日経クロステック Special
DTTF2021 -Digital Twin & Tranceformation Forum- on Web Review

開催日時:2021年9月29日水)10:30〜

進まないDXへの処方箋を探り
“攻めの5年先”を見通す

DXは組織を巻き込む大きな変革だ。部門をまたぐ調整と連携、データの集約と統合、デジタルツインやIoT、VRを活用した業務の革新など、膨大な要素を含む。どれもが困難で、DXがなかなか進まないと嘆く企業は多い。本セミナーでは、こうした課題解決に効果的な様々なヒントやテクノロジーが紹介された。必要なものを上手に活用し、DXを一気に加速させよう。

日経クロステック / 日経コンピュータ 副編集長 中田 敦

特別講演

ディープラーニングか量子コンピューターか?
デジタルツインに欠かせないシミュレーションの未来を占う

日経クロステック / 日経コンピュータ

副編集長

中田 敦

2020年代はAIと量子コンピューターが科学分野を変革

「デジタルによる変革は、まずメディアや小売業から始まった」と中田氏は分析する。1990年代から2000年代にかけて進行したデジタル化は、従来のビジネスモデルを一変させ、業界地図を大きく塗り替えた。2010年代に入ると、サービス業のデジタル化が始まった。多くの消費者がスマートフォンを携帯するようになり、24時間365日、パーソナライズされたオンラインサービスの提供が可能になった。

そして2020年代。「これからの10年間は、科学の領域、特に化学の分野でデジタル変革が進むと言われています」(中田氏)。その代表格が、トロント大学のアラン・アスプル=グジック教授だ。電池の素材や機能材料の開発をデジタルで変革しようとしている。具体的には、特定の機能を実現する化学素材を開発する際に、数百万種類の分子の中から有望な候補を人工知能(AI)で絞り込み、開発期間を一気に短縮するという。

さらに、開発した分子構造が期待通りの性能を発揮するかどうかを確かめる物理実験を、量子コンピューターによるシミュレーションに置き換えようとしている。

量子コンピューターはすでに実用化が始まっている。米IBMは2022年に443量子ビット、23年に1121量子ビットの量子コンピューターを実現すると発表。米Googleは2029年に量子ビットエラー率0.01%未満、100万物理ビットの万能な量子コンピューターを実現すると述べている。2025年に20億~50億ドルの経済効果をもたらし、2040年代には10年間で4500億~8500億ドルの経済効果が期待されている。AIと量子コンピューターにより、科学分野の研究開発が急速に進化しようとしている。

JFEスチール データサイエンスプロジェクト部 部長 田中 宗 氏

特別講演

鉄鋼プロセスにおけるDXの推進と課題

JFEスチール

データサイエンスプロジェクト部
部長

河村 和朗

10年後のインテリジェント製鉄所に向けた取り組み

「JFEスチールでは、鉄鋼の製品製造から出荷に至るまで、ほとんどすべてのフィールドでデータサイエンスを活用しています」とJFEスチールの河村氏は説明する。生産活動の歴史が長いJFEスチールはデータの宝庫であり、蓄積された製造ノウハウや老朽設備への対策、予知・予兆管理に関わるデータは競争力の源泉と捉え、DXの全社方針として「積極的データ活用(データドリブン)により、競争優位を獲得」を掲げている。

鉄鋼プロセスDXの目標は、あらゆる事象をデジタル化し、データ活用によって製造プロセス、業務、経営を革新することだ。DXによって、工場の安定操業、コスト削減、品質維持向上を実現し、社員の労働生産性を向上し、会社の製造から経営全体を変革して企業価値を向上させることを目指している。その上で、工場をCPS(Cyber Physical Systems)化して、10年後には自ら学習して自律的に最適操業を行えるインテリジェント製鉄所を目指しているのだという。

JFEスチールのDXでは、まずセンシングのIoT化を行い、さまざまなセンサーデータや操業データを収集して、例えば熱延設備状態監視システムなどを作っている。また、国内産業初となる5G導入を行って4Kカメラによる操業監視を行ったり、全高炉をCPS化して内部状態をリアルタイム可視化することで操業の高効率化や安定化を実現している。その他、CPSによって、鋼板の品質を向上させるスキンパスミルのインテリジェント化や生産計画自動化、物流最適化なども実現し、本社にJDXC(JFE Digital Transformation Center)を開設して操業データの統合的な活用を推進している。さらに、保全や安全・防災にAIを導入し、MRによる訓練シミュレータも実現。データサイエンティスト養成にも力を入れ、データサイエンティストのための情報ポータルやツール、アプリなども開発している。

Symmetry Dimensions CEO / Founder 安藤 類央 氏

特別講演

デジタルツイン2021
~データの民主化で生まれる新たな市場~

Symmetry Dimensions

CEO / Founder

沼倉 正吾

オープンデータを活用する新市場に期待

Symmetry Dimensionsの沼倉氏は、冒頭に「現実世界の事象でデジタルのコピーを作るデジタルツインを、都市空間に当てはめて最適化したものをここでは“スマートシティ”と定義します」と説明。講演では、そのスマートシティに、国や企業などが提供するさまざまなオープンデータを適応させて課題解決しようとする事例が紹介された。

沼倉氏はまず、国が公開しているオープンデータとして、2021年3月から日本全国の都市の建物データを公開し始めた、国土交通省のプロジェクト「PLATEAU」を取り上げた。「高精細な都市モデルを国が作成し、無料公開したことで大きな話題を呼んでいます」とその取り組みを評価する沼倉氏は、最近では企業も、データやサービスはオープンにして連携させることで、より価値が高まるという考え方に変わってきたと紹介。こうした動きを、「データの民主化」と呼んでいる。

オープンデータの活用で特にインパクトがあったのが、2021年7月に静岡県熱海市で発生した土砂災害の事例だ。Symmetry Dimensionsは静岡県がオープンにしていた熱海市の3Dデータを利用し、災害があった場所を誰でもが3次元で閲覧できるようにした。そこに火山学者や地質学者、災害対策チームなどが参加し、各分野の専門家がZoomなどのオンライン会議でデータを共有しながら分析することで、その日の夜までに大まかな土砂の流れが推測できたという。

「自治体のオープンデータを使う際にも、データの連携をどうするのかがデジタルツインやスマートシティで一番の課題になっています。そこに関しては、我々のようにさまざまな企業が取り組みを始めています」(沼倉氏)

今後は、民主化されたデータを活用するための新たな市場の立ち上がりも期待できそうだ。

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