アジャイル開発を導入しただけでは、DXは進まない。悩みを持つ企業は多いのではないだろうか。DXの本質は、組織に“ビジネスアジリティ”――俊敏さをもたらすことにある。開発、販売、マーケティングなど各部門が垣根を超え、経営層から従業員までが同じ方向を見て素早く動く。俊敏な組織への変革なくして、DXの成功は程遠い。しかし、何から着手するべきか。ゼロからメソッドをつくるのは現実的ではない。スピーディに、なおかつ着実に組織変革を実現するためには、成功したメソッドの利用が不可欠だ。生き残りを賭け、日本企業が取るべき選択肢とは? DXに向けた「組織のアジャイル化」へ、企業の支援を進めるScaled Agile社、リックソフト両社のキーパーソンが対談を通して明らかにしていく。

DX時代を生き残るためには、
俊敏な組織への変革が求められる

――グローバルと日本のDXの進捗状況の違い、日本企業の課題についてお聞かせください。

Scaled Agile, Inc.
ヴァイスプレジデント・APAC統括責任者
Rob Howard(ロブ・ハワード)氏

ロブ Scaled Agile, Inc.は世界で約2万社、「フォーチュン100」企業の70%が導入しているビジネスフレームワーク「SAFe®(Scaled Agile Framework®)」を開発し提供しています。リーンやアジャイルのプラクティスを取り込むことによりビジネスアジリティを実現するSAFeは、アジア太平洋市場において1年の成長率が70%に及んでいます。今は日本市場への普及にも力を入れているところです。

日本の経営層とお話をすると、変化が絶えず起きている状況の中、いかに競争に打ち勝つかについて話題になることが多いですね。日本では、コロナ禍に伴うテレワークの普及などによりDXが大きく進みました。重要なのは、DXは手段に過ぎないこと。真の目的は組織に対し、変化に応えるアジリティをもたらすことです。日本では、アジャイルといえばソフトウエア開発をイメージする方も多いことでしょう。グローバルではソフトウエア開発の枠を超え、業界・業種を問わず組織変革の手段としてアジャイルのメソッドを採り入れる企業が増えています。台頭するスタートアップの脅威に対抗するためには、既存企業も組織としてのアジリティを身に付けることが生き残るために欠かせないからです。

リックソフト株式会社
代表取締役
大貫 浩 氏

大貫 モノからコト(体験)へ、サービス化の流れが加速する中、ゲーム業界、製造業、金融業界などを中心に、日本でもアジャイル開発が広まってきました。多くの日本企業において、アジャイル開発が競争力を生み出す推進力になるということは共通認識だと思います。ただ、ロブさんからお話のあった「組織のアジャイル化」までは、まだ視野に入っていないのが現状との認識を持っています。

日本のIT活用に関して、グローバルレベルで5年は遅れていると言われています。リックソフトはこの10年間、豪ソフトウェア企業 アトラシアン社が提供するアジャイル開発ツールJira Softwareをはじめとする優れたツールを輸入し、日本企業に対してコンサルティング、研修も含めてアジャイル開発の導入・普及を支援してきました。その経験の中で痛感したのは、ツールを導入しただけではアジャイル開発の真価を発揮できず、DXも進まないということです。ビジネスは、サービスや製品の開発だけで終わることはありません。開発も含め、マーケティング、営業、販売管理、調達など、様々な関連部門が一体となって俊敏に動くことが重要です。これから日本企業がデジタル時代を勝ち抜くために大事なのは、アジャイルの考え方を理解し、組織を変革することです。

「組織のアジャイル化」へ、
DX先進企業がSAFeを導入する理由

ロブ ツールを導入するだけでは、根本的な課題解決につながらない。この大貫さんのご意見に同意します。世界のDX先行企業は「組織のアジャイル化」に取り組み、すでに成果をあげています。

SAFe導入企業の分野は、金融、製造、小売、ヘルスケア、ゲームなど多岐にわたります。例えばグローバル・エンタテインメント企業のソニー・インタラクティブエンタテインメントは、SAFeの導入により製品の市場投入までの時間を大幅に短縮できました。またポルシェやゼネラルモーターズなど、大手自動車メーカーは業界を取り巻くダイナミックな変化に対応すべくSAFeを導入しています。航空業界を牽引するボーイングや、デジタル化が著しい金融機関も採用するケースが増えています。変化に対応しながら価値を生み出し続ける組織体制の確立に役立てられています。

技術革新、ライフスタイルの多様化、パンデミックなど予測不可能な時代を勝ち抜くためにはビジネスアジリティが不可欠。この共通認識がグローバル企業にはあります。

大貫 ロブさんのお話で、DX先行企業がSAFeを導入している理由を再認識しました。重要な視点は、組織のアジャイル化を実現するために、自社でメソッドをゼロから作り上げるのは現実的ではないということです。すでに成功しているフレームワークを取り入れることで、スピーディに、なおかつ高い成功率で組織を変革できます。SAFeは、エンタープライズでアジャイル開発を行うためのソリューションとして捉えられることがあります。間違ってはいないのですが、SAFeによる組織変革において、アジャイル開発は構成要素の1つに過ぎません。

