開催日時:2021年9月29日(水)10:30〜
進まないDXへの処方箋を探り
“攻めの5年先”を見通す
ソリューション講演
- The last one inch for Digital Transformation
ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン
代表取締役社長
堀田 徹哉 氏
「最近はゲーム業界だけでなく、様々な産業分野で活用が進んでいます。例えば、自動車のOEMメーカーの世界トップ10社すべてが、新車の開発や検証に当社のUnityを利用されています」(堀田氏)。実に世界の拡張現実(AR)・仮想現実(VR)コンテンツの約60%が、Unityを使用して開発しているという。
堀田氏はまず、3Dゲームの開発環境について解説する。背景やキャラクターのレンダリング、動き、ユーザーインターフェースなどを効率的に開発するためのツール群、開発しながら逐次その動きを確認できる実行環境、キャラクターの周辺にあるアセットや背景を制作するためのツールがすべて統合されている。ゲーム業界では、これを「ゲームエンジン」と呼んでいる。
Unityの大きな特長の1つは、ゲームの制作中でもプレイボタンを押すことでコンテンツをその場で実行し、見栄えや動作を確認できることだ。リアルタイムに確認しながら制作を進められる環境が開発者の支持を得て、3Dゲームの開発環境としては世界最大のシェアを持つに至った。
さらに「多くのユーザーの皆さんが、Unityで利用できるキャラクターやマップのデータをインターネット上で公開・販売しています。ご自身で3Dモデリングをしなくても、これらのアセットを活用すれば簡単に3Dコンテンツが作れるのです」(堀田氏)と続ける。
完成したコンテンツは、様々なPCや家庭用ゲーム機、モバイル端末などで動作する実行ファイルとして書き出すことができる。
こうしたゲームエンジンが他の産業分野でも注目を集めている。自動車、建設、産業機械、医療、小売りなどの分野で、リアルタイム3Dによるシミュレーションを活用する動きが加速している。
例えば、本田技術研究所は自動車やバイクなどの製品開発において、コンセプトや世界観、ユーザー体験などの検証、プレゼンテーションに用いている。3Dゲームの開発環境であるUnityを自社向けにカスタマイズし、独自のカスタムエディター「X-Hub」をユニティ・テクノロジーズ・ジャパンと共同で開発した。
かつての自動車は性能で勝負していたが、近年は自動車が持ち主に与えるユーザー体験が商品力の決め手となっている。堀田氏は「開発段階でコンセプトをしっかりと表現し、関係者で共有、検討することが以前にも増して重要になっています」と述べた。講演では、本田技術研究所のデザイナー制作による、コンセプト映像も披露された。
「デザイナーの方がご自身の手で3Dデータを扱い、リアルなコンセプト映像を思いのままに制作できます」(堀田氏)。ユーザーの用途や目的に応じて開発環境をカスタマイズできることは、Unityの大きな特長だ。
例えば「X-Hub」では、複数の仮想的な都市空間がテンプレートとしてプリセットされている。そこに建物や公園、街灯などのデータをドラッグ&ドロップし、ブロックを組み合わせるような感覚で3Dの街並みを構築できる。自動車や搭乗者を容易に設定し、それぞれの動きを自由に決められる。太陽がどの角度から輝き、影はどう動くのか。曇りや雨の天候で走るとき、自動車はどう見え、ライトはどう反射するかといったことは、ゲームエンジンの特性を利用して自動的に表現される。
「従来はCG会社に依頼し、イメージを何度もやり取りし、時間とコストをかけて映像を制作していました。いまご説明した仕組みを使えば、このような映像なら1日で作ることができます。その効果は計り知れません」と堀田氏は言う。
建設業界でもUnityの活用が進む。大林組の「i-Construction」がその例だ。
大規模な建設現場では様々な作業が同時並行で進められ、複数の建設機械や設備が持ち込まれる。そこで、複雑な建設現場を丸ごとデジタルツインとして再現した。効果や懸念を検証しながら打ち合わせを進め、詳細な施工プランを作成するための基盤化を目指している。
「施工現場を3Dで再現し、複雑に絡み合う鉄筋や足場、コンクリート、建設機械などのデータをそこに重ね、さらに現場作業員のモーションセンサーから得た動きのデータなどを導入します。これにより、難しい工程を忠実にシミュレーションできます」(堀田氏)。今後こういったシステムが実現することで、作業員の安全を確保するには何をすべきか、クレーンのブームはどこまで伸ばすことができ、他の機械や構造物と干渉しないかなどを、詳細に検討する。あらゆるリスクを未然に防ぎ、かつコスト効果や施工期間の最適化に貢献するという。
小売業界への導入も始まっている。店舗の内装や陳列棚、そこに並ぶすべての商品を3Dデータにして仮想空間に配置する。1つの店舗を丸ごとデジタルツインで表現してしまうのだ。その中で最適な商品の陳列や棚割りを検討するだけでなく、リアルタイムの在庫データをつなげば、全体をデジタルインベントリーとして統合できる。
こうしたデータをデジタルマーケティングに生かせば、店舗でのリアルな顧客体験とデジタルの顧客体験を融合させ、インパクトの大きなマーケティングが可能になる。また、こうしたデジタルツインは従業員のトレーニングにも利用されている。
3Dのデジタル情報を活用したこれらの取り組みを、堀田氏は「DXのラストワンインチ」と表現する。「デジタル情報からインサイトを得ることは、すでに当たり前になっています。いま必要なのは、データから得られたインサイトを社員やお客様のアクションにつなげること。人間が情報取得の8割以上を依存する視覚に訴えることがその鍵になります」(堀田氏)。DXの最後のひと押しとなる視覚化技術こそが、リアルタイム3Dテクノロジーだと語る。
同社には、ARやVRのテクノロジーを生かしてDXのラストワンインチを繋ぐための最先端のリアルタイム3D製品がそろっている。3Dデータの活用において最も過酷なゲーム開発で鍛えられ、速さと自由度、使いやすさを極めたツールばかりだ。「Unityの提供する製品とサービスで、あらゆる産業のDXを支援していきます」と述べ、堀田氏は講演を終えた。
お問い合わせ先
ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン株式会社
Unityの産業分野適用事例集:https://industry.unity3d.jp/
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