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5G×VR×Microsoft Azureで人材育成の未来を切りひらく「VR遠隔支援」のポテンシャルに迫る

5G×VR×Microsoft Azureで人材育成の未来を切りひらく「VR遠隔支援」のポテンシャルに迫る

5G×VR×Microsoft Azureで人材育成の未来を切りひらく「VR遠隔支援」のポテンシャルに迫る

この秋、ソフトバンクが新たなサービスを発表した。エンタープライズ系XRの開発実績が豊富な株式会社ポケット・クエリーズ(本社:東京都新宿区、代表取締役社長:佐々木宣彦、以下「ポケット・クエリーズ」)との協業による「VR遠隔支援」だ。コロナ禍への対応や人材不足などを背景に、数多くの企業が抱える人材教育の課題を解決するこのサービスの特長や開発のポイントについて両社の担当者に話を聞いた。

VRを活用した遠隔集合研修と遠隔作業支援が行える、
これまでなかったソリューション

 少子高齢化により人手不足が深刻化している中、いかに効率よく確実に技能継承や人材育成を行うかは、多くの企業にとって喫緊の課題だ。しかも現在、コロナ禍で集合研修や現場での教育を実施することが難しくなっているから厄介である。課題に対する深刻さは増していく一方だ。

 そのような状況を表すように、今回、話を聞いたソフトバンク株式会社 法人プロダクト&事業戦略本部の千田健太氏のもとにも、新型コロナウイルスの感染が拡大した2020年の春以降「教育係が製造現場に出向けないので、遠隔でどうにかできないか?」という声が様々な企業から寄せられたという。

 そして、そのような声に応えるべく2021年秋にソフトバンクが発表したサービスが「VR遠隔支援」である。XR技術を用いたシステム開発を強みとするポケット・クエリーズとの協業から生まれたサービスの概要について、千田氏は次のように説明する。

「当社のネットワークと、ポケット・クエリーズのXR技術を活用して、遠隔地でも現場さながらの研修や作業支援を受けられるサービスです。具体的にはVRの教材を作成し、それを配信することで遠隔での集合研修を実現する『トレーニングモード』と工場などの現場に設置した360°カメラの映像を遠隔地にいる支援者が確認し、現場に指示を出すことで作業支援を行う『リアルタイムモード』の2つの機能を備えています。アプリケーションとクラウド環境、通信ネットワークをソフトバンクが一括して提供するため、お客さまは360°カメラとVRデバイスやタブレットがあれば、すぐにサービスを利用できるのが特長です」

ソフトバンク株式会社
法人プロダクト&事業戦略本部
デジタルオートメーション事業第2統括部
法人5G推進室 サービス企画課
千田 健太 氏

 教育係と対面せずに行う研修・教育といえばeラーニングが思い浮かぶが、スキルを修得するには、実際に体験しないと難しいケースが少なくない。その点、「VR遠隔支援」の「トレーニングモード」であれば、臨場感あるVR空間の中で現場さながらの体験をしながら、スキルやノウハウが体得できる。なお、VR教材の作成が簡単なのも特長の1つ。360°カメラで撮影した映像だけでなく、スマートフォンで撮影した動画や画像を組み合わせて編集することもでき、初めての利用でも1~2日で作成可能だという。

 

遠隔でもVR空間でトレーニングを体験できるため、最短距離でスキルを習得することができる

「リアルタイムモード」では、遠隔地にいる支援者が、VR空間に入ってまるでその場にいるかのように現場の作業や状況を把握できる。例えば、熟練作業者が支援者を務め、その都度作業を指示したり、問題点を指摘すれば経験に乏しい作業者でも適切な作業を行える。なお、VR空間には一度に10名まで入れるため、多様な視点から現場の状況をチェックすることも可能だという。

複数人がVR空間に同時に入り、まるで同じ場にいるかのように指導を行うことが可能

制約のあるロケーションの中でも、
VRで適切な作業支援を実現

 実際の活用方法について、ポケット・クエリーズの佐々木宣彦氏は次のように説明する。 「コロナ禍で、人を集め難いケースだけでなく、物理的に人が行き難い場所での利用も想定されます。例えば、水力発電の水路は定期的に水を止めて、ひび割れなどがないか検査を行います。その技術やスキルを学ぶため、検査時に若手社員数十人が遠い現場まで出向き一緒に水路に入るということをしていたのですが、その必要がなくなりました。また他の事例ですが、天井裏の配管などスペース的に複数の人が入れない場所や、クリーンルームなど一度に入場できる人数を制限している場所での研修や作業支援にも力を発揮します」

