とはいえ、すべてを一気に短期間で実現することは困難だ。そこでパルスセキュアは、計画に基づく段階的な導入・発展手法を提案している。実際、多くの企業が同社のソリューションを活用し、段階的かつ発展的なゼロトラストセキュリティを実現しているという。
国内100カ所以上の小規模拠点を展開する、ある企業の取り組みはその一例である。東西2つあるデータセンターとIaaS基盤をベースに、各拠点をWANで接続し運用していたが、働き方の変化に対応したセキュリティ強化が喫緊の課題になった。そこで同社がまず導入したのが、セキュアなリモートアクセスVPNを実現する「Pulse Connect Secure」(以下、PCS)だ(図2)。このPCSは、様々な多要素認証に対応するほか、端末のセキュリティ対策状況の確認、柔軟な認可権限の設定が行えるSSL-VPN製品。つまり、先の基本編の3つを実現する製品となる。
「このお客様は、PCSが提供するワンタイムパスワード機能と、通常のパスワード認証を組み合わせることで、セキュアな多要素認証を実現しています。また、高度な端末認証機能により、アンチマルウエアやセキュリティパッチの適用状況の一元的な把握も実現。さらに、システムリソース単位での認可権限設定を行うことで、内部でのリスクも最小限に抑えています」(山田氏)
副次的な効果も出ている。PCSの導入により、LAN内は無条件に信頼する小規模拠点よりも、多要素認証や端末確認を行うリモートアクセス環境の方がむしろセキュアであることが分かってきた。そこで、小規模拠点のLAN/WANを廃止し、リモートアクセスを標準ネットワークとして利用。これにより、LAN/WANの管理コストも大幅に削減できたという。
大きな成果を実感した同社は、ゼロトラストセキュリティのさらなる拡張を目指した。そこで導入したのが、クラウド型セキュリティサービス「Pulse Zero Trust Access」(以下、PZTA)である。
このサービスはデバイスと複数の拠点のゲートウエイを管理・制御するコントロールプレーンとして機能する。ユーザー認証、デバイスの状態、アクセス時間帯/場所など各種の情報を総合的に判断し、アプリケーションごとにアクセスを制御することが可能になる。社内/社外を問わず、すべてのネットワークアクセスをPZTA経由にすることで、あらゆる端末、あらゆるリソースの可視化と記録、そして振る舞いベースのリスク評価・認可が可能になるという。
「先のお客様は、各拠点からIaaS環境やインターネットを利用する場合、以前は東日本のデータセンターがインターネットへのゲートウエイの役割を担っていました。しかし、PZTAを利用すれば、各拠点からのアクセスを東日本のデータセンターに集約する必要がなくなります。本格的なゼロトラストセキュリティを実現しつつ、拠点間を結ぶWANも大幅に削減することもできています」と山田氏はメリットを述べる。
次世代セキュリティ対策の切り札となるゼロトラスト。段階的な導入・発展を目指す上で、パルスセキュアの提案は有力な選択肢となるだろう。