SAFeに関しては5年前から興味を持っていました。当時、海外のエンジニアの間で、リックソフトが取り扱う主力製品Jira SoftwareでSAFeを実装する方法について活発に意見交換が行われていました。情報収集を行う中で、私が問題意識を持っていた「アジャイルの考え方の導入」が、SAFeなら実現できると確信しました。また、アトラシアン社がSAFeに注目する中、同社におけるアジアパシフィックのパートナーとしてトップレベルに位置するリックソフトとしても、SAFeの普及に向けた取り組みの強化が必要でした。リックソフトは、2021年6月にScaled Agile社のゴールドパートナーに認定されました。

ビジネスアジリティを実現する、ビジネスフレームワークSAFeの全体像

ミッション実現へ、
組織全体で走り出すために

――SAFeによるビジネスアジリティの実現におけるポイントとは何とお考えでしょうか。

ロブ SAFeを導入することで、経営から個人まで組織全体で同じ方向を見て俊敏に動くことができるというのが重要なポイントとなります。1つの列車に経営層から従業員までが乗り込み、機能横断型のアジャイルチームが車両として編成され、時刻表に合わせて正確に運行し乗客を確実に目的地に運んでいくイメージです。これをSAFeではAgile Release Train(ART)と呼んでいます。

ARTを実行する上で重要なイベントが、次のクォーターの実施項目を決めるPI(Program Increment)プランニングです。管理者だけでなく従業員も含めて関係者が一堂に会し、ビジョンや方向性の意識合わせ、計画の具体化、課題の洗い出しや調整・解決などを行います。PIプランニングに参加することで、従業員も組織の1ピースではなく、自分も組織のために考えて価値を生み出していくという意識が強くなり、モチベーションアップや従業員満足度の向上につながります。また、意思疎通や意思決定のスピードや透明性が高くなるため、認識のズレや齟齬がなくなります。さらにリーダー、マネジメント、従業員がレガシーなマインドからアジャイル思考へと意識改革を行うための原則やプラクティスもあります。

大貫 今ご紹介のあったARTをシステム面でサポートするツールが、Jira Align(ジラ・アライン)です。Jira Alignは、ミッション、ビジョン、バリューをトップに位置付け、それらをブレイクダウンして開発、販売、マーケティングなど個々のプロジェクトに落とし込んでいくピラミッド型構造となっています。経営戦略と現場のタスクを紐づけることで、ミッション実現に向けて全社一体となって進むことが可能です。また実際にプロジェクトを進める過程では、予定通りに進まないものも出てきます。Jira Alignは、各プロジェクトの進捗情報を収集し可視化することで、経営層や管理者がプロジェクトの遅延を素早く把握しタイムリーな対応を可能にします。SAFeの実装には強いリーダーシップが必要です。別の観点からいえば、リーダーシップを発揮しやすい環境をつくれるのもSAFeなのです。

Jira Alignを使うことで、経営戦略と現場のタスクを紐づけ、全社一丸となってミッション実現に向けて進むことができる

SAFeこそが、
日本企業に最適な理由

――変化の時代を勝ち抜くために組織改革に取り組む日本企業へ、メッセージをお願いします。

ロブ SAFeは、トレーニングを通してその原則やプラクティス、コンピテンシー(行動特性)などを学び、実践に取り組んでいくアプローチです。俊敏な組織へといかに変革していくか、組織全体で学習するコンティニュアス・ラーニング・カルチャー(継続的に学習する組織)への関心が日本企業でも高まっており、意識改革に向けた流れはできつつあると感じています。

日本企業のSAFe導入をサポートするパートナーとして、リックソフトはアジャイルに精通していることに加え、Jira Alignなど実装するツールも提供できる心強い存在です。今後、リックソフトと一緒に、セミナーやイベントなどのプロモーションや啓蒙活動を一緒に行っていきたいと思います。Scaled Agile社は変化をチャンスに変えるべく、SAFeの普及を通じて、日本企業の競争力強化とともに日本産業の活性化に貢献していきます。

大貫 SAFeによる「組織のアジャイル化」は、日本企業に非常に適したメソッドといえます。アジャイルのアプローチで行う継続的改善は、「カイゼン」として日本企業に浸透しているものです。日本企業の経営層や現場の担当が、アジャイルによる組織変革を理解しマインドチェンジを行うことは簡単ではありませんが、そこを乗り越えることで大きく道が開けます。SAFeの根幹となる「組織も個人も同じ方向を見て動く」といった一体感を醸成し、日本人の強みである勤勉性を活かすことで世界のどの企業にも負けない実行力を発揮できます。

リックソフトはScaled Agile社と連携し、Jira Alignなどの提供を通じて日本企業に寄り添いながらSAFe導入をします。そしてDXを加速させ、その効果を最大化することが可能です。ビジネスアジリティを武器に、世界を牽引する存在として輝きを取り戻し、日本企業が新たな成長を遂げることを、リックソフトは全力で支援していきます。

関連リンク

Jira Align製品ページ Scaled Agile Frameworkご紹介ページ リックソフト株式会社ウェブサイト 各社の取り組み:ボーイング 各社の取り組み:ポルシェ 各社の取り組み:ゼネラルモーターズ

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