日経クロステック

現場で急速に高まる遠隔処理のニーズすぐそこまで来ている“5G×MR”の世界

現場で急速に高まる遠隔処理のニーズすぐそこまで来ている“5G×MR”の世界

現場で急速に高まる遠隔処理のニーズすぐそこまで来ている“5G×MR”の世界

さまざまなシーンで活用事例が増えてきた5G。超高速・大容量・多数同時接続・低遅延を特徴とする次世代移動通信システムが社会にもたらすインパクトは計り知れない。ソフトバンクとマイクロソフトは“ネットワーク×クラウド”の強固な連携により、産業界のデジタル変革に向けて動き始めた。その象徴的な事例として5GとMR(Mixed Reality:複合現実)デバイスの「HoloLens 2」、そして「Microsoft Azure」が融合した世界観を紹介する。

プライベート5Gが現場における“人の代替”を支援

Withコロナにおける働き方はすっかりテレワークに置き換わった。「Microsoft Teams」に代表されるオンライン会議システムが普及し、ビデオ通話、チャット、音声通話、ファイル共有などを実現するコラボレーションツールとして必要不可欠な存在となったのは周知のとおりだ。

一方でオフィスワーカー同様、製造や建設、インフラ業界といった“現場”でも離れた場所から作業したいとの需要がある。背景には、感染症対策による出社・出張制限に加え、以前から顕在化している人手不足の課題がある。こうした課題をデジタル化によって解決すべく、新型コロナウイルス感染症の拡大を機にDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進しようとする動きがオンサイトで一気に加速し始めた。

ソフトバンク株式会社
法人プロダクト&事業戦略本部
プロダクト&事業戦略本部
デジタルオートメーション第2統括部
法人5G推進室 パートナー企画課 課長
藤田 敬史 氏

オンラインとのシナジーが必須となるDX戦略において、まず見直すべきはネットワークである。しかも敷設工事が複雑な固定回線や環境に依存しやすいWi-Fiよりも、セキュアで高品質な5Gが注目を集めている。ソフトバンクでは、新型コロナウイルス前の段階から現場のニーズに着目し、5Gの拡大に併せて5Gソリューションの開発に努めてきた。ソフトバンク 法人プロダクト&事業戦略本部で法人向け5Gサービスの推進を担当する藤田敬史氏は、現状をこう語る。

「作業の指示、機器の監視や操作などが避けられないOT(Operational Technology:オペレーショナルテクノロジー)分野では、混信なく信頼度の高いデータを送受信できる5Gが期待されています。そのため、ソフトバンクに“活用しやすいネットワーク”を整備してほしいとの相談が非常に増えています」(藤田氏)

5Gの特徴である超高速・大容量・多数同時接続・低遅延により、今後は場所を問わずに安定した通信が可能となる。IoTが浸透し、テレメトリー(遠隔情報収集)の重要性が増すことを考えても5Gのアドバンテージは大きい。

現場の制御トラフィックが増す要因としては、ツールのリッチ化が挙げられる。Microsoft Teamsのようにマルチコンテンツを扱うツールが一般化し、昨今ではAR(拡張現実)やVR(仮想現実)を実装したシミュレーションツールも台頭してきた。5Gには、これらのリッチコンテンツを効率的に伝送できるポテンシャルがある。

「機器のトラブルが発生した場合、従来は熟練した作業員が対処していました。しかし製造業などでは熟練した作業員が年々少なくなり、OJTもままならない状態が続いています。そこにコロナ下での制限が追い打ちをかけ、著しく生産性が低下するケースが散見されます。それらを解決する手段として最新テクノロジーによって遠隔から制御する“人の代替”が切実に求められているのです」(藤田氏)

最新テクノロジーを具現化するものとして、ソフトバンクでは「プライベート5G」の開発に取り組んでいる。「プライベート5G」とは、ソフトバンクが全国に順次展開中であるパブリック5Gと、企業や自治体が個別に構築するローカル5Gとの中間的な概念で、2022年度の提供開始を目指す。

「例えばスマートファクトリーの実現ではローカル5Gが有力視されていますが、企業や自治体が無線局の免許を取得せねばならず、運用の負担も大きい側面があります。「プライベート5G」はソフトバンクの周波数帯を利用して、お客さまの敷地内に必要な帯域・容量の5Gネットワークを提供するマネージドサービスです。これにより、手間やコストをかけずに5G環境を構築できるのが最大のメリットです」(藤田氏)

「プライベート5G」は、ソフトバンクの無線電波を使うことで、
まるで「ローカル5G」のように敷地内で5Gを活用することができる。

5GとMicrosoft Azureの蜜月が
“MRの産業利用”を現実のものに

産業用途における5Gの効果を最大化するため、ソフトバンクはマイクロソフトと連携。戦略的なクラウドパートナーシップに基づき、新たな価値創造に着手した。

MRデバイスの「HoloLens 2」を活用するユースケースは、その最先端事例となる。日本マイクロソフト Mixed Realityマーケティング プロダクトマーケティングマネージャーの上田欣典氏は「HoloLens 2」の特徴をこのように説明する。

「HoloLens 2はARとVRを包含するMRを実現するデバイスで、リアルな空間上にあたかもオブジェクトがあるように3Dデジタル情報を鮮明に表示できます。デバイスそのものがWindows 10を搭載したコンピュータであり、頭部に装着して使用します」(上田氏)

