実現を協創で加速するNTTドコモとNTTドコモ・ベンチャーズ。5Gの活用範囲をさらに拡大すべく「docomo 5G DX AWARDS 2021」を開催し、5G時代にふさわしいアセットの発掘を進めている。

ソフトウェアやXRなどの重要技術と5Gのシナジーも

 2021年9月14日、NTTドコモとNTTドコモ・ベンチャーズが主催する「docomo 5G DX AWARDS 2021 最終選考会」が開催された。第2回となる今回は、5Gの活用範囲をさらに広げるべく、募集テーマを「12の業界×3つのイシュー」に幅広く設定。最終選考会で最優秀賞、優秀賞に輝いた社を中心に、5Gのシナジーの今後を示唆するプロダクトをいくつか見ていこう。

オンライン開催となった「docomo 5G DX AWARDS 2021」。審査のみ、東京の渋谷ストリームホールで行なわれた

 今回のアワードの狙いを主催者であり選考委員のNTTドコモの坪谷氏は「本アワードは5Gでの新たな協創ソリューションの創出に向けた取り組みをさらに加速させるもの」と説明。昨年度のアワードからSwipeVideoをはじめとする3つの協創ソリューションがすでに誕生したことを踏まえ、今回は5Gの活用領域のさらなる広がりに合わせて募集テーマを拡張するとともに、「ソフトウェアやXRなど、今後ますます重要となる技術と5Gとのシナジーも生み出していきたい」と語った。

 以降、受賞作品を中心に特に可能性が感じられたXR、同報コミュニケーション、そしてAI活用などの5Gとのシナジーを見ていきたい。併せて、今後の展開やドコモグループへの期待、選考委員のコメントなども紹介していく。

審査員の面々。左からエムテド 代表取締役 アートディレクター デザイナーの田子學氏、HEART CATCH 代表取締役 プロデューサーの西村真里子氏、NTTドコモ・ベンチャーズ 代表取締役社長の笹原優子氏、NTTドコモ 執行役員 法人ビジネス本部 5G・IoTビジネス部長の坪谷寿一氏、NTTドコモ 法人ビジネス本部 法人ビジネス戦略部長の山口調氏、ソフトウェア協会(SAJ) 顔認証ビジネス研究会 主査でリアルネットワークス APAC 副社長の高村徳明氏


「XRの民主化」や「デスクレスワーカー」がキーワードのサービスに注目

●DataMesh

 最優秀賞に輝いたDataMesh は、知見のないユーザーでもPowerPointのように直感的に3Dコンテンツを編集できるデジタルツインプラットフォーム「DataMesh Director」を紹介した。コールセンターをバーチャル化するプロジェクトや、建設業のBIM(Building Information Modeling)・CIM(Construction Information Modeling)での取り組みなどに参画し、業界を横断したさまざまなXRの実装を支援している。

最優秀賞を受賞したDataMesh。オンライン発表者はDataMesh マーケティング&セールスマネージャーの鹿島田健将氏

 5Gとの親和性も高く、「クラウド側でのレンダリングによる高画質(大容量のポリゴン)・低遅延の表示」や「IoTデバイスと連携した低遅延での遠隔操縦」を実現することで、場所に縛られない新しい働き方が可能になると提案。さまざまな形で5G時代に向けた“XRの民主化”を進め、「誰もがXR技術を使いこなせる世界観」を目指す。

 選考委員からは「デジタルツインが今後重要なマーケットになっていくことを踏まえると、“XRの民主化”というコンセプトは何よりも素晴らしい」と高い評価を獲得。さらに、NTTドコモの視点として近年、さまざまな建設・工事系のDX推進に新たなニーズが生まれていることから「すぐにでも連携して事業化を目指したい」と大きな期待を寄せた。

 DataMesh マーケティング&セールスマネージャーの鹿島田健将氏は「XRは次世代のプラットフォームであり、人類を前進させる可能性を秘めたテクノロジー」と見据える。いずれ訪れるであろう「仮想と現実が混ざり合った世界」の実現において、DataMeshが取り組む"XRの民主化"の意義は「非常に大きい」と考える。

 さらに鹿島田氏は、5年後にはXRデバイスがより小型化し、仮想物・空間の生成はスマホをかざすだけで誰もが手軽にできるようになることで、「コンシューマー向けの市場も大きく立ち上がっていく」と予想する。そのような未来で、XRに知見のないユーザーがXR技術を使いこなすための手段(=ソフトウェア)をDataMeshが提供していくためには、「次世代の通信インフラやさまざまな企業との連携が非常に大きな意味を持つ」という。

