日経クロステック Special

シミュレーションの民主化を提唱
設計と解析の一元的な統合で
開発短縮と価値向上を図る

ダッソー・システムズ主催
「3DEXPERIENCE Modeling & Simulation Conference Japan 2021」レポート

実践例:ノボ ノルディスク
医療機器をMODSIMによって患者にいち早く提供

 デンマークに本社を置き、糖尿病などの医薬品および医療機器の開発と提供を行うノボ ノルディスクも、MODSIMを実践する一社である。

 モデリングとシミュレーションのシニアマネージャーであるGilmar Pereira氏は、「Virtual Development: Building a virtual test lab delivering results in 1 hour - using automation and democratization」(仮想開発:自動化と民主化を活用した、1時間で結果が得られるバーチャルテストラボの構築)と題して、医療機器の開発期間を短縮する同社の「仮想開発プロジェクト」について講演した。

Gilmar Pereira氏
Gilmar Pereira
ノボ ノルディスク
モデリング・シミュレーション
シニアマネージャー

 厳しい規制が適用される医療機器は、設計、プロトタイピング、テスト、および評価に多くの反復作業が必要で、患者の手に届けられるまでに長い時間を必要とする現状を踏まえての取り組みである。

 Pereira氏はプロジェクトの要諦として、①バーチャルテストを高速化すること、②できるだけ多くの物理テストをバーチャルテストに置き換えること、③バーチャルテストを活用して最適解を見つけることの3点を挙げた。

 その推進に当たっての最初の課題が、サイロ化されたデータだったと指摘する。複数のツールで使われるデータの他、内製のスクリプトなども多く、データ変換などの非効率な作業が必要だったという。

 また、設計エンジニアと解析エンジニアが分かれていたため、モデリングからシミュレーションのフィードバックまでに少なくも2日間が必要で、シミュレーション回数は500回/月にとどまっていた。

 その解決策として同社が導入したのが「民主化」である。すなわち、イテレーションの短縮を図るために、設計エンジニアがCAEツールを直接実行して結果を得るようにした。併せて、解析エンジニアの役割を変更。プロセス、テンプレート、ワークフローなどの開発と、設計エンジニアに対するトレーニングやサポートの提供を担うようにした。

 Pereira氏は、民主化などの取り組みを通じて、2日間を要しているリードタイムを1時間に短縮すること、および、シミュレーション件数を月5000回にまで増やすことを目標にしていると述べた。

 なお、こうした民主化を進めるに当たっては、プロセスの標準化および自動化が必須になること、ゴールに向けた目標や意義の共有が重要なこと、仕事の分担や進め方の変更に対して関係者のマインドセットの醸成に努めること、経営陣のサポートが不可欠であること、などをPereira氏は挙げた。

 同氏は最後に、1時間でのフィードバックの実現にとどまらず、製品のすべての設計可能性を完全に把握できる環境を構築するとともに、適用範囲を広げていきたいという考えを示した。