日経クロステック Special

本当は強い日本の製造業 持てる力を活かし、伸ばすDXのポイントとは?

日本を支える製造業が持続的成長を続けるために、多岐にわたる改革が求められている。データをフル活用した顧客サービスの強化や、営業・マーケティング、コールセンター業務の高度化など、どのように向き合っていけばよいのか。10月20日にオンラインで開催された「製造業DXの針路」セミナーでは、デジタルトランスフォーメーション(DX)によって、持続的成長を支える仕組みづくりの道標が示された。

積極的IT投資が1、2年後の大差を生む

初めに「名物CIOが実体験で語る、製造業DXの勘所」をテーマに、特定非営利活動法人 CIO Lounge 理事長(元・ヤンマー 取締役CIO)の矢島孝應氏が登壇。製造業のDX支援で多くのコンサルティングを手がけている矢島氏は、まず自身が日本企業において感じている問題を提起した。「コロナ禍で製造業だけでなく社会、様々な産業が影響を受け、それが企業のIT投資にも及んでいます。企業におけるIT投資は、コロナ禍以前でも積極的な企業と消極的な企業がありました。消極的な企業は、コロナ禍でも経費、管理費をITコストも含めて削減しています。数の上で、残念ながら積極的な企業に比べて多いのが現状です」と矢島氏は指摘する。IT投資に積極的な企業との間で、1、2年後に大きな差が生じるだろうと危惧している。

製造業は、どのような戦略でIT投資をすべきなのか。それは、時代の変化や経営課題の本質を理解し、ITで対応するべきかを見極め、方向付けすることだという。

「今の時代は顧客や社会、業界でつながっていくIT化が大きなトレンドになっています。正確に記録することを重視したSoR(Systems of Record)や、つながりを意識したSoE(Systems of Engagement)という言葉をよく聞きます。SoEはオープンプラットフォームの中でアプリケーションをつくり上げ、データでつないでいきます。基幹システムも社員、顧客、社会・業界と連携させていくことが重要となります」と矢島氏は話す。

さらに、文字や数字だけでなく、音声や画像などの非構造化データの管理、活用を広げていく時代であるとの考えも示した。

製造業DXの進路

オンラインセミナーでは、日経BP 総合研究所 イノベーションICTラボ所長 戸川尚樹が矢島氏の貴重な意見を聞いた

顧客満足度の一端を担うIoT

製造業では、DXを加速させるのに現在の基幹システムだけでは不十分と気づいている人は少なくない。では、企業、経営者はどのようなアプローチを取ればよいのか。

「製造業の基本は顧客目線であり、良いモノ、優れたモノを社会に提供したいという思いでなり立っています。顧客目線に自分が成りきったときに、初めて良い製品が作り出せるのです」と矢島氏は強調する。

特定非営利活動法人 CIO Lounge 理事長 矢島 孝應氏 特定非営利活動法人 CIO Lounge 理事長 矢島 孝應氏

特定非営利活動法人 CIO Lounge 理事長

矢島 孝應

1979年、松下電器産業(現パナソニック)入社。情報企画部長や三洋電機の執行役員ITシステム本部長などを歴任。アメリカ松下電器5年、松下電器系合弁会社取締役3年、三洋電機株式会社執行役員、関係会社社長3年を経験。2013年1月、ヤンマー入社。2014年4月に執行役員ビジネスシステム部長、2018年6月に取締役に就く。2020年5月退任。現在、NPO(特定非営利活動)法人「CIO Lounge」の理事長

そのうえで、矢島氏はIoT搭載製品が顧客目線の一端を担うとしている。「製造業は、企業がモノをつくり顧客へ販売します。顧客は製品を購入して自分のニーズを満たすのです。もちろんメンテナンスはありますが、製造業は販売が最後となり、顧客は購入してからがスタートと言えます。製造業はその部分の本質を十分に理解していないと思います」と矢島氏。

技術革新により、大量のデータの取得・分析・循環が可能になっている。例えば、センサーを搭載してデータを得るIoT搭載製品では、製品の使用時間や使用実態が把握できるようになり、定期点検のようなタイムベースメンテナンスから、製品の状態によってメンテナンスするコンディションベースの点検が可能になる。IoT搭載製品は、顧客満足度の向上につなげられる1つのアプローチと言えるだろう。

また、営業部門とアフターサービス部門でデータベースを共有させることもデータ活用への重要なアプローチだという。「システムとは別に、情報が共有されていないためDXの一歩を踏み出せない企業は多いです」と矢島氏は指摘する。

製造業のDX加速には、経営者、事業部門、情報システム部門の三位一体の取り組みが重要だという。内製化やクラウドシフト、サプライチェーンの最適化など経営課題の解決に向け、様々なツールや技術にトライすることも有効となる。「セキュリティやネットワーク、クラウドを含めたサーバーの管理は企業として、しっかり押さえるべきことです。しかし、それは専門の情報システム部門に任せて、事業部門などは積極的にデジタルツールを身近に取り込むべきです」と矢島氏は訴えた。

競争力の維持に必須の仕組みづくりとは?

