日経クロステック Special

マキシムの買収で業界のポジションをさらに強固に 高い技術力と豊富な製品群でアナログの課題に応える

アナログ・デバイセズ株式会社
代表取締役社長
中村 勝史

アナログ半導体のリーディング・サプライヤーの一社であるアナログ・デバイセズ。2021年8月のマキシム・インテグレーテッド・プロダクツ(以下マキシム)の買収によってテクノロジー・ポートフォリオの拡充を果たし、自動化などへの投資が盛んな産業分野や、電動化と電子化が進む自動車分野を中心に、さらなる成長を目指している。代表取締役社長の中村勝史氏に取り組みを聞いた。

マキシムのテクノロジーと製品ポートフォリオを獲得

はじめに、アナログ半導体業界での大型買収として話題になったマキシムの買収について、改めて狙いを教えてください。

中村マキシムを買収した目的は大きく3つあります。1つ目がテクノロジーのケイパビリティー(能力)の獲得です。アナログ・デバイセズがこれまで持っていたテクノロジーと、マキシムが持っていたテクノロジーの間には実は重複がほとんどなく、今回の買収によってテクノロジーのポートフォリオを大きく広げることができたと考えています。

2つ目の目的はビジネスのスケールアップです。アナログ・デバイセズは産業分野が売上高の55%を占める一方で、マキシムは民生分野などを得意としていました。また、同社は複数のカメラを結ぶ高速データ伝送ICのGMSL(ギガビット・マルチメディア・シリアルリンク)やバッテリ・マネジメントなどで独自のソリューションを持っており、これまでもアプリケーションに特化したソリューションを数多く展開してきました。今後はそれぞれが得意とするマーケットにお互いの製品を展開する、いわゆるクロス・セリングも進めながら、大きなシナジーを狙っていきます。

3つ目が技術者の確保です。業界全体としてアナログを専門とするエンジニアが減少傾向にある中で、同社の優秀なアナログ・エンジニアを数多く迎え入れられたことは、長期的に見てもとても価値のあることだと考えています。

2020年から2021年にかけて半導体の供給不足が大きな問題になり、まだ完全な解消には至っていません。こうした状況をどのように見ていますか。

中村サプライチェーンの問題は分野によって事情が異なります。自動車分野では2020年に各地のロックダウンなどの影響で生産台数が大きく減少し、そのリバウンドが2021年の需要増として現れています。一方の産業分野ではコロナ禍で人の移動や接触が難しくなった2020年当初からデジタル化や自動化に対する取り組みが一気に加速し、2021年もその勢いが続いています。そうしたことが相乗して、半導体業界全体として需要に見合うだけの供給ができていないというのが実態です。

アナログ・デバイセズは、需要が拡大することを2020年の早い段階で予想して後工程への投資を集中的に行い、さらに2021年は前工程への投資を行っていました。バックオーダーの解消には2022年いっぱいは掛かる見通しですが、このような取り組みを通じてお客様の需要に応えるべく務めています。

高精度なバッテリ管理ICで車や機器の電動化に対応

主要な分野への取り組みを伺います。まずは自動車分野について説明してください。

中村自動車分野でビジネスに最も貢献度の大きかったのがバッテリ・マネジメント関連のソリューションでした。旧マキシム製品を含む当社のバッテリ管理ICは、EVを手掛ける自動車メーカー10社のうち7社に採用されています。また、2020年のCESで発表したワイヤレスのバッテリ・マネジメント・ソリューションは、バッテリパックの実装の自由度を高められることから、自動車メーカーで評価が進められている段階です。

自動車のエネルギー効率を高めるという観点では軽量化も重要です。車室内の走行ノイズを打ち消すノイズ・キャンセリングに必要なマイクアレイやスピーカーアレイを軽量のツイストペア・ケーブルで接続できるA2B®(Automotive Audio Bus)の他、多台数のカメラ映像を軽量のケーブルで結線できるC2B™(Car Camera Bus)や旧マキシムのGMSLなどを通じて、効率性や軽量化に貢献していきます。

続いて、産業分野への取り組みについて説明してください。

中村コロナ禍で人の移動や接触を削減したいというニーズが高まったことで、FA分野では自動化や遠隔制御をサポートするテクノロジーに注目が集まっています。また、脱炭素の動きの中でエネルギーの変換と貯蓄に対する意識も高くなっており、高効率の電源ICの他、前述のバッテリ・マネジメント・ソリューションを産業分野にも展開していきます。

メディカルも重点市場の一つです。病院内で使われる医療機器向けに加え、今後は病院外で使う臨床レベルのモニタリング機器などへの取り組みも強化していきます。また、ローパワーの知見を持っている民生分野のエンジニアにメディカルのアプリケーション開発に入ってもらうなど、新しい価値の創造にも取り組んでいきます。なお、医療機器の不足は人命に直結しますので、供給においては最優先としています。

通信に関しては、楽天モバイルおよび日本電気と5G基地局のMassive MIMOアンテナを共同開発し、微弱なRF信号の歪みを補正する第4世代のRFトランシーバなどを提供しています。楽天モバイルが推進しているO-RAN方式は各国の様々なキャリアが興味を示していて、当社としてもRF製品を積極的に紹介していきます。

アナログ・デバイセズの注力分野

2021年度売上高の各分野の比率、マキシム統合による今後の注力分野

供給改善に引き続き注力日本企業との協調も深める

2022年をどのような1年にしていきたいと考えていますか。

中村2021年は産業分野での旺盛な投資意欲と自動車分野の市場回復とが相まって、売上高および粗利益ともに記録的となる業績を達成できました。2022年は買収したマキシムとのシナジーをさらに深めつつ、インダストリー4.0、デジタルヘルス、データセンター、5G、電動化、AD/ADASなどの成長分野を中心に、ニーズに即した高度なソリューションの提供を進めていきます。またお客様にとって最大の関心事となっている供給の改善に引き続き努めていきます。

並行して、優れた技術を持つ日本のお客様と長期的な視野でエンゲージメントを深め、お客様が抱えている問題を肌で感じながら、課題解決に取り組んでいきたいと考えています。

お問い合わせ

アナログ・デバイセズ株式会社 https://www.analog.com/jp
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