日経クロステック Special
DTTF2021 -Digital Twin & Tranceformation Forum- on Web Review

開催日時:2021年9月29日水)10:30〜

進まないDXへの処方箋を探り
“攻めの5年先”を見通す

マクニカ デジタルインダストリー事業部 事業部長 阿部 幸太 氏

ソリューション講演

もう目を背けない!
製造業DXに潜む痛みとその処方箋

マクニカ

デジタルインダストリー事業部
事業部長

阿部 幸太

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マクニカは製造業を中心に、国内で約100社、300件以上のデジタルトランスフォーメーション(DX)を支援してきた。コロナ禍で事業の先行きが不透明になる中、DX推進メンバーへの負担は急増しているという。DXの難易度を高めている主な要因は、コミュニケーション課題だ。複数部門をまたいで合意を素早く取りつけ、周到な準備によって未然のトラブルを防ぐ方法とは。同社の阿部幸太氏が自身の経験を基に解説した。

DX推進チームに重なる負担 なぜこうも難しいのか?

「携われば携わるほど、DXの主役は『人』だと痛感しています」と、マクニカの阿部氏は述べる。スマートファクトリーの3要素は「人」「技術」「インフラ」だ。中でも「人」が成功の鍵を握るという。

マクニカが支援してきた国内約100社、300件以上のDX。その55%が、スマートファクトリーの導入支援だ。次いで多いのが、産業設備に人工知能(AI)やモノのインターネット(IoT)機能を導入する事案であり、全体の35%を占める。工場全体と個別の設備の両面をカバーしているのが同社の特長だ。

業界で見ると、全体の約4割が自動車関連。次いで電気/産業装置/半導体と続く。最近は食品や日用品の業界も増えているという。

今日ではほとんどの企業がDXの重要性を認識し、中期経営計画などに盛り込んでいる。さらには、複数部門からの選抜メンバーで構成されたDX専門組織を持ち、業務のデジタルシフトを加速させている。

そうした中、DXには2つの傾向が表れていると阿部氏は言う。1つは、先行きの不透明感から予算や稟議が厳しくなり、DX推進チームへの負担が増えていること。もう1つは、経営層から見てプロジェクトの妥当性や進捗度の判断が難しくなっていることである。「ひと言で言えばその原因は、DXの難易度が高いことです」(阿部氏)。

ではなぜ、こうも難易度が高いのか。第1の要因は、コミュニケーションの問題だ。

事業目的や経営計画からブレークダウンしてDXの目標を決定し、具体的な施策とスケジュールに落とし込む。この際、何の施策を実行するにしても、業務プロセスの変更と部署間の連携が必要になる。複数の部門をまたいでコンセンサスを得る作業に、膨大な時間がかかる。

その後には、経営層とのすり合わせや予算とリソースの確保、スケジュール策定などの業務が待つ。さらには関係部署に与える効果や協力関係の整理、進め方の説明、要員の育成、業務フローの再設定とシステム間の連携、インターフェースの設計など、果てしない仕事量だ。これらほぼすべての工程で、部門の垣根を越えたコミュニケーションを欠くことはできない。

「このコミュニケーションの効率をいかに高めるか。そこにDXの困難を克服する鍵があります」。阿部氏はそう指摘した。

デジタルで可視化し素早く合意を形成

コミュニケーション円滑化の鍵とは何か。阿部氏によると「現状分析」と「シミュレーション」の2つがあるという。

部門間の連携はまず現状を明らかにし、課題を関係者全員が合意することから始まる。しかし、部門が違えば考え方もカルチャーも異なる。この壁がコミュニケーションを阻害している。

その解決策として阿部氏が強く提案するのが「現状をデジタルツインでシミュレーションし、課題や問題点を可視化すること」だ。

シミュレーションの効果

現状のデジタルツインを使って課題や問題点を可視化する。ここでの狙いは、体験の共有だ。

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工程や設備の現状をデジタルで可視化し、シミュレーションすることで課題や問題点が誰の目にも明らかになる。短期間で経営/現場など、部門間をまたいでの合意にも至りやすい。

重要なのは「ここにコストと時間をかけてはいけないということです」(阿部氏)。シミュレーションの目的は、現状の姿を全員で共有し、合意すること。細部にこだわる必要はない。

低コストで短期間に作ることがポイントになる。最短2週間で実際の工程、工場のモデルを構築するマクニカの「デジタル工場導入支援サービス」が人気を集めるのには、こうした背景がある。「難しいことを簡単に見せてくれるのが、デジタルテクノロジーの利点です」(阿部氏)。

本気で志すならDX組織のコア人材は「社内」から選べ

DXを難しくしている第2の要因は、組織作りだ。阿部氏によれば、DX推進の組織づくりで絶対に押さえるべき点がある。それは「DXをリードするコアとなる人材を、必ず社内から選ぶことです」(阿部氏)。

本気でDXを志すなら、従来の企業文化や考え方、行動様式を大きく変える必要がある。企業が目指すべき将来の姿を描くには、現状の問題点や業界構造、社内文化やプロセスをよく理解している人材が必要だ。「ここを外部のコンサルタントに任せてしまうと、満足度が低いうえにコストと時間を無駄にする結果になります」(阿部氏)。

社内のコア人材を中心にチームを組み、足りない部分に外部からの人材を充てる。これをワンチームとして進めていくのが理想的だという。

組織ができたら、データの活用へと進んでいく。「DXの主軸はデータの利活用です。取り組みの初期では、これが最大の難関になります。最初のプラン作りに専門家のノウハウを入れるべきです。最初の検討段階で後日のトラブルをどこまで回避できるかが、コストや工数に大きく影響します」(阿部氏)。

データ活用の落とし穴は多数あると阿部氏は言う。その代表例は、データの仕様と粒度の調整だ。例えば「製品の寿命予測モデル」を作るには、品質部門、製造部門、販売部門のデータを連携させる必要がある。しかし、各部門で持っているデータの仕様が異なり、すぐにはできない場合が多い。

嵌り易い落とし穴

同じ製品でも、部門ごとに持っているデータの仕様が異なる。これをいかにして連携させるかが課題だ。

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例えば製品番号1つ取っても、ハイフンが入っていたり、測定値のケタ数が合わないといった問題が必ず起きる。これらのデータの前処理をどうするか、どこにデータを蓄積し、どのような二次加工を行うかなど、最初に十分な全体イメージを作っておかないと、後々の混乱が大きくなる。「ラッパーソフトで解決すればよいという考えは、工数が膨れ上がる原因になります。データの共有と処理の課題は、前がかりで解決していくことが重要です」(阿部氏)。

また、設備機械のデータはメーカーによって千差万別なため、その収集は意外に難しい。IoTのセンサーを導入するにしても、必要なデータ粒度やサンプリング仕様などを深く検討したうえで行うべきだ。

収集したデータのメンテナンスをどうするか、どの仕事を外部に委託するかなど、初期段階で検討すべきトピックは多い。検討の漏れを防ぎ、企業ごとの目的や状況に応じて最適解を見つける必要がある。

「当社には、300件以上のDXを支援してきた経験とノウハウがあります。本気でDXに挑む企業を確実にサポートし、お客様と一緒に研鑽していきます」と述べ、阿部氏は講演を締めくくった。

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