ビジネスの現場が自らアプリケーションを開発し、業務を改善していくことは、社内にデジタル活用文化を醸成することにつながる。その継続は、いずれDXの加速に直結していくことになる。このような成果を得るための最初の一歩が、最適なツール選択だ。「Claris FileMaker」は開発のしやすさ、拡張性の高さ、充実の教育コンテンツ、そして開発支援パートナーの存在など、ローコード・ノーコード開発ツールに求められる要件をトータルに満たしている。
ローコード・ノーコード開発ツールを使ってアプリケーションを内製する。「開発の民主化」とも表現されるが、現場が必要なときに必要なアプリケーションを自ら開発し業務を改善していくことで、課題をデジタルで解決していく文化が醸成され、ひいてはDXの推進につながることが期待できる。
しかし、やみくもに取り組んでも成果は薄い。内製を成功させるには「適切なツール選択」「専門組織(CoE)の設置」、そして「早期に結果を出す」ということを意識したい。
まず、ツール選択時には「機能性」だけでなく「学習のための情報」「開発ベンダーの支援」が充実しているかどうかを見極めたい。これらがアプリケーションの幅広さやツールの使いこなしを左右するからだ(図1)。
開発の容易さや多様なニーズに応える機能性、ツール利用法やアプリケーション開発の方法を学ぶためのコンテンツや機会の豊富さ、アプリケーション開発や開発支援を委ねられるベンダーの多さなどが重要なポイントとなる
また、CoEを置くのは、内製文化の浸透と定着をリードするためである。「ツールの導入後、直ちに事業部門が活用を積極的に進めてくれるかどうかは未知数。啓蒙活動や教育・トレーニング、さらには開発支援などを担う専門組織を立ち上げるという組織的対応も必要でしょう」とClaris Internationalの森本和明氏は言う。
そして、早期に結果を出したいのも内製文化の浸透と定着のためだ。そのためにも、必要最低限の機能でリリースして、まずは成果を目に見える形で示し、適宜機能を追加していくアジャイル型のアプローチを積極的に採用したい。
このような取り組みを成功させ、内製によるDX推進を実現している企業の多くが活用しているローコード・ノーコード開発ツールが「Claris FileMaker」である(図2)。
ドラッグ&ドロップなどの直感的な操作での開発が可能であることに加え、PC、iPad、Webブラウザといった各環境からの複数ユーザーによるアプリケーションの共有が可能であるほか、他システムとの柔軟な連携性も担保されている
「開発元のClarisはAppleの100%子会社です。そのためClaris FileMakerはiOSと高い親和性を持っています。しかし、MacやiOSに特化したツールというわけではありません。マルチOSに対応しており、例えば、国内ユーザーの7割以上はWindowsプラットフォーム上で利用しています」と森本氏は紹介する。
では、先ほど述べた適切なツール選択で見極めるべき機能性、学習のための情報、開発ベンダーの支援について、Claris FileMakerの特徴を見ていこう。
まず機能面の最大の特徴は、開発の簡単さである。画面上に表示させたいデータ項目やテキスト、ボタンなど画面を構成するパーツをドラッグ&ドロップで任意の場所に配置し、直感的な操作でアプリケーションを開発していくことができる。iOS端末のカメラ制御による写真や動画の保存、QRコード読み取りのほか、PDFの添付や手書きの署名を入力・保存できるようなフィールドも用意されている。
作成したアプリを大人数で共有するためのサーバーにアップすれば、ユーザーはPC、iPad、Webブラウザなど、任意の利用環境からアプリにアクセスすることができる。アプリケーションをアップするサーバー環境はクラウド版の「Claris FileMaker Cloud」とオンプレミス版の「Claris FileMaker Server」があり、オンプレミス環境はWindows、macOS、Linuxに対応している。
また、Claris FileMakerで開発したアプリは、他システムとも柔軟に連携可能。CSVデータを使ったシンプルな連携はもちろん、ODBCを介してデータベースに接続し、社内システムに格納されたデータを活用したり、REST API経由でSaaSを含む外部サービスと連携してアプリケーション機能を拡張したりすることも可能だ。
このクラウドとオンプレミス環境を柔軟に選択できること、そして他システムとの柔軟な連携性は、Claris FileMakerが企業や行政、医療機関など様々な組織の多様なニーズに対応する力となっている。
次の学習のための情報については、Claris FileMakerの操作を体系的に学ぶための公式テキストや各種トレーニング動画が用意されているほか、経験豊富な開発者によるWebセミナーなども企画・開催されている。
「eラーニングサービスである『Clarisアカデミー』というプログラムも用意しています。組織内での開発人材育成でも利用できるよう、受講者の学習進捗管理の機能も用意しています」と森本氏。しかも、これらのコンテンツはすべて無償で利用できる。
また、ほかの開発者に質問をするなど、開発者間の交流や情報交換を行うためのClaris Communityというコミュニティサイトを通じて情報を入手することも可能だ。
開発ベンダーの支援の面でもClaris FileMakerのアドバンテージは大きい。具体的には、Claris Partnerというパートナーネットワークがあり、ここに日本全国の約170ものベンダーが参加。Claris FileMakerによるアプリケーション開発や開発支援・トレーニングサービスを提供している。
「アプリケーションの要件に応じて、内製ではなく外部委託で対応したいと考えた場合でも、支援可能な開発ベンダーが数多くおり、安心して任せていただけます」(森本氏)
このような点を評価して、多くの企業がClaris FileMakerによる内製を推進しているが、国内の大手航空会社もその1つ。Claris FileMakerによって様々なアプリケーションを内製し、業務の改善を図っている。
例えば、約2000人のパイロットの訓練に関する進捗や評価を管理するためのアプリケーションをパイロット自身が開発した。また、乗務員が参照するマニュアル類を管理するためのアプリケーションもClaris FileMakerで内製。以前は、乗務員が目的の情報を探すのに10分程度の時間を要していたが、iPadとこのアプリケーションを利用することで、数十秒で必要な情報にアクセスできるようになっているという。
ローコード・ノーコード開発ツールによる内製化を成功させるための最初の一歩は勘所を押さえたツール選定である。Claris FileMakerは、その有力な候補であり、DXを加速させる強力な駆動力となるはずだ。