特別トップインタビュー
STマイクロエレクトロニクス

自動車、IoT、産業分野にSiCやエッジAIで攻勢

サステナビリティーを基盤に
さらなる成長を目指す

STマイクロエレクトロニクス
本社セールス・マーケティング・
コミュニケーション・戦略 社長
日本法人代表取締役社長

マルコ・カッシス

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クルマの電動化を効率化するSiC(炭化ケイ素)パワー半導体や、組み込み系で広く普及するSTM32マイコンで知られるSTマイクロエレクトロニクス。急激な市場の回復を背景に、売上高は前年比23%増を達成する見通しだ。日本法人社長を兼務するマルコ・カッシス氏は、オートモーティブやインダストリアル分野を強化する一方で、サステナビリティーを重視すると話す。

2021年の半導体市場と貴社の業績を振り返ってください。

カッシス 2021年はコロナ禍の影響が続く一方、世界半導体市場統計(WSTS)が前年比の市場成長予測を上方修正したように、市場が急速な回復を見せた1年になりました。  当社の業績も市場の回復に合わせて伸びを示しており、直近となる2021年第3四半期の売上高は昨年同期比で+19.9%の32億ドルとなりました。また、10月末に発表したガイダンスでは、通年の売上高は、前年比23.3%増の126億ドル(中間値)、第4四半期の粗利益率は約43%(中間値)となる見通しです。

 一方で、世界中のすべての分野における急激な需要の増加によって当社を含む半導体業界全体でサプライチェーンが逼迫し、供給が追い付かないという状況が発生しています。当社としても、引き続き材料の確保や生産体制の強化を進めながら、各分野のお客様に対して公平でバランスの取れた供給に努めていきたいと考えています。

ワイド・バンドギャップ半導体を重点的に強化

重点的に取り組んでいるテクノロジーや、特筆すべき製品があれば紹介してください。

カッシス 重点製品の一つがワイド・バンドギャップ半導体です。とくにオートモーティブとインダストリアルを対象に、電力損失の少ないSiCパワーデバイスに対する投資を拡大しています。現在進んでいるプロジェクトのうち、オートモーティブとインダストリアルがそれぞれ半数ですが、売上高はオートモーティブの比率が上回っています。SiCのビジネスはクルマの電動化の進展を背景に順調に伸びていて、2025年度に設定していた売上高10億ドルの達成を1年前倒しできる見通しです。

 また、これまでSiCウエハーは外部調達でしたが、2019年12月にSiCウエハー・メーカーであるスウェーデンのNorstel AB社を買収したことで内製が可能になりました。2024年までに、さらにコストを下げられる200mmウエハーの導入を予定しており、内製率を40%にまで高めていく計画です。

 当社はクルマの電動化およびデジタル化においてリーダーを目指しており、SiCはその鍵となるテクノロジーです。2021年6月にはルノー・グループとパワー・エレクトロニクスに関する戦略提携を発表し、同社のEVやHEV向けにSiCデバイスやモジュールなどを供給することが決まりました。

汎用マイコンやセンサーで「エッジAI」を攻略

インダストリアルやIoT分野の取り組みはいかがでしょう。

カッシス 注目が高まるAI分野に向けてArmコアを搭載する汎用マイコン「STM32」とセンサーなどを組み合わせてエッジで推論処理を行う「エッジAI」に対する取り組みを強化しています。STM32も重点製品の一つで、超低消費電力や高性能タイプなど数多くの品種を取りそろえており、産業機器や組み込み機器などで広く採用されています。

 既に、学習済みモデルをSTM32に最適化する開発環境「STM32Cube.AI」をリリースしており、2021年6月にはエッジAIアプリケーション向けの開発環境「NanoEdge AI Studio」などを提供するフランスのCartesiam社の買収を発表しました。これによって、当社のAI戦略におけるポートフォリオを拡張することができました。こうした取り組みを通じて、お客様のニューラルネットワーク・アプリケーションの開発を加速していきます。

 もう一つ、インダストリアル分野で紹介したいのが「MASTERGAN」です。低損失の2個のGaN(窒化ガリウム)トランジスタで構成したハーフブリッジ回路と1個のドライバ素子をわずか9mm角の小型パッケージに封止したソリューションで、デジタル機器や急速充電器などの電源回路の小型化と高効率化を実現します。現在、出力45Wから400Wまでの品種をそろえています。

2027年までにCO2排出ゼロを実現

2022年の取り組みを聞かせてください。

カッシス 製品の拡充や供給体制の強化はもちろんですが、ここでは今後の事業成長に欠かすことができないサステナビリティーについてお話ししたいと思います。近年、サステナビリティーという言葉を目にする機会が増えていますが、当社では25年以上も前から掲げてきた経営方針であり、企業文化の一つになっています。

 当社が考えるサステナビリティーは3つの柱で構成されています。1つ目が健康や安全、ダイバーシティーやインクルージョンを含め、人を大切にすること、2つ目がイノベーションやテクノロジー、顧客満足などを通じて人々の暮らしをより豊かにすること、そして3つ目が地球環境を保護することです。

 このうち環境保護に関しては、2027年までにカーボンニュートラルを達成するという、きわめて野心的な目標を業界に先駆けて発表しました。生産時だけではなく製品輸送や社員の通勤などに伴う温暖化ガスの排出削減、製品のライフサイクル管理、再生可能エネルギーの100%化などを進めていきます。

 サステナビリティーはすべてのステークホルダーとの間で相互に価値を持つものであり、パートナーとの協力拡大などを含めて、2022年以降も変わらず長期的な視点を持って取り組んでいきます。

最後に、日本の読者に一言お願いします。

カッシス 半導体の供給問題を契機に、半導体は決してコモディティではなく、社会や暮らしをより良くするために欠かせないイネーブラー(実現手段)であるということが多くの人に理解されるようになりました。様々な分野で先進的な技術を持つ日本が、イネーブラーである半導体を活用しながら、よりサステナブルな社会の実現のために活躍していただきたいと願っていますし、若手エンジニアの皆さんがますます成長して、イノベーションを牽引されることにも大きく期待しています

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SiCパワーデバイスの生産ラインがあるカターニャ工場(イタリア)

お問い合わせ

STマイクロエレクトロニクス株式会社
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