新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、製造業各社に多大で多様な影響を及ぼした。2020年3月から4月にかけて、製造拠点が集中する中国とのサプライチェーンが分断されたことにより、日本国内の工場でも部品調達が途絶えてしまい、稼働停止を余儀なくされる例が出てきた。
ただし、こうしたサプライチェーンの機能不全は、COVID-19以前にも様々な出来事によって発生していた。米中貿易摩擦による半導体の生産や流通の停滞は、その典型例だ。IMF(国際通貨基金)のクリスタリナ・ゲオルギエバ専務理事は、「不確実性は、新たな常態(ニューノーマル)となりつつある」と語っている。
これまで、サプライチェーンを構築・管理する際には、予測可能なリスクを想定して戦略を立案していた。ところが現在、予測できない不確実な事象が起こった際に、柔軟かつ迅速に対応できる仕組みの導入とその管理が求められている。セールスフォース・ドットコムの白水氏は、「これまで与えられた経営資源をより効率的に利用し、利益を最大化する『オーディナリー・ケイパビリティ』と呼ばれる企業の能力が重要視されてきました。これに対し、不確実性の高い世界では、環境や状況の激しい変化に対応して自己変革する能力『ダイナミック・ケイパビリティ』が競争力の源泉になります」と指摘する。
製造業の競争力における構成要素は、「製品力」「営業力」「供給力」の3つに整理できる。ただし、これらの力を生み出す源泉は常に「人材」だ。「ダイナミック・ケイパビリティ」を強化するためには、様々な役割を担い、それぞれの業務を遂行する人材を、状況に応じていかに適切かつ確実につなぎ、相乗効果を引き出すかが大切になる。そのための手段となるのがDXだ。
これまで日本の製造業は、海外に比べてDXの取り組みが遅れていると言われてきた。ところがCOVID-19の影響が顕在化し、「社員やサプライヤー、顧客などとの3密を避けるため、日本企業でもDXへの対応を前倒しする機運が高まっています」と白水氏は顧客動向に基づく実感から語った。
COVID-19拡大以前に経済産業省より発行された「2017年版 ものづくり白書」の調査結果にも、DXに取り組む際に解決すべき課題として「部門(部署)を超えた連携・協力の強化」が多くの製造企業から既に挙がっていた。 また、10年後の現場力に影響を及ぼす要因として、「コミュニケーション・情報共有化」や「技能継承」と答えているところが多い。ここでも人のつながりを円滑にすることの重要性が指摘されているのだ。
これまでの狭義のスマートファクトリーでは、工場の中を自動化もしくは自律化することによる効率化を目指す取り組みが進められてきた。しかし、不確実性が常態化するニューノーマルにおけるスマートファクトリーでは、「顧客、工場、従業員が三位一体となるエンゲージメントを確立し、変動を素早く捉え、迅速かつ柔軟に対応できるようにする必要があります」と白水氏は指摘する(図1)。
現在構築されているサプライチェーンの多くは、業務プロセスを標準化することで効率化を図っているため、不確実性に対応するための柔軟性に欠ける傾向がある。セールスフォース・ドットコムでは、サプライチェーン上の企業やそこで業務を担う人材の間で、「もの」や「情報」だけでなく、「業務」と「コミュニケーション」をつなげていき、コミュニケーションチェーンとAIを活用した柔軟でありながらも全体のスループットを向上させていく施策を提供している。
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