2019年7月末にクラウドファンディングを開始、わずか6日間で目標額の6600万円を達成したプロジェクトがある。SSAPから生まれた「REON POCKET」がそれだ。本体をスマートフォンで操作することで体表面温度を冷やしたり温めたりできるというこの斬新なデバイスが、ソニーの社内から生まれたのは何故か。開発者の伊藤 健二氏に、事業化までのSSAPとの取り組みについて聞く。

真夏の上海。ソニーの熱設計技術で、
環境負荷を減らせるか?

ソニー株式会社
Startup Acceleration部門
Business Acceleration部
REON事業室
統括課長
伊藤 健二 氏

ウェアラブルデバイスを使って猛暑や冬の寒さに立ち向かう。この画期的なアイデアを伊藤氏が思いついたのは、出張先の上海だった。真夏の上海は蒸し暑いことで知られているが、伊藤氏が訪れた2017年夏は特に暑さが厳しく、最高気温は40℃近くにまで上った。

「外は耐えがたい暑さなのに、ホテルに入るとエアコンが効きすぎていて震えるほど寒い。もしかしたらこの暑さはエアコンの室外機の影響を受けているのかもしれないと考えました。同時に、このままで地球環境には問題がないのかと心配になったのです」

頭をよぎったのは、技術者として長らく関わっていたカメラのことだった。内部にこもった熱を拡散することは、カメラ設計における課題の一つだ。空間ではなく、自分自身を冷やせばいいのではないだろうか──。これまで培ってきた技術を応用してウェアラブルのクーラーを開発すれば、きっと環境負荷が減らせるはず。その思いつきが、REON POCKETの第一歩だった。

帰国後、ソフトウエアの開発を担当していた伊藤陽一氏に声をかけ、プロトタイプを制作。さらにマーケティング・PRの担当のメンバーにも協力してもらった。

「ウェアラブルの冷温デバイスはまだ市場にない価値。尖り過ぎてもユーザーはついてきてくれないので、見せ方が分からず悩みました。私はハードウエア、伊藤(陽一氏)はソフトウエアの設計が長くて知見がなかったので、ファッション関連に精通し、エレクトロニクス製品のマーケティング・PRの経験もあるメンバーにも支えてもらいました」

スムーズに進んでいるように見えるが、それぞれが本業を抱え、なかなか時間が取れない中での作業だった。そんな中助けられたのが、24時間、365日アイデアを受け付けているSSAPのオーディション制度。「1年に1回」「毎年9月締め切り」というように期限を設けるよりも、生まれ出た良いアイデアにすぐ触れたい。SSAPのそうした思いが功を奏した。発案から約1年後にはSSAPのオーディションに応募、2019年の1月に通過した。

数多のコミュニケーションを重ね、
6日間で目標額を達成

19年4月に正式にプロジェクトが発足。最初に目指したのは、7月にクラウドファンディングを行うこと。狙ったのは「猛暑対策展」への出展だ。猛暑対策展は衣・食・住・その他のカテゴリーにおける猛暑対策のグッズやサービスを集めた展示会で、東京ビッグサイトなど全国各地で開催される。「年々暑くなり環境意識が高まっている昨今、メディア注目度の高いイベントであるため、SSAPのオーディションに応募する以前から照準を合わせていた」と伊藤氏は話す。

3日間で約45000人が来場した2019年の「猛暑対策展」。REON POCKETのブースにも多くのメディア、来場者が足を運んだ

約2ヶ月という短期間で製品を作り込む中、SSAPの「アクセラレーター」というプロの伴走者の存在に助けられた。一般販売を見据えた上で、クラウドファンディングの価格設定の考え方について細かい指導をもらい、トレーニングやピッチ演習で製品の見せ方についても学んだ。

当初の予定通り、2019年7月にソニーが運営する「First Flight」でクラウドファンディングを開始。猛暑対策展でテレビ局の取材を受けたことも影響し、「予想よりもかなり早いペースで支援が集まった」。わずか6日間で目標額の6600万円を達成。ここにもアクセラレーターのサポートが光った。

First FlightはクラウドファンディングとEコマースのサービスを兼ねそなえたサービス。運営するセールスマーケディングチームは豊富な知見とデータを所有している。

「私たちエンジニアは原価には詳しいものの、マージンや販売価格の設定については素人です。そんな時にセールスマーケティングチームが手取り足取りサポートしてくれたことで、クラウドファンディング後の事業計画も立てることができました」