日本マイクロソフト株式会社
Mixed Realityマーケティング
プロダクトマーケティングマネージャー
上田 欣典 氏

ただし「HoloLens 2」はあくまでエッジデバイスであり、3Dの高度な処理はMicrosoft Azureで実施する。マイクロソフトはこのMRの仕組みを「スマートフォンやモバイルデバイスに続く次世代のコンピューティングプラットフォーム」(上田氏)と位置づけ、法人用途に注力している。ソフトバンクとの取り組みではエッジ/クラウド間の伝送路として5Gを採用し、オンサイトでの普及を図る。

上田氏によれば、コロナ下により製造、建築、医療、小売、教育などでのニーズが急増したという。「すでに効果が実証された例としては、熟練技術者の技術を伝承するトレーニング、移動制限を解決する遠隔支援、3Dによる遠隔ミーティングなどがあります」(上田氏)。そこで現場で即座に使用できるアプリケーションとして「Microsoft Dynamics 365 Guides」「Microsoft Dynamics 365 Remote Assist」「Azure Remote Rendering」を提供済みだ。具体的には、以下の機能を備える。

Microsoft Dynamics 365 Guides

実空間上に3Dでバーチャル表示するデジタルマニュアル。紙やノートPC/タブレットを必要とせず、ハンズフリーで作業工程や製造工程を学習できる。

Microsoft Dynamics 365 Remote Assist

遠隔から指示を出して、共同作業によってリアルタイムで問題解決を図るアプリケーション。Microsoft Teams と統合してコミュニケーションできるのがポイントだ。Microsoft Dynamics 365 Guidesで単独解決できないケースで活用し、専門家がリモートでサポートにあたる。

Azure Remote Rendering

3D CADやBIMといった膨大なデータ量の設計データをMicrosoft Azureでリアルタイムレンダリングし、HoloLens 2にストリーミング表示して編集と共有が可能。5Gを用いることで3Dのポリゴン数を減らすことなく表示し、遠隔地にいても高精細な3Dイメージのレビューができる。

大阪市南港にある「5G X LAB OSAKA(5Gクロスラボ・オオサカ)」では、この3つの先鋭的なアプリケーションに5Gを組み合わせたソリューションを実体験できる。5G X LAB OSAKAは、2020年10月にソフトバンクが大阪市らと開設した、5Gによる製品・技術開発支援を目的とするオープンラボだ。

藤田氏とともにソフトバンクの法人5G推進室に所属する角田圭佑氏は、5G X LAB OSAKAの運営や展示を担当。それぞれの展示内容について次のように語る。

ソフトバンク株式会社
プロダクト&事業戦略本部
デジタルオートメーション第2統括部
法人5G推進室 パートナー企画課
角田 圭佑 氏

「Microsoft Dynamics 365 Guidesでは製品の外観検査時のトラブルを想定し、不慣れなスタッフでもフローに従ってトラブルシューティングができるようにしました。Microsoft Dynamics 365 Remote Assistでは、操作が煩雑なAI搭載の外観検査用ロボットの起動・終了ステップに活用。ポケットに5Gスマホを入れて遠隔地の専門家と接続し、初めて触る5G X LAB OSAKAのスタッフでも難なく操作が可能です。先日訪れて頂いた、あるメーカーのご担当者の方は、両アプリケーションの組み合わせで海外工場のオペレーションを支援したいと話されていました。コロナ下で現地に足を運べないのがその大きな理由です。

Azure Remote Renderingでは、非常に大規模なBIMデータをストリーミング表示しています。大型ビルが建設できるほどの精密なデータで、4Gだと不自然な動きになってしまいます。しかし5Gではまったく遜色なく表示されるため、見学したお客さまからは多くの驚きの声をいただいています」(角田氏)

2021年8月には大阪市内の歯科クリニックと東京のソフトバンク本社を結び、5G×HoloLens 2による歯科領域の遠隔手術支援を実施。角田氏は「大阪の若手歯科医を東京の指導医が支援し、施術のハードルが高いインプラント手術を遠隔地から淀みなくサポートできることが実証されました」と振り返る。

ソフトバンクとマイクロソフトが見据える産業変革

Microsoft Dynamics 365 Guidesはトヨタ自動車やサントリー、Microsoft Dynamics 365 Remote Assistはメルセデス・ベンツやロレアルが導入済みで、ここで紹介したソリューションはもはや夢物語ではない。米国では2021年3月、MR上のコラボレーションプラットフォーム「Microsoft Mesh」を発表しており、「HoloLens 2」を装着しながらの共同作業は現実のものとなりつつある。

藤田氏は「これまで電話で出していた現場への指示が、リアルな3D表示で可視化されるのが利点。作業現場によってはケガのリスクを伴う場所もあり、行き違いによるトラブルや事故を防ぐ意味でも、まさに未来のソリューションと言えるでしょう」と話す。

マイクロソフトコーポレーション
パートナー事業本部
戦略パートナー本部 部長
香坂 聡 氏

マイクロソフトコーポレーション パートナー事業本部の香坂聡氏は「5Gが産業構造に新たな変革をもたらすことは、マイクロソフトとしてもグローバルで注目しているポイント。ソフトバンクとの取り組みでは、5Gを含めたネットワークとMicrosoft Azureをいかに融合して魅力的なサービスを提供できるかをゴールに進めています」と両社の展望を語った。

5G、MR、Microsoft Azure、それぞれの要素技術が成熟したこのタイミングは、人びとの行動様式と社会構造が変化する絶好機でもある。現在、ソフトバンクは積極的に産業界で5GのPoC(概念実証)を進めている。ここで蒔かれた種が芽吹く日は、そう遠くはないだろう。

 
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