消費財卸売業や消費財メーカーは、スーパーやホームセンター、ドラッグストア、コンビニエンスストアなど、多くの小売業者と取引しており、その大部分はEDIを経由して行われている。じつはこれが、DXを妨げる“意外な原因”となっているのだ。
「EDIの送受信方式やメッセージのフォーマットは時代とともに進化してきました。小売業者ごとの商慣習も加わり、ひと口にEDIと言っても、その姿形は千差万別です」(大槻氏)
消費財卸売業や消費財メーカーでは、1980年代から数十年にわたる取引の中で、様々な手順・ファイル形式で数多くの小売業指定のEDIを基幹系システムに接続してきた。EDIを経由して受けた注文データは、販売や物流、会計、生産管理などの基幹系システムと連携させる必要がある。そのためには、受け取ったEDIデータを基幹系システムのフォーマットに変換しなければならない。ところが、小売業者ごとにフォーマットが異なるため、変換のためのプログラムをその都度スクラッチで開発するという歴史を繰り返してきた。
2000年代からEDIの業界標準仕様である「流通BMS」の普及が始まった。これにより大手小売業の多くは流通BMSで消費財卸売業や消費財メーカーとEDI取引を実現していると思われがちである。
しかし大槻氏は「歴史が長く、取引先が多い消費財卸売業や消費財メーカーほど変換プログラムの数は膨大となり、そのすべてが基幹系システムに繋がっています。すべてのEDIが流通業界標準の流通BMSで取引されていればいいのですが、いまだにレガシーEDIと言われるJCA手順での取引やホテル業界・外食業界・専門店で広がっているWebEDIでの取引といった新旧の手順で取引されているのが現実です。やむを得ない歴史ではありましたが、レガシー化した基幹系を刷新するとなると、そこに繋がる新旧すべての接続プログラムを、時間とコストをかけて構築し直さなければなりません。多大な時間とコストを要することから、基幹系システムの刷新が進まない状態、まさに“足かせ”となっているのです」と話す。
理由は様々だが、膨大なEDIの変換プログラムの存在が大きな“足かせ”の一つとなっていることは間違いないだろう。ではこれを整理してDXを進めていくためには、まず何から始めればいいのか。次ページから具体的な方法を紹介していきたい。