メディアからの注目度の高さ、そして大成功に終わったクラウドファンディング。大きな自信を胸に、2020年7月についに一般販売を開始。発売からたった2日で1万台を売り上げる華々しいスタートを切った。

「Eコマースを中心に展開するつもりでしたが、クラウドファンディング時の注目度の高さから多数の引き合いがありました。ただ、自分たちだけでは手が回らなかったので、SSAPのスタートアップマーケティング担当のアクセラレーターに商談のサポートなどをお願いしました」

スタートアップマーケティングチームには何かあった時にいつでも相談可能な環境が生まれたという。

事業化までにはさまざまな困難が立ち向かう。だが、道に迷った時はいつでも手を差し伸べてくれるアクセラレーターがいる。事業会社としての数々の商品を世に送り出し、今なお進化を続けるソニーだからこそ、未知の領域に進む人々を明るく照らし出すことができるのだろう。

SSAPから生まれ順調に歩み始めたREON POCKET。すでにこの製品を応用した新たな計画が進行中で、2021年中に新商品を展開する予定だという。

“Expansion”は続く。
思い描いた景色のその先へ

発案から現在に至るまで、様々な場面でSSAPから伴走による支援を受けてきたREON。

クラウドファンディング成功後は、出荷に向けた試作を重ねる。成功から1年後には一般販売を開始、事業がスピーディーに形となった

しかし、いくら手厚い支援を受けようとも、灼熱の上海で伊藤氏の頭に芽生えたアイデア、そしてそれを形にしようとした彼の熱意がなければ、REONは日の目を見ることはなかっただろう。「新規事業に何より必要なのは、作り手の情熱」と伊藤氏も断言する。

「事業化に至るまで、時には出口が見えない樹海の中をひたすら歩きまわっているような気持ちになったことが何度もありました。でも『社会に貢献できるものを作りたい』というという情熱で、ただひたすら前に向かうことができました。とはいえ、闇雲に進んではどこにも辿り着けなかったはず。地図を見ながら、ともに歩んでくれたのがSSAPでした」

REONで瞠目すべきは、そのスピードの速さだ。オーディションの通過から半年でクラウドファンディングを実現し、さらにその1年後には一般販売にも踏み切っている。世の中には優れたアイデアを持ち、それを自ら設計、試作できる技術者やチームは少なからずいる。しかし自分たちだけでこのスピード感を持って事業化できるかと問うと、さほど多くの手は上がらないだろう。優れたアイデアを、競合よりもいち早く市場に。SSAPは設計から品質、セールスまでビジネスに必要な全てを備えている。「誰に聞いたらいいのか」「教えてくれる相手をどうやって探したらいいのか」という悩みをショートカットできるのが大きな強みだ。

「全てのサポートがソニーのビジネスに裏付けされているのも大きいと思います。実際、商談に行く際にアクセラレーターに『攻めの提案でいった方がよい』と言われて、その通りにしたらうまく行ったということがありました。教科書にあるような『机上の空論』ではなく、実体験に基づいたアドバイスだったから、素直に受け取ることができたのです」

自らのアイデアを形にした経験を経て、世の中の見え方も変わった。「医学の領域にはまだ発掘されていないアイデアの種が多いのではないか」というのが、伊藤氏が最近得た気づきだ。

「スマートウォッチに心電図を搭載するなど、米国ではヘルスケアに関する新たな試みが次々に生まれていますが、日本はまだハードルが高いように感じます。学問としても臨床としても種は豊富だと思うので、目指したい世界があるなら、ぜひSSAPの門を叩いてほしいです」

「企業のR&Dで埋もれている種も、SSAPの力を借りて芽吹かせてほしい」とも熱弁する。

「『技術はいいけれど、社会に実装するためのノウハウがない』などの理由で、優れたアイデアを眠らせていてはもったいない。研究は突き詰めるもの。それに対して、ビジネスは削ぎ落とすもの。両者には大きな違いがあります。だからこそ、ビジネスに精通したプロの手をどうぞ借りてください。アイデアを掘り下げてMVP(ミニマル・バイアブル・プロダクト)にしていくという点において、SSAPほど心強いパートナーはいません。自信を持って社外に薦められるプログラムです」

またきっと暑くなるであろう、今年の夏に向けてREONもさらなる進化を続ける。世の中に埋もれる多くの未知なる事業の種が、同じように芽吹くのを待っているはずだ。

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