特別トップインタビュー
NXPジャパン

半導体不足の混乱の中、胎動する新潮流

コロナ後に向けた布石
世界基準の独自技術で
新発想の具現化に貢献する

NXPジャパン 代表取締役社長
NXP Semiconductors 副社長

和島 正幸

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2021年、電子機器や自動車の産業は、深刻な半導体不足に直面。ユーザーはもとより、半導体メーカーも増産や部材確保に追われた。車載半導体をはじめ世界をリードするNXP Semiconductors社も同様だ。ただし、同社は直面する課題に適切に対応しながらも、明日の飛躍と進歩に備えた布石を着々と打っていた。NXPジャパン代表取締役社長の和島正幸氏にその詳細と、2022年の展望について聞いた。

改めてNXPについてご紹介ください。

和島 NXPは、Philips社の半導体部門が分社化して生まれた会社であり、2021年で創立15周年を迎えました。Philips社時代を含めれば約60年間、半導体事業を続けてきた老舗です。設立当初は、家電製品に向けた半導体に強みがありましたが、2015年にMotorola社の半導体部門を源流に持つFreescale Semiconductorと経営統合し、製品ポートフォリオが大きく拡大しました。

 現在は「オートモーティブ」「通信インフラストラクチャ」「インダストリアル&IoT」、そして「モバイル」と、成長著しい応用にフォーカスして、課題解決や価値創出に貢献する多様な半導体ソリューションを提供しています。

想定外の活況、布石も着々

2021年のビジネスの状況はいかがでしたか。

和島 2021年初頭から半導体の需要が供給を上回る状態が見えていましたが、想像していた以上の活況でした。もちろん供給増強に努めましたが、寒波による米国テキサス州オースティンにある工場の操業停止、洪水によるドイツの開発拠点での部材調達の寸断、さらにはパンデミックによる東南アジアでのお客様やサプライヤーの操業停止など、不測の事態が多発しました。

 需要側も想定を超えて伸びました。自動車向けでは、近年、1台当たりの半導体の搭載量が毎年10%以上増えていましたが、2021年は、クルマの生産台数も通常より5~10%伸び、需要が急増しました。それにも増して需要が急増したのが、パソコンやスマートフォンです。パンデミックによって世界中の人々の生活や仕事のスタイルが一変したことで、インターネット上でやり取りするデータの量も増大し、サーバーなどの需要も高まりました。

注力市場の強化や新規開拓など、戦略の実践はできましたか。

和島 フォーカスする4領域で、具体的な実績を上げられています。

 自動車の鍵認証技術で実績があるUWB(Ultra-Wideband)ICをモバイルやIoT市場にも投入しました。サムスンのスマートフォン「Galaxy Note20 Ultra」に続き、Xiaomiの「MIX4」、また新たなアプリとしてサムスンの紛失防止タグ「Galaxy SmartTag+」などで採用されています。高精度での測距・測位を可能にするこの技術は、自動車、モバイル、IoTデバイス向けに「Trimension」と呼ぶブランドで展開しており、相互作用による新たなアプリケーションや今後様々な応用が広がると期待しています。NXPはUWBのエコシステムを積極にドライブしていきます。

 オートモーティブでは、車載ネットワークのE/Eアーキテクチャがドメイン型に移行し、最終的にはゾーン型に至る過渡期にあります。NXPでは、こうした動きに対応するサービス指向型ゲートウエイ向けネットワークSoC「S32G」の量産を開始しました。次世代車の神経網の中枢に当たるチップとして、お客様が長期にわたり高いシステム・パフォーマンスを実現できるソリューションであると確信しています。

 また、OEMは、2022年から自動車のサイバーセキュリティの国際規格「UN-R155」に適合する必要が出てきます。NXPは半導体メーカーとして、同様の管理体制整備に向けた車載向けサイバーセキュリティの新規格「ISO/SAE 21434」の認証を他社に先駆けて取得し、対応製品の供給体制を整えました。

インダストリアル&IoTや通信インフラストラクチャの領域ではいかがでしょう。

和島 IoTの領域で、長年取り組んできたセキュリティに関する「EdgeLock 2GO」と呼ぶソリューションを提供できました。多様な組み込み機器がネットワークにつながると、制御用チップにも鍵や証明書情報などを搭載するセキュリティ対策が必須になってきます。ただし、鍵や証明書のセキュリティ情報だけを提供しても機能せず、ネットワークにつないだ際にアクティベート(登録と有効化)をする必要があります。また、セキュリティ情報は1~2年といった比較的短期間でアップデートしなければなりません。いずれも、クラウド側からのセキュアな管理が必須です。EdgeLock 2GOでは、クラウドから、あらゆるIoT端末に搭載されているチップの導入から運用、破棄まで一貫してセキュアに管理します。

 また、11月にエッジ・デバイスのハイボリューム・ゾーンのスマート化に貢献するi.MX 93アプリケーション・プロセッサを発表しました。本ファミリは車載&IoT両分野向けに、Arm® Cortex®-A55、M33コアに加えEthos-U65 microNPU、EdgeLockセキュア・エンクレーブを搭載し、Energy Flexアーキテクチャにより非常にエネルギー効率の高い製品となっており、車載&IoT共通の流れであるエッジAIを高効率でセキュアに実現します。

 また通信インフラストラクチャでは、2020年に米国アリゾナ州チャンドラーにあるGaNデバイスの工場が立ち上がり、量産が始まりました。2021年には、そこで作ったチップをモジュールに搭載し、5Gの基地局向けのMassive MIMO用RFパワーアンプ(PA)モジュールを開発しました。GaNを採用したことで、電力付加効率を向上させ、ワイドバンド性能も実現したものです。5Gの基地局設置はコロナ禍の中でも粛々と進んでおり、手堅い需要があります。

芽吹く顧客の構想の具現化に貢献

2022年の市場環境をどのようにみていますか。

和島 予想は難しいですが、需給バランスの乱れが大きく改善せずとも対応できるように動いていきます。依然として高い需要に対して、工場では効率的な工場運営によるスループットの向上に努め、同時に新しい生産設備やラインへの投資をしています。ただし、投資の効果は一朝一夕に出るものではなく3年程度のレンジで成果が出るとみています。このため外部への製造委託体制の強化も進めています。

最後に読者へ向けてメッセージをお願いします。

和島 2021年は、お客様をサポートしていく中で、半導体不足によって、どうしてもQCDのC(コスト)とD(デリバリー)の話が中心になってしまいました。ただし、世界中の人々の暮らしや社会のあり方が大きく変化し、新しい応用に関する要望がところどころに散見されるようになってきました。例えば、海外では、効率的なワクチン接種証明の実現に向けた取り組みなどが出てきています。

 日本のお客様でも、新しい動きが数多く生まれ、いち早く市場投入したいと考えていると思うのです。私たちが貢献できる部分も多くありますので、こうした次に向けた議論を増やしていきます。今後市場は、よりインテリジェントなスマート・デバイス化が加速すると考えられます。NXPではこのスマート・デバイスに必要とされる「SENSE / THINK / CONNECT / ACT」を可能にする製品群と、それらを安全・安心にご使用いただくための技術を提供し、明日のアプリケーションの開拓に向けたお手伝いをさせていただきたく、ぜひお声がけいただければと願っています。

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