続いて登壇したのは、日本の製造業の強みと弱みを分析した視点から、DX加速へのヒントを提示したセールスフォース・ドットコムの鹿内健太郎氏だ。

鹿内氏はまず、グローバルな競争力で日本の製造業の立ち位置を解説。労働生産性において、G7の中で日本は2番目に位置しており、機械・輸送機器の付加価値は、2000年から2016年までに14%増加しているという。また、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツとの比較で1人あたりの労働生産性については、アメリカとは一定の差があるがそのほかには競争優位性が保たれていることを示した。「日本の製造業はしっかりと成長もしていて、ほかの国と比べても競争力は保てています」と鹿内氏は指摘する。

ただし、製造業の労働人口は2009年をピークに減少傾向を続けており、製造業の労働生産性は優秀な人材、勤勉な人が努力した結果という現実があり、鹿内氏は「今後、競争優位性の維持には、企業や組織、仕組みとしての対応が必要になります」とも指摘した。

株式会社セールスフォース・ドットコム インダストリーズトランスフォーメーション事業本部 製造・ハイテク業界担当マネージャー 鹿内 健太郎氏 株式会社セールスフォース・ドットコム インダストリーズトランスフォーメーション事業本部 製造・ハイテク業界担当マネージャー 鹿内 健太郎氏

株式会社セールスフォース・ドットコム

インダストリーズトランスフォーメーション事業本部

製造・ハイテク業界担当マネージャー

鹿内 健太郎

総合系コンサルティング会社、外資系ソフトウェア会社を経て株式会社セールフォース・ドットコム入社。多国籍企業における戦略立案・業務改革プロジェクト経験を活かし、国内製造業のデジタルトランスフォーメーション推進活動に従事

そのうえで、矢島氏はIoT搭載製品が顧客目線の一端を担うとしている。「製造業は、企業がモノをつくり顧客へ販売します。顧客は製品を購入して自分のニーズを満たすのです。もちろんメンテナンスはありますが、製造業は販売が最後となり、顧客は購入してからがスタートと言えます。製造業はその部分の本質を十分に理解していないと思います」と矢島氏。

技術革新により、大量のデータの取得・分析・循環が可能になっている。例えば、センサーを搭載してデータを得るIoT搭載製品では、製品の使用時間や使用実態が把握できるようになり、定期点検のようなタイムベースメンテナンスから、製品の状態によってメンテナンスするコンディションベースの点検が可能になる。IoT搭載製品は、顧客満足度の向上につなげられる1つのアプローチと言えるだろう。

また、営業部門とアフターサービス部門でデータベースを共有させることもデータ活用への重要なアプローチだという。「システムとは別に、情報が共有されていないためDXの一歩を踏み出せない企業は多いです」と矢島氏は指摘する。

製造業のDX加速には、経営者、事業部門、情報システム部門の三位一体の取り組みが重要だという。内製化やクラウドシフト、サプライチェーンの最適化など経営課題の解決に向け、様々なツールや技術にトライすることも有効となる。「セキュリティやネットワーク、クラウドを含めたサーバーの管理は企業として、しっかり押さえるべきことです。しかし、それは専門の情報システム部門に任せて、事業部門などは積極的にデジタルツールを身近に取り込むべきです」と矢島氏は訴えた。

データ整備の遅れがDX推進の壁

では、日本と海外でDXの推進状況にどの程度違いがあるのだろうか。鹿内氏によると、アメリカ、ドイツ、日本の3カ国におけるヒアリングベースの調査で、デジタルは有望な機会と考えている企業の割合に大きな差はない。しかし、デジタル推進の準備ができている企業の割合になると、アメリカの約80%、ドイツ約の70%に対して、日本は約30%にとどまるという。

「先進企業は1990年代後半のDigitization(大量の情報を部門間共有)から、2000年代のDigitalization(業務の自動化・省力化)を完了させたうえで、DXを推進しています。日本企業は、DigitizationからDigitalizationに乗り遅れた印象があります」と鹿内氏。その結果として、企業内におけるデータの点在の問題があるという。

基幹システムは、点在しているデータを1つのIDで紐づけして統合させるところにメリットがある。しかし、日本企業の多くはIDが部門ごとにたくさん存在して、情報が連携されていない。地道なデータ整備に遅れているため次のステップに進めないでいるという。「製造業もデータ整備は当然理解して進めていますが、足並みは揃っていないのが現状です」と鹿内氏は話す。

「稼ぐ力」に直結する顧客接点の強化

この現状を打破するためには、どんなことに注力すべきなのか。鹿内氏は企業の「稼ぐ力」を筆頭に挙げる。この「稼ぐ力」を構成する要素として、価格や品質、ブランド、納期、サービスなどフロントエンドの競争力が重要となる。さらに、フロントエンドを鍛えるには、生産や開発のリードタイム、品質歩留まり、工程内不良率などの生産管理能力となるバックエンド競争力がものを言う。そして、モノづくりの組織能力の高さがバックエンド競争力となる。「日本の強みは、バックエンド競争力と組織能力です。製造業はもっと稼ぐ力とフロントエンド競争力を強化することが大事なのです」と鹿内氏は力説する。

DXは業務の自動化よりも、データやデジタル技術を活用して、製品や顧客サービスを転換することである。そのために、製造業では販売・マーケティング、アフターサービスといった顧客接点の強化が求められる。「そこに注力している企業はまだ多くありません。しかし、顧客接点への注力は差別化につながる重要な鍵となります」と鹿内氏は指摘する。

この顧客接点を通じてこそ、競争力の源泉となる情報資産が生まれてくる。そのため、営業担当やサービス保守員が顧客とのコミュニケーションから得る情報を連携させることが大切となる。「顧客からの情報を1つのデータベースに集約して社内で共有すれば、製品開発にも役立てることができます」と鹿内氏も情報共有の重要性を説いた。

最後に、鹿内氏は「新しいCRMは、営業のためとか、コールセンターのためとかではなく、情報を共有することで仕事の生産性をより向上させ、顧客体験を向上させるための共通システムだとイメージすることが重要となります」と強調した。

「もの」や「情報」だけでなく、コミュニケーションをつなく

セールスフォース・ドットコムが実現するコミュニケーション・チェーン

お問い合わせ

株式会社セールスフォース・ドットコム

https://www.salesforce.com/jp/