DataMesh Directorの橋梁架設工事での活用例

 今後は、短期的な観点として「5Gインフラやドコモクラウドと掛け合わせによるDataMesh Directorの水平展開」、中期的な観点として「周辺技術とXR技術を掛け合わせた新しいソリューションの開発」、長期的な観点として「次世代のインターネットと言われる"メタバース"※を創るチャレンジ」に、ドコモグループとの連携の期待を寄せた。

※メタバース(Metaverse)明確な定義はまだ存在しないが、DataMeshの見解はインターネット上に構築されるデジタルと物理、両方の世界にまたがる体験を指す

●サイエンスアーツ

 サイエンスアーツは、飛行機の整備士や新幹線の乗務員、小売店舗の従業員といった“デスクレスワーカー”をつなげるライブコミュニケーションプラットフォーム「Buddycom」を提供している。Buddycomは、音声や映像を1対複数人に対して一斉に発信することが可能。コミュニケーションにおける「簡単」「間違わない」「速い」を重要視して独自に開発されたサービスとなる。

 現場は24時間365日稼働し、その業務は1分1秒を争うことから、「大規模処理」「低遅延」「安定性」の実現がBuddycomの核となる。また今後は、Things(センサーや機械、監視カメラ等のモノ)とのコミュニケーションを可能にする「Buddycom with Things」によって、デスクレスワーカーのさらなる生産性向上をはかっていく考えだ。ただし、現状の4G環境では「遅延」や「安定性」に課題があることから、5G技術との組み合わせによってその課題解決を図る。

 サイエンスアーツは、「優秀賞」と「SAJ-DX特別賞」をダブルで受賞。NTTドコモ・ベンチャーズの笹原氏は「DXが届きにくかったユーザーに向けたソリューション」であり、「シンプルかつ丁寧に作られたUI・UX」であることを評価。また、SAJの高村氏は「実現性が高く、海外への対応も可能。さらに、エクスポネンシャル(指数関数的)なビジネスの可能性を秘めている」と称賛した。

サイエンスアーツは優秀賞とSAJ-DX特別賞をダブル受賞。オンライン発表者はサイエンスアーツ 技術本部 プログラマーの平岡竜太朗氏

 サイエンスアーツ 技術本部 プログラマーの平岡竜太朗氏は、「テクノロジーが進化すればするほど人と人の判断が重要になる」と話す。そして、5年後に今よりもテクノロジーが進化し、人の判断がより重要になった社会において、「Buddycomがさまざまな垣根を超えたライブコミュニケーションを実現させ、世界中のデスクレスワーカーを支えるようなインパクトをもたらしたい」と意欲を見せた。

 「世界中の人々を美しくつなげる」をミッションに掲げ、世界展開も視野に入れるサイエンスアーツにとって、Buddycomの今後の構想である「Buddycom with Things」中心に5Gとの親和性は非常に高く、5Gの早期の普及を願っている。

現場業務でストレスのないコミュニケーションツールを開発


防犯や介護、農業分野を変革するソリューションも続々登場

●アジラ

 人物の行動推定に特化したAIスタートアップのアジラ。特定の行動をAIにあらかじめ学習させ、カメラ映像をフレーム単位で時系列に解析することで人物の行動を推論する「行動認識AI」を開発している。ミッションとして「人手不足をAIで補強し、あらゆる産業の高度化をはかる」を掲げる。

 ソリューションでは、防犯セキュリティでの違和感(通常から逸脱した行動)を感知するAIなどをパッケージ化した「Asilla SDK」を展開中。学習済みモデルが用意されているため、既存カメラに小型エッジデバイスを設置するだけで、手軽に既存システムをAI化することが可能。実現にあたって世界トップクラスの精度を持つ姿勢推定アルゴリズム「AsillaPose」を独自で開発するほか、別分野への応用として製造業向けの作業分析AI「WorkPose」の開発なども進めている。

 5Gとの相性が良い分野としては「防犯セキュリティ」「介護見守り」「スマートシティ」「ファクトリーオートメーション」などを挙げる。これらの分野で5GとMEC(Multi-access Edge Computing)を活用することで、低遅延・高セキュアを担保したまま同時多重接続を実現できるソリューションを創出していく考えだ。

