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必要なタイミングで必要なデータを引き出しいち早くビジネス変革を起こす。そんなデータ統合を実現するステップとは必要なタイミングで必要なデータを引き出しいち早くビジネス変革を起こす。そんなデータ統合を実現するステップとは

前編では、「全社的なデータ統合こそが、DX(デジタルトランスフォーメーション)推進の絶対条件である」ことについて解説した。データ統合のためのステップとして、「ビジネスの目的」を起点とするアーキテクチャをいかに設計し、その構図に基づいてデータを統合・活用できるシステムを選定するべきであるという点もご理解いただけただろう。後編では、全社的なデータ統合を実践する際に重要になるポイントを、より詳しく解き明かしていく。

全社的なデータ統合を
成功させるカギとは

まずは改めて、DXを成功させるために「企業はデータ統合によって何を実現しなければならないのか?」という根本的な問いに立ち返ってみたい。経営層やビジネス部門のユーザーにとって、それは「使いたいデータを、使いたいときに、いかなる切り口の分析でも使えるように準備しておくこと」である。そのために、部門ごとにではなく全社的なデータ統合が必要になるのは言うまでもない。

IoTセンサーやWebサイトなどから日々収集される膨大な生データは、ただ集めてきただけの寄せ集めの状態では、ビジネスに価値を与えることができない。ビジネスにおける目的を明確にし、そのために必要なデータを集めて他のデータと組み合わせることで、ビジネスの目的に沿った価値を持たせる必要がある。これが「データ統合」であり、統合によって価値を持ったデータを「データプロダクト」という。

前編でも述べたように、データとデータを重ね合わせれば、見えてくる「答え」の数が増え、分析の精度も上がる。データプロダクトの価値が高まるほど、変化の予兆が捕捉しやすくなり、施策の見直しや、ビジネスモデル変革が可能となるのだ。だからこそ、「答え」を生み出さない可能性のあるデータ統合に膨大な時間と工数を費やすことを避け、ビジネスモデルや業務プロセスの変革につながり得る「データプロダクト」を生み出すためのアーキテクチャ設計が企業には求められる。

では、「データプロダクト」を生み出すために実際は、どうアーキテクチャを設計していくことが必要なのか。

全社共通データ基盤と言える大規模データ分析プラットフォームを実現するテラデータで、クラウド・アーキテクチャ・リードとして多くの企業のデータ統合を支えてきた藪公子氏は、「収集可能なデータは年々膨大化している一方で、大きい企業ほど自社で扱っているデータを理解できていない傾向があるように感じます。まずは自社がどのようなデータを持っているのかを明確にして、目的に合わせてデータを仕分けし、いかに組み合わせるのかというルールを決めて整理しておく必要があります」とアドバイスする。

藪 公子氏
日本テラデータのクラウドビジネス強化における、リファレンス・アーキテクチャ策定の責任者。将来を見据えたデータ活用の概念や目的などのコンサルティングを通し、企業のデータ統合・分析基盤の構築を支援する

さらに、企業がデータ統合のためのシステムを構築する際に陥りやすい失敗として藪氏が挙げるのは、基幹系システムと同じような発想で設計してしまいがちなことだ。

基幹系もしくは業務系といわれるシステムは、それぞれの業務に最適化されたトランザクションをいかに素早く処理するかに注力して作られており、全社的なデータ統合に必要となる大量のデータをいかに多くの人が使いやすく分析できるかが求められる情報系システムとは作り方が根本的に異なる。企業は特性に合わせたシステム構築で、あらゆるビジネス課題の答えを導くデータをいつでも引き出せる環境を整えておく必要がある。しかし、長年基幹系システムの開発に携わってきたエンジニアは、そうした基幹系と情報系の違いを十分に理解できず、結果的に部門ごと、システムごとに情報がサイロ化してしまうという結果を招いてしまうのだ。

では、データ統合を成功させるためにはどうすればいいのか。

藪氏はデータ活用の目的の明確化を再度強調した上で、「多くのユーザーがいつでもデータを使えることを意識し、仕分けされたレイヤーごとに、それぞれの役割に応じたデータ処理ができるように設計していくことが大切です」と語る。

その成功例として藪氏が紹介したのが、ある銀行のアーキテクチャ事例(下図)だ。

データは組み合わせるほど多くの「答え」を獲得
リファレンス・アーキテクチャに基づいて、ある銀行が設計したアーキテクチャの例。それぞれのサービスで、どのデータを扱うのかという仕分けが明確になっている

この銀行のリファレンス・アーキテクチャは、それぞれのサービスの中で、どういうデータを使うのかが明確になっている。上図の通り、「分析サービス」の中では、ディスカバリー、収益計算、プランニング、コスト計算、キャンペーンなど様々なサービスを目的としてデータを使い、分析のために必要な構造化データを「顧客」「取引」「財務」「商品」などの項目に分けてテラデータのデータ分析プラットフォーム「Teradata Vantage」に格納している。そして大量のログデータはデータレイクに置き、それぞれをシームレスに連携させることでデータプロダクトを全社共有できるアーキテクチャを設計している。

それぞれのサービスにどういうデータを配置するかをしっかり考えて、アーキテクチャを構築することが大切だ。その上で具体的にどのようなデータプロダクトを作る必要があるか明確にすることがポイントである。そうすれば、どのようなデータを取得すべきかはっきりし、それに必要な機能、そしてシステムと順番に決まっていくのである。

次のページでは、設計されたアーキテクチャに基づいて、実際にどのようなデータ統合・分析システムを実装していくべきかについて考える。

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