日経クロステック Special

日経クロステック Special Webセミナー Technology Foresight 2021 ポスト・コロナを見据えた製造業の進路を描く 社内人材の潜在能力を俯瞰し、適切な人材マネジメントを実践

社内人材の潜在能力を俯瞰し、適切な人材マネジメントを実践

ものづくり企業でDX(デジタルトランスフォーメーション)の先導役となる方々を招き、ポスト・コロナ時代の的確なDX戦略策定に向けて議論する日経クロステック Special Webセミナー「Technology Foresight 2021~ポスト・コロナを見据えた製造業の進路を描く~」が開催された。6月8日には、人事・労務の業務効率化と、働くすべての人々の生産性向上を支える、クラウド人事労務ソフトを提供するSmartHR セールスグループ 執行役員 中尾友樹氏と、グループ企業での人事・労務業務のDXを他社に先駆けて推し進める日揮ホールディングス 常務執行役員CDO(最高デジタル責任者)花田琢也氏が登壇。「DX成功のカギ握る人材マネジメントに必要なシステム基盤とは」と題して人事労務部門の理想的なシステム像について議論した。(モデレーター:日経BP総合研究所 上席研究員 木村知史)
中尾氏
株式会社SmartHR
セールスグループ
執行役員
中尾 友樹
寺下氏
日揮ホールディングス株式会社
常務執行役員CDO
(最高デジタル責任者)
花田 琢也

人事・労務の役割は、人材の潜在能力の解放

木村 DX成功の鍵は、適切な人材配置にあると言われています。それを実践する人事・労務部門の重要性が極めて高いことは明らかです。では具体的に、DXに取り組む際に人事・労務部門が果たすべき役割は何だと思われますか。

花田 世界を舞台に産業プラントを造る日揮グループでは、プラントを構成する部品を作る工場を持っているわけでも、大きな研究開発部門を持っているわけでもありません。付加価値の源泉は、求められるプラントを構想して、カタチにしていく人材に帰着すると考えています。DXに取り組む際には、この点に留意することが重要です。具体的には、人材の能力を可視化し、適材適所に配置して働きやすい環境を整え、各個人が持っている潜在能力を最大限まで引き出すことができるDXを目指すことこそが、人事・労務部門が担うべき役割です。付加価値の高いビジネスに向けたDXを実践する上で、こうした人材マネジメントを支援する仕組みの重要性は極めて高いと言えます。

木村 人材マネジメントは、人事・労務部門でどの程度浸透しているのでしょうか。

中尾 私たちは多くの企業のとくに経営に携わっているお客様を支援しています。そうした支援を行う中で、人材マネジメントが注目を集める取り組みになってきていることを感じています。ある人事領域の調査機関によると、調査対象となった企業の約7割が人材マネジメントという概念を認知し、約6割が重要な課題だと、捉えているようです。さらに、人材不足を課題視する企業が多く、とくに技術職の不足に危機感を感じているようです。

花田 技術職の中でも、デジタル系の人材が不足している実感があります。技術職の業務の効率化や高付加価値化はDXの重要な注力ポイントになり、DXを実践する際にもデジタル系の人材の能力を引き出せる環境が欠かせません。

人材マネジメントを阻む3大疾病

木村 人材マネジメントを実践する際には、どのような障壁があるのでしょうか。

花田 端的に言えば、人事・労務は非常に忙しい部門です。グループ企業の再編や人事制度改革、グローバル化への対応、最近ではリモートワークなど、対応すべきことがたくさんあります。システム化による負荷低減を目指すのですが、システム化の取り組み自体が激務を加速しているのが現状です。現場と足並みをそろえて、システム化の取り組みを支える外部の力が必要です。

中尾 確かに、人事・労務部門の方々は常に忙しく、人事制度の改革に取り組む余裕がないようです。とくに労務には、社会保障関連のように、法令によって期限が定められているものや、手作業を余儀なくされる業務が多く残っているため、戦略的業務にまで手が回らない状態に見えます。マーケティングリサーチ企業の調査によると、労務管理システムの導入によって定常業務を効率化できた企業は、導入していない企業よりも、戦略人事が成功していると実感している企業の割合が2.8倍高いそうです。システム導入による、戦略人事に取り組む余裕づくりが極めて重要になっています。

花田 日揮グループでも、部署や地域ごとの個別データを個々にエクセルに記し、バケツリレー式で受け渡すことによる非効率が問題になっています。

中尾 私たちのお客様でも、部署ごとの業務では合理的管理ができていても、部署間で連携させるところで課題が顕在化している例が多くあります。データは連携してこそ価値を生みますから、深刻な課題です。Zホールディングスの伊藤羊一氏は、効果的な人材マネジメントを阻む要因を、縦割り業務による「ばらばら病」、手入力管理による「ぐちゃぐちゃ病」、データ取得が継続せず非連続な「まちまち病」という3大疾病として整理しています(図1)。その治癒が、人事・労務部門でのDXを進める上での重要なキーワードになります。

花田 データには、人事・労務部門が必要に応じて取りに行くデータと、従業員が自分のデータとして入力・管理するデータがあります。3大疾病を治すためには、双方を上手に管理することが大切だと感じます。

人事データの3大疾病 その①
人事データの3大疾病 その②
人事データの3大疾病 その③
出典:SmartHR ガイド「ヤフーが1年がかりで奮闘した『人事データの三大疾病』」より。
https://mag.smarthr.jp/guide/information/detail/hrcon2019_03/
図1 人事データの3大疾病
現時点で、人事関連のデータは、人材マネジメントの実践を阻む3大疾病を抱えている。人事・労務部門のDXを推し進める過程で、こうした3大疾病を治し、人事データを効率的に活用できる状態にすることは、効果的な人材マネジメントを実践する上での第一歩となる