サイエンスアーツは準優秀賞を受賞。オンライン発表者はアジラ IVA(映像解析)事業部 プロジェクトマネージャーの畠山尚也氏

 アジラは準優秀賞を受賞。エムテドの田子氏は、世界的な特許を多く取得するなどのアジラが持つ「強い独自性」に着目。その独自性と知財の組み合わせに対して「非常に大きな将来の可能性を感じる」と評価した。

 世界のカメラ出荷台数は年々増え続けていることから、「映像解析ソリューションの需要は今後さらに拡大する」と、アジラ IVA(映像解析)事業部 プロジェクトマネージャーの畠山尚也氏は見込む。さらに自社のテクノロジーは「人手不足」という社会課題を補強するソリューションであることから、あらゆる産業に「大きなインパクトを与えるはず」と予想する。

 一方で、「マーケットのニーズを汲み取った製品企画力や社会実装力は、大企業と比較してまだまだ力不足」と感じている。そこで、ドコモグループとの幅広い連携によって「市場に求められるソリューションを共創・提供していきたい」と語る。

 具体的なユースケースとしては、人の眼で行なっている監視業務の「AIの眼による代替」や、世界初の「ドローン×AIによる沈溺検知ソリューションの実証」を挙げた。さらに、このような取り組みによってソリューションの社会実装を加速させ、5年後には「あらゆる施設や街ナカに実装されたアジラの『AIの眼』が、人々の安心・安全な生活の一助となる」ことを目標に掲げた。

人間の眼による監視業務を“AIの眼”で代替したいと話す

 そのほかの注目株としては、「Z-Works」と「Root」が挙げられる。Z-Worksは、介護の人材不足をDXで解決する支援システム「ライブコネクト」を展開。さまざまなセンサーで室内にいる人物の様子や行動を把握するとともに取得データをクラウドで解析し、リアルタイムで介護者などに状況を通知することが可能だ。

 Rootは、農業における単純作業の効率化を実現する「安価で誰でもどこでも使えるツール」として、ハンズフリーでの作業を可能にするスマートグラス向けAR農作業補助アプリ「Agri-AR」を開発。将来的には、建築や土木、交通などの他分野への応用も見据えている。

 なお、今後の要望として各社が、NTTドコモおよびNTTドコモ・ベンチャーズとの連携による「自社の強みを活かした協創の推進」を挙げていたのは、注目したいポイントの1つだ。今後は相互に協力しながら5Gやオープンイノベーションなどの取り組みをさらに進め、多くの企業の多彩なサービスやソリューションをしっかりと下支えしていくことが求められるだろう。

実現性の高い「手触りのある」ものが多く、選考委員も頭を悩ませた

 アワードを終え、NTTドコモ・ベンチャーズの笹原氏は「幅広い分野で具体的な新しい取り組みが進んでいる」ことに注目。夢物語ではなくマーケットに即したものが多かったことから、どのソリューションにも「とても手触りがあった」と振り返った。

 さらに、多くのソリューションがさまざまなユーザーに対してきめ細やかに対応することで、利用しやすい状況を作っていることを評価。これらの取り組みが5Gの浸透にもつながっていくことから、「さまざまな企業やスタートアップとこれからも一緒に取り組んでいきたい」と呼び掛けた。

アワードを総評したNTTドコモ・ベンチャーズの笹原氏

 エムテドの田子氏は、披露されるソリューションに“若々しさ”や“先進性”を感じる一方で、笹原氏と同様に「夢物語ではなく、今すぐにでも導入できるような実現性の高さが印象的だった」と総括した。さらに、「どのピッチも非常に充実した内容だったことから、選考は非常に悩ましかった」と加えた。

 HEART CATCHの西村氏は、それぞれのクオリティや実現性の高さに驚くとともに、「社会実装までを見据えた参加者の熱意を強く感じた」と話す。また、農業あり、防犯あり、介護ありと、そのバリエーションの豊かさにも着目。5G時代を踏まえた多彩なソリューションの登場に、5Gが社会に浸透しつつあることを実感したという。

アワード終了後にコメントを寄せた(左から)西村氏、笹原氏、田子氏

 このように今回のソリューション群はどれも完成度が高く、そう遠くない未来に社会実装されてもおかしくないものばかりだった。5Gと融合した魅力的かつ革新的なサービスがあまねく分野で提供され、社会に大きな変革をもたらすことを期待したい。

躍動する次世代コラボ「未来協創Lab」から見える明日 TOPへ戻る