開催日時:2021年9月29日(水)10:30〜
進まないDXへの処方箋を探り
“攻めの5年先”を見通す
ソリューション講演
~パターンで紐解く未来のDX地図~
アビームコンサルティング
執行役員 プリンシパル
デジタルテクノロジービジネスユニット
DXIセクター長
橘 知志 氏
製造業DXの推進には山積みの課題があるが、いかに対応すべきか。アビームコンサルティングの橘氏は「日系製造業の特徴を理解し、欧米型の考え方に引っ張られないこと。よい部分は取り入れ、日本オリジナルのマネジメントを行うことが重要です」と説明する。日系企業が不足、苦手とする部分の克服を意識することが、DX推進のポイントになるという。
DX実現に向けた思考方法やパターン化について、橘氏は指摘を続ける。日本にはこれまで育て、集積してきた「日本流マネジメント技術」がある。これがDX実現の基盤となりうる。ここで定義される5つの観点を列挙する。「価値創出の思考・発想法(Ideation)」、「仕組み創りとアプローチ(System)」、「考える力と組織能力(Resource & Capability)」、「技術と価値の知的創造(Tech & Value)」、そして「未来産業DXとその旅路(Modelling & Journey)」。これらの観点から日本流マネジメント技術を再構築し、DXを構想・実践・実現する。これが同社の重要視する理念だ。
DXの構想・実践・実現にはもう一つ、「未来を見据えた未来思考」が鍵を握る。同社が提唱するのは「2階建てのDX」だ。各部門・部署で効率化を行い、利益を創出する部分を「1階」とするなら、これに加え新たな顧客価値・新事業を生み出す「未来産業DX」を構想する部分を「2階」と定義する。この2階建てでDXを捉えて未来の産業像を描き、産業構造の再構成による変革と、新たな産業創出による変革の2軸を通して、DXの実現が目指されるという。
DXによって価値創出を実現する思考法・発想法とは何か。これは自社が対象とする産業・業界の位置によって異なり、出口戦略も変わる。自社の産業構造の特性やポジションを振り返り、新産業の創出へ何と何を組み合わせるか、その先の到達地点まで、十分に定義する必要があるだろう。これまでの基盤としてあった価値(素材・製品・技術の機能的価値)をベースに、基盤を活用した価値創出(利用・体験などの情緒的価値)を加えること。それによりモノ+αの価値を創出して、顧客価値へとつなげていく。DXが当たり前となる時代では、基礎的な知識の上に、新ビジネスを生み出すためのこうした動きを取れる力、いうなれば「構想力」が求められる。
一方、DXに向けデータ分析を行うことは当然重要だ。しかし、データは構想力を発揮するために有効に扱う必要があり、橘氏は「ローデータから視認・理解できるデータを出すだけでなく、データの意味を定義し、何らかの価値につなげること。そこから課題を解決しうる、ユースケースを作らなければなりません」と説明する。
体温計を例に挙げると、この機器そのものは、体温を数値化したデータとして視認できるだけだが、体温データは医者の初診判断や、ビル施設の入館許可などの判断材料に用いることができる。このようにデータへ何らかの意味付けを行うことが、構想力だ。体温データを他のデータや場所の特性などを加味し、遠隔医療の自動化や、感染予防対策の実現などのユースケースに落とし込み、課題解決の一手とする。ここまで進めて、ようやく顧客価値の創出といえる。
課題と解決策の因果関係を分解して考え、再結合することもポイントだ。課題と解決策に「未知」と「既知」を加えた、4象限で考える。デジタルを通した解決策をベースに未知の課題を見つける場合もあれば、課題をベースに未知の解決策を見つける場合もある。こうして課題と解決策が明確(=既知)になることで、戦略立案が可能になる。
「DX時代を担う組織は、産業構造、技術活用、商習慣などの原理原則を理解し、それを未来思考型で推進する能力が肝要です」と話す橘氏は、組織に必要な2つの重要な動きがあると説く。一つは、俯瞰的視座からDX構想を仕掛け、未来を見据えた自社のあるべき姿を描くこと。そしてもう一つは、連続するプロセスをつないで未来のオペレーションを創出し、部門単位で個別DXを推進することだ。
企業変革を行うプログラムを見定めていくことも重要だ。製造業DXの要諦は、未来産業を創出し、モデル化しながらDXを実現すること。未来のものづくりのあり方と、新ビジネスの創出の2系統で企業変革を進める土台になる。
そのうえで継続的にDXを推進し、常態化するためには、自社内で「産業・事業構造変革」と「企業・組織構造変革」の両輪による循環型の活動が求められる。一方では、未来を構想し、新ビジネスや未来の産業をモデル化し、一方で自社がどの地点まで実現できているか振り返り把握し、組織能力の向上も含め改善する、それを両者をつなぐ活動をDXによって加速させること。 そして最後に、製造業DX実現への構成要素を導き出し、組み替えながら推進していくための「製造業DX地図」を橘氏は示した。
「デジタル技術やデータの活用には、構造的に物事を把握することが求められます。産業、事業、デジタル技術、データを構造的に捉え、分解・新結合を行うこと。さらに新たな未来を描き出し、モデル化していく考え方や能力を身に付けること。欧米型の考え方に押し流されないDX推進はこうして可能になります。未来産業DXを構想し、企業変革の実現につなげるマネジメント、循環型の仕組みを作り、活動を推進させるマネジメント、これがマネジメント技術の再構築につながります」(橘氏)。同社も新たな施策を打ち出している。2021年4月、デジタル(Digital)をマルチ(X)に組み合わせ、イノベーション(Innovation)を実現する「Digital X Innovation(DXI)セクター」を設立した。「20年、30年先を見据えた価値創造と変革実現に向け、一緒にDX時代を乗り切りましょう」と最後に橘氏は呼びかけた。
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