日経クロステック Special

シミュレーションの民主化を提唱
設計と解析の一元的な統合で
開発短縮と価値向上を図る

ダッソー・システムズ主催
「3DEXPERIENCE Modeling & Simulation Conference Japan 2021」レポート

実践例:ジャガーランドローバー
設計からCAEの解析結果までを1日に短縮することを目指す

Daniel Pyzak氏
Jose Garcia-Urruchi
ジャガーランドローバー
デジタル・エンジニアリング・ケイパビリティ 責任者

 MODSIMを実践する企業からは、英ジャガーランドローバーでデジタルエンジニアリング部門の責任者を務めるJose Garcia-Urruchi氏が、「The Present and Future of Modeling & Simulation in Jaguar Land Rover」(ジャガーランドローバーにおけるモデリングとシミュレーションの現在そして未来)と題して、同社が推進している「エンジニアリング・コンティニュアム」について講演した。

 エンジニアリング・コンティニュアムとは、設計からCAEの解析結果を得るまでに8週間から12週間を要しているのを、数年のうちに1日に短縮し、さらに将来はリアルタイムに準じる「ライブ」にまで早めることを目指した「野心的な取り組み」とGarcia-Urruchi氏は話す。その実現のために、同社はダッソー・システムズの3DEXPERIENCEプラットフォームを数年前に導入した。

 Garcia-Urruchi氏は、以前はモデルの品質やソルバーの性能などが重要なファクターだったが、現在それらは十分なレベルにあり、それ以上に次のようなイネーブラー(実現に必要な要素)が重要であると述べた。

 まず、EBOM(Engineering BOM)とSBOM(Simulation BOM)の同期を挙げた。3DEXPERIENCEプラットフォームの導入によってCADとCAEの同期を実現できる環境になったものの、EBOMを作成・変更した後にいかに早くSBOMを準備するかがまだ課題として残っており、理想としては同時化を目指していると話す。

 2つ目は、上記にも関連するが、CAEモデル作成の自動化である。これが意味するのは、CAE結果のライブフィードバックというビジョンの実現だ。モデル構築プロセスの完全な自動化、さらにCAEモデルを作成しやすいようにCADモデリングの作成方法を変更するという、従来は解析側から設計側に対して要請することが難しかった領域に踏み込んでいく。

 また、モデルベースシステムズエンジニアリング(MBSE)の導入と併せ、要求仕様などを表現した1Dモデリングの世界とジオメトリーベースの3Dモデリングの世界との連携強化も、イネーブラーとして重要と述べた。

 さらに、MODSIMを推進するには組織設計が重要と指摘した。旧来のようにクルマのサブシステムや役割で部署を分けるのではなく、新しいテクノロジーやプロセスに合わせて再編すべきと提唱。実際にジャガーランドローバーでは、3DEXPERIENCEプラットフォームの導入および活用と、組織の再編とが並行して行われているという。

 また、エンジニアのスキルとして、高度化するクルマを開発していく上では、専門性は持ちながらも、幅広い知識を持つことが重要とも述べた。いわゆるT型人材である。

 ジャガーランドローバーでは、ここで説明したような組織や人材も含んだイネーブラーの整備を通じて、設計変更と同時にフィードバックをライブで得られるレベルにまでモデリングとシミュレーションの統合を進めていきたい考えだ。