日経クロステック Special

現世代と次世代を育てるデジタルリテラシー教育を DX人材の育成が勝てる日本企業の礎となる

コロナ禍における行政サービスの混乱などで、デジタル化の遅れを露呈した日本。“デジタル”という道具はあっても、使いこなせる人材が足りないことが根本的な問題だ。デジタル人材育成の必要性について、企業の教育研修やHRテックの導入を支援するキャプランの石田正則代表取締役社長と、ServiceNow Japanの村瀬将思執行役員社長、松平知永エデュケーションサービス部 部長が語り合った。

現世代が“自分事”として
デジタル化に取り組むことが大切

石田 氏
キャプラン株式会社
代表取締役社長
石田正則
1989年パソナに入社。専門職・デジタル人材の育成など新領域の事業拡大に従事。取締役専務執行役員を経て、2018 年キャプラン代表取締役社長に就任。教育研修事業や HR テック導入支援事業を通じ、新しい働き方、人材の成長を支援。

村瀬:石田社長と日本のDX人材の育成に関するお話ができるのを楽しみにしておりました。本日はよろしくお願いします。

石田:こちらこそ、村瀬社長や松平さんと日本のDX人材の未来について、意見交換できればと思っております。よろしくお願いします。

村瀬:まず、今の日本の現状についてですが、新型コロナウイルス感染症への対応は、各国政府の行政サービスにおけるデジタル化の進展度合いの差を浮き彫りにしてしまいました。

 給付金申請を巡る混乱、接触確認アプリ「COCOA」の不具合による通知機能停止など、日本の行政サービスの混乱ぶりを見て、平井卓也デジタル改革担当大臣は「日本は“デジタル敗戦国”になってしまった」と発言しています。

 一方、経済産業省が2020年12月に発表した「DXレポート2」の中間取りまとめでは、日本企業の95%がDXにまったく取り組んでいないか、ようやくより組み始めた段階であり、民間においてもデジタル化の遅れに対する危機感の共有が進んでいないことが明らかになっています。

村瀬 氏
ServiceNow Japan合同会社
執行役員社長
村瀬将思
1993年TKC入社、2000年iGATE Global Solutions Limited入社、09年日本HPにHPSW、PS事業本部本部長として入社。12年itSMF Japan理事に就任。14年日本HPのHPSW事業統括執行役員に就任。16年1月より現職。

 こうしたデジタル化の遅れや、問題意識の欠如は、そもそもデジタルリテラシーを持った人材が不足していることに原因があるのではないでしょうか?

松平:一人の国民として痛感したことなのですが、子供を持つ親の立場として、日本の教育現場がほとんどデジタル化されていないことに危機感を覚えました。このままでは次世代を担う日本の子供たちが、世界におけるデジタル化の潮流から取り残され、未来の可能性を奪われることになってしまいます。

石田:そうですね。環境問題と同じで、次世代に課題解決を押し付けるのではなく、われわれ現世代が“自分事”としてデジタルリテラシーを高め、子供や未来のためにデジタル化を推進していかなければならないと思います。

部分最適化された教育研修が
DXを妨げる大きな要因に

村瀬:企業のCXO(執行責任役職)の方々と話をすると、皆さん口をそろえて「DXを成功させられるかどうかは、人に尽きる」とおっしゃっています。人材育成の大切さは、強く実感していらっしゃるのでしょうね。

石田:まったく同感です。キャプランでは、パソナグループの一員として企業のHRテック導入運用支援や教育研修などのサービスを提供していますが、教育研修では、近年DXのプログラムやリスキリングのためのマインドセット研修などを充実させています。

 デジタル化を推進するには、相応の知識や経験を持った人材が必要ですが、現実には著しく不足しています。それに対応して、社員のデジタルリテラシーを高める教育を提供してほしいというニーズが高まっているのです。

松平 氏
ServiceNow Japan合同会社
エデュケーションサービス部 部長
松平知永
2019 年 5 月より現職。ServiceNowに入社する以前は、十数年にわたり日本の外資系ベンダー企業で教育ビジネスの初期展開から拡大に携わる。「日本でのDX 促進およびビジネス成功のためには教育が必要不可欠」という信念の下、人材育成に取り組んできた。

松平:実際のビジネスでは、どのようなDX人材が求められているのでしょうか?

石田:例えばサービス分野においては、サービス自体の提供だけでなく、そこに至るまでのプロセスでどれだけ顧客に感動を与えられるか、ということが重要になっています。

 これを実現するには、プロセスの「デザイン・設計」「開発・設定」「運用」「サポート・メンテナンス」という4つの領域で、それぞれのスキルや専門性を持った人材が分業しながら、全体最適化を図っていくことが必要です。これまでのような何でも屋(総合職)ではなく、その人にしかできない仕事のスキルを身に付けた人材が求められているのです。

村瀬:DX人材を育成する上で、日本企業はどんな課題を抱えているのでしょうか?

石田:領域ごとのスキルを高めることは大切なのですが、教育プログラムが部分最適化されてしまい、会社全体やプロセス全体として最適化されないことが大きな課題の一つですね。

 また、研修による効果の判定と、現場における業務の評価がうまくマッチしていないこと。つまり、会社サイドが提供する研修、育成内容と日常業務を担う現場が求める内容でズレが生じていることも問題です。研修によって磨いたスキルが業務に生かされ、それが人事評価につながるという好循環が形成されるのが望ましいと言えます。