株式会社ポケット・クエリーズ
代表取締役社長
佐々木 宣彦 氏

 さらに「通信キャリアである我々の強みを生かし、閉域環境で利用できる点も大きな特長」と千田氏が語る通り、オプションで通信環境を閉域ネットワークにすることができるのはありがたい。このオプションのおかげで、機密情報を扱う業種でも安心してサービスを利用できる。

 現在、インフラ業界や製造工場、建設現場からのニーズが高い「VR遠隔支援」だが、その他にも、システム管理業務の現場など、活用できるシーンは幅広い。また、現在はコロナ禍で「現場に行けない」「人を集めることができない」という悩みを抱えている企業が多いが、コロナが収束したとしても、場所を選ばずに効率的な研修が実現できるこのサービスのニーズが減ることはなさそうだ。

インフラ業界から建築現場まで、幅広い現場からのニーズが高い

「これまでも現場の360°画像が閲覧できるようなサービスはありましたが、VR空間に入り込んで集合研修や業務支援ができるものは稀でした。その点で『VR遠隔支援』は、実用に耐えうるVRソリューションとして価値を提供できるものだと自負しています」(佐々木氏)

サービスの土台を担うMicrosoft Azure採用の狙いとは?

「VR遠隔支援」の開発のポイントについて、ポケット・クエリーズの千葉和幸氏は「元々、当社で開発していたVRの作業支援ソリューションは、クラウドには対応していませんでした。そこで、今回マルチテナント化するにあたり、24時間365日の運用を前提にした設計に変更しました。併せて、ユーザ数が増えてもシステムが耐えられるよう、拡張性、セキュリティなどの運用面も意識して開発を行いました」と振り返る。

株式会社ポケット・クエリーズ
取締役 CTO
千葉 和幸 氏

 一方、ソフトバンク テクノロジーユニットサービス企画技術本部の藤野駿氏は次のように説明する。

「ユーザ増加時には映像配信用のサーバなどを増設して、柔軟にシステム拡張ができるような構成になっています。クラウドプラットフォームには、セキュリティに関して高いSLA(サービス品質保証)を誇るMicrosoft Azureを採用しました。また、閉域ネットワークと組み合わせてお客さまにご利用いただくことで、よりセキュアな通信を提供できるようにしています。開発にあたっては、Microsoft Azureの導入や運用をトータルで提供するMSPサービスを展開している当社が培った知見が生かされているのは言うまでもありません」

ソフトバンク株式会社
テクノロジーユニットサービス企画技術本部
Service Design統括部
サービスデザイン第1部イノベーションサービス課
藤野 駿 氏

 さらに千葉氏は「Microsoft Azureのさまざまな機能を活用することで、システムを作りこむ必要がなくなり、開発の手間を大幅に減らすことができたと思います」と開発面でもMicrosoft Azureの恩恵を受けたことを強調。いずれにせよ、システムの安定性も、セキュリティ性も十分な配慮がされており、ユーザは安心してサービスを利用できるということだ。

「まずはお客さまからの様々なニーズを汲み上げて、より使いやすくなるよう、継続してアップデートを行っていきます。そのために必要な技術の創出をポケット・クエリーズには期待しています」(千田氏)

「『VR遠隔支援』には、いろいろな可能性がありますが、細かい改良や機能の追加は積極的に行い、規模や業種に関わらず多様なお客さまが手軽に利用できるようにしていきたいと考えています。そのためにも、お客さまの意見に勝るものはありませんので、良い点も悪い点も含めて、さまざまなお声をいただきたいですね」(佐々木氏)

 今後の展望を両社が語るように「VR遠隔支援」が、これからも進化し続けていくのは間違いないだろう。ソフトバンクが有する顧客基盤とネットワーク技術、そしてポケット・クエリーズのXR技術と開発力を背景に、今後「VR遠隔支援」というサービスがどのような進化を遂げていくのか? その動向から当分目が離せそうにない。

 
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