ITインフラSummit 2021 Review

災害時の事業継続や感染症への対策にクラウドが有効
既存システムの理解がクラウド移行を成功させる

富士通クラウドテクノロジーズ
ビジネスデザイン本部 テクニカルデザイン部
今井 悟志

富士通クラウドテクノロジーズは、IaaS型のクラウドサービス「ニフクラ」を提供している。VMware vSphere®ベースの仮想サーバー基盤やKubernetesを用いたコンテナ運用基盤、DaaSなど各種のサービスを用意している。同社の今井悟志氏は講演で、既存のITシステムをクラウドに移行するメリットや効果的に移行するための手順、注意すべきポイントなどを解説した。

クラウド移行は待ったなし、まずは仮想化に着手せよ

富士通クラウドテクノロジーズ
今井 悟志

富士通クラウドテクノロジーズは、IaaS型のクラウドサービス「ニフクラ」を提供している。パブリッククラウドだけでなく、用途に合わせてオンプレミス環境にプライベートリージョンを設置したり、パブリッククラウド上にプライベート環境を用意したりできる。VMware vSphere®ベースの仮想サーバーだけでなく、Kubernetesを用いたコンテナ運用機能なども利用できる。

「クラウドに注目が集まる流れになってきている」と、今井氏は指摘する。クラウドの市場規模は年々拡大しており、2020年には2018年の約2倍になった。「なぜここまで拡がってきたかというと、大きな要因が3つほどある」(今井氏)。

従来、ユーザーがクラウド移行を検討するのは、まずは物理的要因からであった。オンプレミス環境で使ってきたITシステムが古くなってきて、ハードウエアの入れ替えが必要になる、データセンターのファシリティも老朽化している、インフラを拡張しようとしても置くスペースがない、などといった問題だ。

2つ目は、人的要因である。ITにかかるコストのうち、多い企業では9割、一般的な企業でも7割以上が、インフラを維持するためのコストとして使われている。「ITシステムの担当者は、既存のインフラの面倒を見るために多くの時間を割いている。新しい取り組みに割く時間がとれないのが実態」(今井氏)である。

3つ目として今井氏は、近年増えてきた「事業継続的要因」を挙げた。自然災害、人為的災害、疫病災害など、BCP対策としてのクラウド利用である。相次ぐ自然災害、そして2020年の新型コロナウイルス感染拡大によって起こった予期せぬ事態は、少なからずクラウド移行を促進させた。「既存のオンプレミスやオフィスに環境を残しておくことがリスクになる」(今井氏)。

クラウド移行をスムーズに、そして効果的に行うにはどうすれば良いのか。 業務アプリケーションをクラウドネイティブ型へと作り替えることは、一朝一夕にはできない。そこで今井氏は、「ステップごとに分けてクラウドに移行する」ことを勧める。まずクラウドありきではなく、段階的に検討しながらできる部分を徐々に移行していく方法だ。その手順や注意点などについて、詳しく説明された。

既存環境の可視化や移行方法の検討が大切

クラウドへの移行で重要な点は、既存のITシステムを可視化することである。今井氏は、「現在の環境をそのままクラウドに載せるケースであっても、必ず既存の環境を可視化して、システムがどのような形になっているかを見極めなければならない」と指摘する。

まず、準備段階として、何がきっかけでクラウドに移行することになったのかを把握する。OSやミドルウエアのサポート終了、仮想化環境のハードウエアの老朽化、サーバー仮想化ソフトのバージョンアップなど、既存のIT環境を変えなければならない要因を可視化する。

次に、移行対象のシステムを決める。「大切なことは、ビジネスのライフサイクルに合わせてシステムの構成や変更を決めること。来年には使わなくなることが分かっているシステムは移行の対象から外す。拡張しなければならないが現行のオンプレミス環境では難しいというシステムは、クラウドに移行することで拡張性を確保できる」(今井氏)。

業務システムのデータ(個人情報など)をクラウドに置いてもいいかどうかも検討する。移行によってコストを下げられるかどうかも調べる。移行にともない、アプリケーションの改修などが発生するかどうかも確認する。

利用頻度や重要度を可視化し、まずは重要度の低いものから順にクラウドに移行するやり方も有効である。今井氏は「IT管理者をクラウドの運用に慣れさせることが重要。検証目的ではなく、本番稼動している実際のシステムを移行することで、パフォーマンスやトラブルを含めて、クラウド利用時のノウハウを蓄積できる」と説く。

移行対象のシステムが決まったら、次に移行方法を検討する。複数の移行方式の中から、システムに適した方法を選ぶ。システム停止時間や障害発生時の復旧方法などを検討する。

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